岸田氏は経済成長戦略の提示を。

<自民党総裁選は9月29日に投開票が実施され、岸田文雄氏(64)が新たに第27代総裁に選ばれた。岸田氏は10月4日召集の臨時国会で首班指名(内閣総理大臣指名選挙)を経て、第100代首相として新内閣を発足させる見通しだ。

 岸田氏は1957年生まれの64歳。衆院広島1区選出で当選9回。これまでに外相、防衛相、党政調会長などを歴任した。安倍晋三氏や菅義偉首相、民主党政権の鳩山由紀夫氏、菅直人氏、野田佳彦氏に続き、戦後生まれでは6人目の首相となる。
 岸田氏は2度目の総裁選で「総理総裁」の座を射止めたが、10月21日には衆院の任期満了を控える。「任期満了」を待つか「解散」に打って出るのか。いずれにしろ、自民党・岸田新政権は、発足間もない時期に国民から審判を受ける。

 総選挙ではどんな公約を掲げるのか。目下のコロナ禍への対応はもちろん、安倍・菅政権での政策をどう検証・総括するのか。自らが総裁選で訴えた政策の実現可能性も有権者から問われることになる。今回の総裁選には岸田氏のほか河野太郎・行政改革担当相(58)高市早苗・前総務相(60)、野田聖子・幹事長代行(61)の4人が立候補。全国110万人超の自民党員・党友も投票に参加した「フルスペック」の選挙となった。
 1回目の投票では、党所属の国会議員に1票ずつ与えられた「382票」と党員・党友票の「382票」の計764票を争った。議員票で優勢だった岸田氏が1位、党員票でトップだった河野氏は1票差で2位、高市氏が3位、野田氏が4位だった。ただ。4人の候補者いずれも過半数を獲得できなかった。(総裁選出過程は省略)

 決選投票は国会議員票382票と各都道府県連の47票で争われ、1回目の投票で1位だった岸田氏が勝利。新総裁に選ばれた。
 岸田氏は新総裁選出後の両院議員総会で挨拶した。岸田氏は「我が国は民主主義の危機にある。こうした強い危機感を感じ、我が身を省みず誰よりも早く立候補を表明した」「私たちは生まれ変わった自民党をしっかりと国民に示し、支持を訴えていかなければならない」と訴えた。
「総裁選挙は終わりました。ノーサイドです。全員野球、一丸となって衆院選、(来年の)参院選に望んでいこうではありませんか」と党内の結束を呼びかけた。
 また、「足下においては、引き続き我が国の国難が続く」とし「コロナ対策を必死の覚悟で努力を続けていかなくてはならない。数十兆円規模の経済対策を年末までに作り上げなければならない」と意欲を示した。
「声をかたちに。信頼ある政治」——岸田氏が訴えた政策は?
 自民党の名門派閥「宏池会」(岸田派)の会長。祖父、父も衆院議員の政治家一家に生まれた。外相としての連続在任期間は戦後最長。

 昨年の総裁選では安倍前首相からの禅譲を期待しながらも、菅義偉首相の出馬でその目算が外れた。2回目の挑戦となった今回は、他に先駆けて立候補を表明した。
 スローガンは「声をかたちに。信頼ある政治」。
 政策で一番に掲げるのは「コロナ対策」だ。岸田氏はコロナ対策の目標として、通常に近い社会経済活動を取り戻すことを掲げ、4本柱として以下の項目を訴えた。

ワクチン接種の加速 11月中の希望者全員への接種完了
 省庁再編も目指し、感染症対応を一元的に担う「健康危機管理庁」の創設も公約に入れた。経済政策では「『成長と分配の好循環』による新たな日本型資本主義」で新自由主義からの脱却を掲げる。数十兆円規模の経済対策、持続化給付金などの再配布、非正規雇用や子育て世代、学生への給付金なども目指すという。

 また「成長」一辺倒ではないとアピールも。「令和版 所得倍増計画」と銘打ち、格差の是正を掲げ、安倍・菅路線とは一線を画すことを意識している。ちなみに「所得倍増計画」は、岸田氏の出身派閥「宏池会」の創設者で池田勇人首相(任1960〜64)が打ち出した経済政策で、戦後の高度経済成長に影響を与えたもの。
 岸田氏は偉大なる先達に自らを重ね、演出しているようだ。安倍・菅政権下で党幹事長として過去最長の任期となった二階俊博幹事長を中心とした執行部の刷新も目指す。党役員任期を「1期1年・連続3期」までとし「権力の集中と惰性を防ぐ」ことも明言した。
 選択的夫婦別姓をめぐっては党内の推進議連に参加しているが、出馬会見ではBusiness Insider Japanの質問に対し「引き続き議論を」と答え、慎重な立場を崩さなかった。
 これは最大派閥の細田派に影響力を持つとされる安倍前首相らを意識した発言と見られた。
 ところが、告示日が近づいてきた9月15日にはBS-TBSの番組で、導入を議論すべきと軌道修正した。これは若手議員や、選択的夫婦別姓に肯定的な河野氏の出馬を意識したものと見られる。同性婚についても「多様性を認めるということで、議論があってもいいと思うが、まだ認めるところまで私は至っていない」と述べ、否定的な姿勢だ。
 自身の公式サイトにも政策集を掲載し、「岸田BOX」と名付けた一般からのアンケートを募集。YouTubeで自身の言葉でアンケート回答するなど「国民の声を聞く政治家」という姿勢をアピールした。
 Twitterでも政策をPRしたり、岸田BOXや自身への質問にも回答。告示時点で約5.1万ほどだったフォロワーは約6.3万まで増えた。9月17日の所見表明後の記者会見では改憲について言及。自民党が掲げる憲法改正4項目について、任期中に実現を目指す姿勢を見せた。

