没落する中国

<大手民間IT企業に対する締め付け、30兆円超規模の負債を抱えた不動産大手の苦境、そして相次ぐ停電――。中国の集権経済は、逆回転を始めた。

  中国の長い歴史では、皇帝の権力維持が至上命令。台頭する商人は抑えられ、役人は民がどんなに困ろうが皇帝の指示を大げさに遂行することで昇進を図る。今回もその伝で、共産党政権は政治優先。金の卵を産む鶏=経済を絞め殺し始めたのだ。 その折に、10月1日付のフォーリン・アフェアーズ誌は「中国崛起(くっき)の終焉」と題する記事を掲載。「中国の台頭」が頭打ちになったと指摘し、それを前提に戦略を組み立てることを提唱した。隣国の日本としても中国の後退で何がどうなるのか、頭の体操をしておかないといけない。

 まず極端なシナリオから行くと、経済の後退をきっかけに中国国内で権力闘争が起きて中央権力が真空化する場合、何が起きるかだ。 1991年のソ連では、ゴルバチョフとエリツィンが対立して権力が麻痺したが、その空隙(くうげき)を利用してバルト諸国などいくつかの民族共和国は独立した。
 中国でも、モンゴルや新疆ウイグル、チベットや香港で同様の事態は起きるだろうか?  ソ連邦の各民族共和国では多くの場合、地元民族が統治・利権構造をつくり上げ、ロシア人は外部から来てそのトップに座っていたにすぎない。だからその民族は独立後、直ちに統治を始めることができた。 
 中国のそれぞれの地域では「漢民族」の人口比率も高くなっていて、彼らのグリップはしっかり利いているようだ。だから、北京の権力が真空化すれば、地元の共産党書記(漢民族)が税収を押さえ、地元の軍・武装警察勢力を従えて自分の権力保全を図るのではないか? つまり、独立国と言うより軍閥の出現だ。 
 それにより中国は分裂するのか? 秦朝以後、中国が分裂したのは三国~南北朝時代の400余年、五代十国時代の50余年、そして辛亥革命後17年間の3回だが、分裂期間は縮まっているし、毎回、統一を目指す者が現れている。「中国は一つであるのが常態」という暗黙の了解があるのだ。 
 次に、経済が悪化すれば失業は増大してインフレもひどくなるから、国中で抗議行動や暴動が起きるだろう。しかしそれらは指導者や組織力を欠き、地元の武装警察に抑えられる可能性が高い。 
 中国の周辺はどうなるだろうか? 北朝鮮は中国に代わる経済パートナーを求めて韓国や日本との関係改善を目指すだろう。アメリカはもう、北朝鮮を武力で威嚇することはなくなる。台湾は独立を宣言するだろうが、中国大陸に展開した膨大な生産施設の移転先を探すことになる。

日米同盟と一帯一路への影響は
 ロシアは、アメリカと戦うための準同盟国=中国を失うばかりでなく、不安定化した大国を隣国に抱えることになる。ロシア極東やシベリアでは「食えない」ため中国難民が押し寄せることはないだろうが、ロシア極東は1860年まで清朝に服していた地域だ。中国で返還要求を掲げる者が現れるかもしれない。世界でのロシアの立場は総じて今よりも弱いものになるだろう。 
 「一帯一路」の沿線諸国では、「カネの切れ目が縁の切れ目」。これまでの中国旋風は嘘のように静まるはずだ。日米同盟もその性格を変える。朝鮮半島や台湾など、西太平洋全体の平和と安定の保証人としての意味を増していくだろう。 中国が沈んだからと言ってアメリカとの同盟を捨てるのは短慮だ。たとえ中国が沈んでも、日本は舞い上がらず、戦前のように中国の弱さに付け込むことなく、自国の安全と尊厳と生活だけはしっかりと守っていきたい>(以上「The Wall Street Journal 」より引用)



