日本に必要なのは経済成長だ。

<なぜ、日本人はこんなに貧乏になってしまったのだろうか。
 この30年間、年収はまったく増えていない。OECD(経済協力開発機構)によると、アメリカの年間平均賃金が6万9392ドル(約791万円)なのに対し、日本は3万8515ドル(約439万円)にとどまっている。
 約半分の水準だ。韓国、イスラエルに負けている。30年前と比べると、アメリカは48%増だったが、日本は4%増にすぎない。派遣、非正規社員の人たちは減収だろう。

 バブル崩壊以降、つい最近まで政府、および金融当局は世界一高い法人税率、円高(2011年には1ドル=75円台)を放置した。加えて、デフレだ。企業は生産拠点を海外に移した。いわゆる、産業の空洞化である。
 産業の空洞化は国内の雇用と購買力を奪う。消費は衰退する。失業者が増え、賃金は上がらず、商店街はシャッター通りばかりとなる。
 日本の物価は安い。購買力がないためだ。元気な飲食業は物語コーポレーション(焼肉きんぐ)、ゼンショー(回転寿司のはま寿司)、トリドール(丸亀製麺)など安売りチェーンばかりじゃないか。

■必要なのは成長戦略
 なお、イギリスの地下鉄(TUBE)は初乗り運賃が高いことで知られている。何と4.9ポンド(769円)だ。Oyster Card(日本のSuica、パスモなど)を使うと、2.4ポンド(377円)だが、それでも高すぎる。
 東京のメトロは初乗り168円だ。これを一気に769円に値上げしたらみんな1~3駅は歩くだろう。
 一方、総選挙では与野党がそろって、「分配」と叫んでいる。財源は?「金持ち、有価証券売買益、企業増税を」と。
 しかし、これでは企業は海外に脱出、経済は死んでしまう。そもそも、日本には突出した金持ちはいないし、所得1000万円以上の世帯は全体の12%、1996年の19%をピークに減り続けている。
 これでは「1億総貧乏社会」の出現だ。いま、求められているのは成長戦略ではないのか。
 なお、GDP三面等価の法則とは生産、分配、消費が一致するということ。要するに、生産(GDP)が増加しなければ分配、消費も増えないということだ。すなわち、成長が不可欠である>(以上「日刊ゲンダイ」より引用)




 引用記した記事は杉村富生氏(経済評論家)の題して「「1億総貧乏社会」が出現? 日本人はなぜこんなに貧しくなったのか」だ。かつて日本は「1億総中流社会」といわれていたから、そのまま全体が経済が沈没したと考えれば良いだろう。
 ただ正確には沈没ではなく、停滞だ。30年間も惰眠を貪っていたかのように、日本は一切成長しないまま30年間も先人たちが残した過去の遺産で暮らしてきた。だが、それが許されない状況に到っただけだ。

 ただ杉村氏の論理に全面的な賛意を表するわけにはいかない。彼は安売りチェーンを批判し、消費者物価を引き揚げることが「デフレ化経済」からの脱出方法だと主張しているからだ。それは単なる消費者物価のインフレを招くだけだ。
 杉村氏は電車の初乗り運賃を例に挙げて、英国の初乗り運賃は日本のそれよりも倍以上だと説いている。日本が初乗り運賃を引き揚げれば、乗客は一駅か二駅は歩くようになる、と言っているが、運賃すら払えないほど貧困化している国民は既に一駅か二駅ほどなら歩いている。

 さらに杉村氏は「バブル崩壊以降、つい最近まで政府、および金融当局は世界一高い法人税率、円高(2011年には1ドル=75円台)を放置した。加えて、デフレだ。企業は生産拠点を海外に移した。いわゆる、産業の空洞化である」と説いている。しかし高度経済成長期、既に法人税率は先進諸国随一の効率だった。法人税は利益に対して課税するものだから、法人税率が引き下げられて何が起きたかというと「内部留保の爆増」だけだった。
 円高も輸出産業に対しては厳しいが、輸入産業や消費者物価には優しい。つまり為替変動は輸出入でどちらに「有利」に働くかどうかの話であって、それが日本の経済成長に大きく影響するものではない。

