中国の不動産バブル崩壊は確実に中国金融崩壊を招く。

数字はうそをつかない。必要なのは、正しい数字を見ることだ──。
 経営危機に陥った中国不動産大手、中国恒大集団に続いて問題を起こす企業はどこかと目を光らせている投資家にとって、難題はこの「正しい数字」を見つけることだ。帳簿上の数字を見ただけでは、全体像が分からないこともある。

 中国政府が2017年に企業債務の締め付けに乗り出して以降、多くの不動産開発会社は簿外の手段を使って金を借り、規制当局の監視を逃れてきた。アナリストや弁護士がそう語っている。
 人気の手法は合弁事業だ。過半数株式を保有していない合弁事業の詳細は開示せずに済み、同事業が持つ債務は簿外に置いておけるからだ。
 弁護士のフー・シウェイ氏は「ほぼ全ての開発会社が債務を偽装している。このセクターの債務問題は見かけよりも悪い」と言う。
 公式統計に基づくノムラの推計では、中国の不動産開発会社は6月末時点で、さまざまな経路を通じて総額33兆5000億元(5兆2400億ドル)の債務を抱えていた。ノムラは「ほかにも、まだ発覚していない不透明な資金調達経路があるのは間違いない」としている。

海外のペーパーカンパニー経由で発行した私募債も、新たな懸念として浮上した。
 格付会社フィッチ・レーティングスは今月のリポートで、不動産開発会社の花様年控股集団(ファンタジア・ホールディングス・グループ)から、財務諸表に載っていないとみられる私募債1億5000万ドルの存在を最近「初めて」告げられたことを明らかにした。
 花様年は今月4日、返済期限を迎えた債務の返済ができなかったと発表した。同社はロイターからのコメント要請に答えなかった。
 経営難に陥った不動産開発会社の大半が国際資本市場から締め出されている今、投資家は当然のことながら、隠れた債務を探し始めている。

 JPモルガンの分析によると、最も打撃を被っている開発会社の中には、傷が浅めの企業よりも財務諸表の見栄えが良いところもある。いかにバランスシートに信用が置けないか、ということだ。
 ムーディーズから格付けを得ている中国の不動産開発会社70社中、合弁事業に「多額」の出資をしているのは27社。2015年にはこれが49社中5社だった。
 不動産開発会社が出資する合弁事業の典型例は、自社が少数株主持ち分を保有する不動産プロジェクトを設置し、固定リターンを約束して資産運用会社もしくはプライベート・エクイティ・ファンドから資金提供を仰ぐという仕組み。不動産開発会社は何年か後に、これらの投資家から株式を買い戻す契約を結ぶのが通例だ。

<象徴>
 恒大集団は以前から、借金によって成長を遂げる中国不動産セクターの象徴だった。同社の債務は3000億ドル余りと、中国の国内総生産(GDP)の約2%に相当する。
 ひっきりなしに新たな物件を売って運営資金を賄う恒大集団の資金調達モデルは昨年、政府の「三道紅線(三本のレッドライン)」導入を機に、急速に危機に陥った。
 これは不動産開発会社のキャッシュ、資産、資本に対する債務比率に上限を設ける規制だ。
 アナリストによると、恒大集団は合弁事業を多く抱えているわけではないが、理財商品の販売など、簿外の手段で借金をしていたのは確かだ。
 ロイターが閲覧した債券の契約要綱によると、私募債による調達も多かったとみられる。
 JPモルガンのアナリストチームの推計では、恒大集団の正味のギアリング比率(負債比率)は6月末時点で少なくとも177%と、バランスシート上に記されている100%を大幅に超えている。

 恒大集団だけではない。JPモルガンの推計では、「偽装債務」を戻し入れると広州富力地産(R&Fプロパティーズ)の負債比率は123%から139%に、融創中国控股(サナック・チャイナ・ホールディングス)は87%から138%に、それぞれ跳ね上がる。これらは氷山の一角だ。
 ある債券規制当局者は「恒大集団の本当の債務規模を確実に知っている者はいないだろう」と語った。
 投資家の監視が強まったため、合弁事業の一部をバランスシートに載せ始める不動産開発会社も出てきた。格付け会社S&Pグローバルが今年出したリポートによると、ほとんどの場合、この措置によって少数株主持ち分が急増する。

 少数株主持ち分は債務ではなく資本と見なされるため、書類の上では企業の財務力が強化される。
 花華様の期日に債務を返済できない事態を機に、不動産セクター全体に売りが広がり、中国企業のドル建て高利回り社債の利回りスプレッドは5月末から3倍近くに拡大した。
 大きく売り込まれたことで価格は低落し、一部社債の利回りは現在200%を優に超えている。投資家の中には今週、危険を承知で再び足を突っ込む者も出てきた。
 エーゴン・アセット・マネジメントの新興国市場債責任者、ジェフ・グリルズ氏は「隠れたリスクは必ずある。問題は、前もってそれを察知するのは難しいということだ」と語った>(以上「REUTERS」より引用)