 米国DSの御用新聞The Wall Street Journalですら「中国経済の没落」記事を書き出した。引用した「中国没落」の論評は河東哲夫氏(The Wall Street Journalコラムニスト)が書いたものだ。
 河東哲夫氏は1947年(昭和22年)10月14日 - )生まれで、外交官として活躍された。2002年(平成14年)から2004年(平成16年)までウズベキスタン駐箚特命全権大使を務めていた方だ。河東氏は彼の対中歴史観から「中国の長い歴史では、皇帝の権力維持が至上命令。台頭する商人は抑えられ、役人は民がどんなに困ろうが皇帝の指示を大げさに遂行することで昇進を図る。今回もその伝で、共産党政権は政治優先。金の卵を産む鶏=経済を絞め殺し始めたのだ」と最近の「ニラ刈り」を分析している。確かに習近平氏にとって金の卵を産む鶏よりも自身の政権安定の方を優先しているのだろう。

 ただ習近平氏が打ち出した政策は「軍師」の指図通りだという説がある。現代中国で三代に渡って仕えた軍師がいるという。そのため「三代軍師」と呼ばれているが、王滬寧氏のことだ。
 王滬寧氏は中国で珍しく江沢民総書記から胡錦濤総書記を経て習近平主席と三代の最高権力者に仕えた。政権交代とともに地位を失わず、その時々の政権の政策立案に関与し、次第に地位を高めていった稀有な存在だ。今では「北京の7人」の仲間入りして序列5位の実力者になっている。習近平氏が突如として始めた「戦狼外交」も「一帯一路」もそして「共同富裕」も王滬寧氏の発案だという。

 しかし権力者から権力者へと渡り歩いた「軍師」も年貢の納め時を迎えたようだ。王滬寧氏は余りに表に出過ぎた。習近平氏は依然として権力を掌握して権力の座に君臨しているが、いつまでも安泰でいられるわけではない。金権支配の中国では「金の切れ目が縁の切れ目」となる。
 地方政府をグリップしていた北京の力が衰えれば、中国はそれぞれの軍閥が群雄割拠するのは歴史が証明している。河東氏は群雄割拠の期間が次第に短くなっているのは「一つの中国」精神があるからだと説いているが、そんな高尚な精神など軍閥の親玉にはない。

 ヒラリー・クリントン氏が中国は貧困国家になるだろう、と予想しているが、ヒラリー氏が予想するまでもなく、中国民の多くは貧困層に属している。中国ではトップ1%の人たちが国の富の31%を所有している。しかも彼らは蓄財した富を外国の銀行口座に預けている。彼らの預金先は主としてスイスと米国の銀行だ。中共政府の権力者たちにして、中国の未来を信用していない。
 五年後から全国で不動産税(日本の「固定資産税」に相当する)が課されることになった。それでマンションなどの投げ売りが始まっているようだ。ある資産家は不動産税の政策発表の前日に39軒のマンションを処分したという。中国ではそうした噂は枚挙に暇がない。いよいよ中国庶民の不満は高まっているという。

 中共政府の中国が没落して悲しむ国があるだろうか。「一帯一路」で過剰融資により港湾や空港を奪われた国々は、これを好機とばかりに「債務不存在」を主張するだろう。当初から港湾周辺を租借するのを意図した過剰融資は返済義務がないとして、債務返済を無視するだろう。
 資産に計上している海外投資がすべて不良債権化すると、中共政府の財政状況はたちまち悪化する。国庫にカネがないだけでなく、あるとしていた資産も消えてしまうからだ。国の富を「一帯一路」や「新シルクロード」といった国際戦略や宇宙や軍拡などに濫費したツケは余りに大きい。いかに権力を牛耳っていようと、習近平氏が立て直すことは不可能だ。

 次に起きる中国の異変は海外へ脱出しようとする高官たちの拘束ではないか。既に中国民はすべてパスポートを取り上げられている。高官たちも例外ではないだろう。最後は習近平氏自身も捕らえられる運命が待っているかも知れない。かつてルーマニアで独裁者として君臨していたチャウシェスク大統領夫妻がそうであったように。

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