新資本主義とは高度経済成長を果たした「日本型資本主義」へ回帰することだ。
<「大型の経済対策決定を手始めに、予算、税、制度改革、インフラなど総合的に成長戦略、分配戦略を講じる」
オンライン形式で開かれた25日のASEM(アジア欧州会議)の首脳会議で、こうビデオメッセージを寄せた岸田首相。自身が掲げる「新しい資本主義」の具体化に向け、成長と分配の好循環を目指す姿勢を強調していた。
岸田首相が力を入れるのが「賃上げ」だ。26日に首相官邸で開かれた「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田首相)でも、2022年春闘に向け、経済界に対して「業績がコロナ前の水準を回復した企業については、新しい資本主義の起動にふさわしい3%を超える賃上げを期待する」と言っていたが、この「官製春闘」ともいうべき「3%賃上げ」は安倍政権でも繰り返し唱えられてきたものだ。
安倍元首相も2017年10月の経済財政諮問会議で「2018年春闘で3%賃上げの実現を期待したい」と発言し、さらに、その後の経済3団体の賀詞交歓会でも「経済の好循環を回すため、3%の賃上げをお願いしたい」と踏み込んだ。
これを受け、当時の経団連が公表した「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)には、<安倍首相による「3%賃上げ」への言及は社会的な要請・期待感を代弁したもの><「3%賃上げ」の社会的な期待を意識しながら、収益に見合った前向きな検討が望まれる>との文言が盛り込まれたのだが、結局、「3%賃上げ」は実現せず、企業は空前の株高を背景に得た収益を内部留保に回しただけ。安倍政権の看板政策「アベノミクス」が掲げた、企業の儲けが従業員へと滴り落ちる「トリクルダウン」も起きなかった。
そんな安倍政権の「大失策」を、このコロナ禍で岸田政権は繰り返そうというのだから不安になる。果たして「3%賃上げ」は実現可能なのか。
相澤幸悦・埼玉大学名誉教授(経済学、金融論)は「『新しい資本主義実現会議』の議事録を読みましたが、大雑把に言って、成長させて分配しようーーという内容。では、どう成長させるのかと言えば中身はありません。安倍政権のトリクルダウンの論法と同じです。『3%賃上げ』も(失敗した)アベノミクスの焼き直しです」と突き放し、こう続ける。
「岸田首相が本気で『新しい資本主義』を打ち出すのであれば、総裁選で唱えていた金融所得課税の強化や累進課税の強化など、これまでに手を付けてこなかった政策をやるべきでしょう。AI化で労働力が過剰になった時代に備えた政策とは何か、世界中が懸念しているコロナバブルがはじけた時のショックをどう和らげるのか。早急に手を打つべき経済策はいくらでもあるのです。それこそが新しい策ではないでしょうか」
まさか「岸田ノート」には「新しい異次元緩和」などと書いてあるのではないだろうな>(以上「日刊ゲンダイ」より引用)
オンライン形式で開かれた25日のASEM(アジア欧州会議)の首脳会議で、こうビデオメッセージを寄せた岸田首相。自身が掲げる「新しい資本主義」の具体化に向け、成長と分配の好循環を目指す姿勢を強調していた。
岸田首相が力を入れるのが「賃上げ」だ。26日に首相官邸で開かれた「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田首相)でも、2022年春闘に向け、経済界に対して「業績がコロナ前の水準を回復した企業については、新しい資本主義の起動にふさわしい3%を超える賃上げを期待する」と言っていたが、この「官製春闘」ともいうべき「3%賃上げ」は安倍政権でも繰り返し唱えられてきたものだ。
安倍元首相も2017年10月の経済財政諮問会議で「2018年春闘で3%賃上げの実現を期待したい」と発言し、さらに、その後の経済3団体の賀詞交歓会でも「経済の好循環を回すため、3%の賃上げをお願いしたい」と踏み込んだ。
これを受け、当時の経団連が公表した「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)には、<安倍首相による「3%賃上げ」への言及は社会的な要請・期待感を代弁したもの><「3%賃上げ」の社会的な期待を意識しながら、収益に見合った前向きな検討が望まれる>との文言が盛り込まれたのだが、結局、「3%賃上げ」は実現せず、企業は空前の株高を背景に得た収益を内部留保に回しただけ。安倍政権の看板政策「アベノミクス」が掲げた、企業の儲けが従業員へと滴り落ちる「トリクルダウン」も起きなかった。