 引用したREUTERSの記事は投資家目線で書かれているが、私はどうしても庶民の暮らしがどうなっているのかに関心が向かう。冒頭の「数字はうそをつかない。必要なのは、正しい数字を見ることだ──」はまさに真実を知る貴重な手がかりだ。
 世界主要通貨のマネーストックの変化を現したグラフがある。

 肝心な2021年が途切れているが、日本とEUはそれほど大きな変化はないだろう。しかし米国と中国は逆方向に大きく振れているのではないだろうか。つまり米国は少し見えている上方向のジャンプと、中国の下降方向への落ち込みだ。

 引用したグラフはM2だが、簡単にM1,M2,M3の説明をしておく。M1とは狭義のマネーサプライで、流通している現金通貨と預金通貨(および要求払預金)を合計したものだ。 広義のマネーサプライ(M2)は、M1に貯蓄預金(普通預金、定期預金の両方を含む)を加えたもので、 M3はM2にその他の短期的な流動資産(国債、銀行引受手形、商業手形など)を加えたものだ。
 ただ中国の場合はM0が存在する。中国ではマネー・サプライは以下のように分類されている。MOは流通している現金通貨を指し、M1は、MOと企業の普通預金、機関・団体・部隊の預金、農村部の預金、個人所有の要求払預金を合計したものだ。そしてM2は、M1に都市部住民の貯蓄預金残高と企業の定期預金、信託預金およびその他の預金を加えたもで、M3はM2に金融債券と商業手形、大口の譲渡可能預金証明(NCD)などを加えたものとしている。

 M3は金融手段が常に刷新されることを受けて設置されたものだが、中国企業の場合は転換社債という形を取ったM3に相当する「借入」が膨大な額に上っている点が問題だ。もちろん社債なら「投資」勘定だが、株式に転換されるまでは実質的に「借入」でしかない。恒大集団の米国NY市場で調達した資金の多くは転換社債の発行によるものだ。ドル建て借入れが存在している原因はこれによる。
 中国は自由市場を利用して好き勝手を資金調達してきた。しかし中共政府が国内で進行するインフレを抑制しようとしてマネーストックをコントロールできない事態に陥っていることを知り、その原因がM3-M2で算出される民間企業による「短期的な流動資産」にあると知ってBATHなどの巨大IT民間企業の国営化に手を付けた。そうした手立てによりマネー・サプライを政府の支配下で完全にコントロールしようとしている。

 ただ「不動産セクター全体に売りが広がり、中国企業のドル建て高利回り社債の利回りスプレッドは5月末から3倍近くに拡大した。大きく売り込まれたことで価格は低落し、一部社債の利回りは現在200%を優に超えている。投資家の中には今週、危険を承知で再び足を突っ込む者も出てきた」とREUTERSは報じている。利回りが200%を超えるなど狂気の沙汰だ。
 そうして搔き集めた外貨は中共政府のコントロール下にない対外債務だ。しかも不動産価格の下落により企業会計が負債超過に陥り、連鎖的に金融機関も膨大な不良債権を抱えることになっている。

 中共政府は取り付け騒ぎを事前防止するため、銀行窓口で国民が銀行から預金を引き出しのまで「予約制」にしている。以前から外貨不足に悩む中共政府は企業の海外送金を厳しい管理下に置き、100万円単位の海外送金ですらなかなか実施してもらえない事態なっている。
 もはや中国で金融崩壊が始まろうとしているのは明らかだ。掲げた図で明らかなように中国のマネーサプライ(=マネーストック)は異常だ。中共政府は「一帯一路」などで元を増刷して世界中にばら撒いていたのだろう。国内だけでこれだけの継続的なマネー需要が急増し続けていたとは思えない。これらのマネーサプライがすべて国内で循環しているなら、中国内に貧困はなく、国民は等しく金満家になっているはずだ。

 この夏に中共政府は2021年の成長予測を8.6%と予測し、IMFは「いやそれは高過ぎだ、おそらく8.2%程度になるだろう」と予測した。私はこのブログで中共政府もIMFも経済予測は出鱈目で、名目はまだしも実質経済はマイナス成長に転落すると書いた。秋口になって中共政府は6%台になると経済予測を下方修正したが、どうやら不幸にして私の予測の方が当たりそうだ。
 しかし中共政府の狂気じみた軍拡を止めるには、経済崩壊した方が良いのかも知れない。中国民には辛い、深刻なスタグフレーションが襲われるが、習近平氏が玩具の兵隊を弄って戦争を始めるよりは良いだろう。そして願わくば深刻なスタグフレーションが習近平氏の失脚に繋がり、少しはまともな政権が中国に誕生することを期待するしかない。

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