 しかし杉村氏の「企業は生産拠点を海外に移した。いわゆる、産業の空洞化である」という指摘はまさに日本の経済成長を終焉させた元凶を正確に言い当てている。生産拠点の海外移転は産業の空洞化を招いただけではなく、「産業の空洞化は国内の雇用と購買力を奪う。消費は衰退する。失業者が増え、賃金は上がらず、商店街はシャッター通りばかりとなる」という経済衰退のトリガーとなっている。
 地方都市の駅前通りがシャッター通りになったのは、また別の原因による。それは新幹線や高速道路の整備と企業のIT化だ。それにより地方都市に営業拠点を置いていた企業がそれぞれの拠点を束ね、一括管理する都道府県県庁所在地などに営業拠点を集約したことから、駅前の昼間人口が失われ一塊の駅前消費経済力が失われたからだ。もちろん夜の接待文化も各企業の営業拠点の喪失と同時に衰退した。

 ただ杉村氏の最終章での指摘は正鵠を得ている。「GDP三面等価の法則とは生産、分配、消費が一致するということ。要するに、生産(GDP)が増加しなければ分配、消費も増えないということだ」とは、まさにその通りだ。「成長が不可欠である」という結論にも異論は全くない。
 ただ成長へ到る道が少しばかり異なる。杉村氏はまず物価上昇(=インフレ)を起こすことにによりデフレ化経済の悪循環を断ち切れ、と主張しているが、物価上昇に国民経済は耐えきれない。むしろ減税(=消費税廃止)によりデフレ・ギャップを埋める方が正しい。消費税を廃止すれば、現在の所得ですら10%の購買力増加が見込まれる。

 さらに杉村氏は財源で富裕層への重課を否定しているが、「応能負担」は社会の大原則だ。支払い能力のある者が支払わない社会は成り立たない。配当所得など源泉分離を廃止てすべて総合課税とすべきだ。
 経済成長への戦略は海外移転した企業の生産拠点を国内へ回帰させることと、新規産業の育成だ。それと並行して野放図に規制緩和された派遣業法を旧に復すことだ。派遣や臨採で企業が収益を上げるのは労働者を「工数」と見なしている「質の低い労働者」に頼っていることの表れでしかない。そうした企業では世界との輸出競争で、ただ労働賃金が安いだけの後進国の企業に負けるに決まっている。

 経済成長戦略の財源はどうすべきか。答えは何もしなくて良い、だ。なぜなら経済成長戦略の財源は「経済成長」だからだ。経済成長すれば税収は自然増となり、経済成長に適正インフレは必ず伴うから、そのインフレに相当する国債発行残は償却されたと同じことになる。つまり税収で国債を償還しようとする発想そのものを止めることが必要だ。
 財政は経済成長と消費者物価のインフレ率だけに配慮すれば良い。神のごとく国民の上に君臨して「国家財政が破綻するゾ」と脅しまくった財務省の妖術は、経済原理を正確に理解する賢い国民が増えて、もはや通用しなくなっている。経済成長には経営者だけの独善的な企業経営では駄目だ。労働者も一体となって技術開発や研究開発に臨む「全社員一体」となる必要がある。そのためには正規と非正規で労働者を分断し、経営者の無能さの代償に切り捨て企業への忠誠心なき非正規労働者を増殖させる社会を許してはならない。

 日本の労働者は世界のどの国と比較しても優秀だ。おしなべて日本の労働者が高学歴なだけでなく、彼らは熱心に勤勉に働くことを厭わない資質を有している。働く場を与えれば、彼らは遺憾なく能力を発揮する。決して外国人労働者と賃金引き下げ競争をさせて、安易に企業収益を上げよう、などと経営者諸氏は考えてはならない。
 共に生産性向上の知恵を出し合い、新製品勝て発の知恵を出し合い、最も合理的な生産技術開発を創出する「同志」でなければならない。かつて高度経済成長期の日本は「家族経営」と呼ばれたではないか。企業が一つの家族に擬されるほど、経営者と労働者の関係は親密だった。政治はまず経営者と労働者を引き離した「派遣業法の緩和」を旧に復し、製造業への派遣・非正規労働者の禁止から手始めに始めるべきだ。

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