そんな安倍政権の「大失策」を、このコロナ禍で岸田政権は繰り返そうというのだから不安になる。果たして「3%賃上げ」は実現可能なのか。
相澤幸悦・埼玉大学名誉教授(経済学、金融論)は「『新しい資本主義実現会議』の議事録を読みましたが、大雑把に言って、成長させて分配しようーーという内容。では、どう成長させるのかと言えば中身はありません。安倍政権のトリクルダウンの論法と同じです。『3%賃上げ』も(失敗した)アベノミクスの焼き直しです」と突き放し、こう続ける。
「岸田首相が本気で『新しい資本主義』を打ち出すのであれば、総裁選で唱えていた金融所得課税の強化や累進課税の強化など、これまでに手を付けてこなかった政策をやるべきでしょう。AI化で労働力が過剰になった時代に備えた政策とは何か、世界中が懸念しているコロナバブルがはじけた時のショックをどう和らげるのか。早急に手を打つべき経済策はいくらでもあるのです。それこそが新しい策ではないでしょうか」
まさか「岸田ノート」には「新しい異次元緩和」などと書いてあるのではないだろうな>(以上「日刊ゲンダイ」より引用)
岸田氏は果たして経済学を勉強したことがあるのだろうか。政府が最低賃金を決めれば「賃上げ」が実現する、とでも思っているのだろうか。それとも「成長と分配」などといった間抜けなお題目を唱えていれば賃金が上がるとでも考えているのだろうか。
政治は何のためにあるのか。企業が内部留保するよりも、労働者に賃金として還元する方が良い、と考えるように政策で誘導するのが政治ではないか。そうだとすれば内部留保のために高い法人税を支払うよりも人件費として出す方が良い、と思わせるように法人税を旧の税率に復す方が正しいのではないか。
安倍氏は法人税が高いと外国からの投資が日本へ来ない、と法人税引き下げの理由とした説明していたが、法人税率を引き下げてから外国企業が日本国内へ企業を移転させて来ただろうか。業績が好調だった企業に賃金を3%引き上げるように安倍氏も要望していた。しかし労働者賃金は安倍自公政権下でも、むしろ削減された。
労働者賃金を引き上げる動機は「人手不足」だ。企業が必要とする労働者が確保できない、という環境が賃金上昇に繋がる。しかし安倍自公政権以来、経済界の「人手不足」だから「外国人労働者移民」を積極的に行うべきと要請し、マスメディアも少子高齢化はGDPを減少させる(だから労働賃金は上がらない)と刷り込み報道を繰り返して外国労働者移民に加担した。そして人手不足が解消されれば労働賃金が引き上げられないのは経済原理を持ち出すまでもない。
「成長」してから果実を「分配」する、という意味で「成長と分配」と岸田氏は掲げたが、どちらが先ということはない。両方を同時に実施すべきだ。そのために資産所得課税を優遇している「配当所得の20%源泉分離課税」を廃して、総合課税に一本化すべきだし、高額所得者の累進課税を旧に復すべきだ。
そして貧困層に重い消費税を廃止すべきだ。それは税の応能負担という原則に則ったものだし、GDPの主力エンジンたる個人消費を喚起する効果も併せ持つ。
経済成長のためには安定した雇用環境が必要不可欠だ。野放図に規制緩和した派遣業法を一部規制強化して旧に復すべきだ。たとえば製造業や公務員への派遣を禁止とし、介護士や看護師並びに保育士は準公務員化して供与待遇を改善すべきだ。
岸田氏は選挙公約で介護士などの待遇改善を約束したが、実際に選挙に勝って実施した待遇改善はまるで子供の小遣いだ。それで待遇改善とは国民を舐めたものだ。自分たち国会議員の第二第三の財布には手を付けようともしないで、国会議員諸氏は何を考えているのだろうか。
何度も書くが、人手不足こそが賃金待遇の改善の動機だし、生産性向上の動機でもある。人手不足なくして経済成長はあり得ない。外国人実習生という隠れ蓑で導入した外国人労働移民や、安倍自公政権下で導入した34.5万人もの外国人労働者移民は直ちに廃止すべきだ。それらは百害あって一利もない。ただただバカな企業経営者が何も考えずに利益を手にするための愚かな政策でしかない。
安定した雇用がなければ若者は将来を考えることが出来ない。一年後には派遣切りされるかも知れない環境下で、好きな異性と結婚して家庭を営もうとは考えられない。派遣業法の野放図な規制緩和を推進した「構造改革」が少子高齢化を促進し、日本経済発展を阻害した根源的な誤った政策だ。新資本主義を掲げるなら、岸田氏が目指すべきはかつて高度経済成長を果たした「日本型資本主義」へ回帰することだ。