 皇位継承については「女系天皇には反対」との立場を示した。2019年の参院選では岸田氏の地元組織、自民党広島県連が推薦した現職候補が、党中央の肝いり候補との「同士討ち」で落選した。この肝いり候補こそ、のちに公職選挙法違反で起訴される河井案里氏だった

岸田新政権、発足間もなく総選挙。「任期満了」か「解散」か
 10月4日召集の臨時国会を経て、岸田政権が発足する見通しだ。総裁選を争った河野氏、高市氏、野田氏らをどう処遇するのか。また、党役員任期を「1期1年・連続3期」までとし「権力の集中と惰性を防ぐ」と明言したことから、閣僚人事や党役員などの人事に注目が集まる。
 一方で衆院は10月21日に任期満了を迎える。注目されるのは、次期衆院選のタイミングだ。これまでに岸田氏は所信表明演説と各党の代表質問に臨む姿勢を示している。
 これに対し、野党側は予算委員会の開会も求めており、与野党で国会日程をめぐり対立が予想される。野党側は憲法に基づき臨時国会の開会を再三にわたって求めていたが、与党側が拒否していた。大前提として、10月4日の首班指名・組閣の直後の「解散」は現実的な日程ではないため、衆院選は10月21日の任期満了日以降に実施されることが確実と見られている。
 加藤勝信官房長官も、9月16日の記者会見で「(10月21日の)任期満了日前の総選挙は事実上なくなった」と表明。任期満了日を越えての総選挙は、日本国憲法下で初となる。その上で、選挙への選択肢は「任期満了」か「解散」かの2つになる。
 
 「任期満了」の場合→投開票は「11月7日」or「11月14日」か
 公職選挙法では、衆院の任期満了選挙について、以下のように定めている。第31条―1:衆議院議員の任期満了に因る総選挙は、議員の任期が終る日の前30日以内に行う。第31条―2:前項の規定により総選挙を行うべき期間が国会開会中又は国会閉会の日から23日以内にかかる場合においては、その総選挙は国会閉会の日から24日以後30日以内に行う。
 この規定に基づき、かつ慣例に従い投開票日を「日曜日」とするならば「10月26日公示・11月7日投開票」か「11月2日公示・11月14日投開票」が想定される。任期満了選挙となれば、日本国憲法下では1976年12月の三木内閣での総選挙以来2度目となる。この時は、自民党が結党以来初めて過半数を割り込む惨敗を喫した。
 
「解散」の場合→最も遅い投開票は「11月28日」
 一方で公職選挙法では、衆院の解散総選挙について、以下のように定めている。第31条―3:衆議院の解散に因る衆議院議員の総選挙は、解散の日から40日以内に行う。10月中旬に想定される代表質問後の「解散」となれば、任期満了の場合の「10月26日公示・11月7日投開票」「11月2日公示・11月14日投開票」に加えて「11月9日公示・21日投開票日」なども想定される。
 仮に任期満了日の10月21日に「解散」した場合は、最も遅い日程で「11月16日公示・11月28日投開票日」となる。憲法54条では、衆院総選挙から30日以内に特別国会を召集することが定められている。特別国会の召集とともに内閣は総辞職するため、日程や選挙結果次第では岸田新内閣は史上最短の内閣となる可能性もある。これまでに最も短かった内閣は、戦後直後の東久邇宮内閣で在職54日間だった>(以上「BUSINESS INSIDER」より引用)




 岸田氏が総裁選に出馬した記者会見で「構造改革」政治との決別と、「令和の所得倍増計画」を打ち出した。これには正直言ってビックリした。野党は彼らが打ち出すべき政策を先取りされたのではないか、との思いすらした。
 しかし、私の心配は杞憂だったようだ。さっそく自民党内の「守旧派」が岸田氏の「成長優先政策」を批判した。ことに安倍一派の拒絶反応は凄まじく、岸田氏もその後の記者会見で「所得倍増計画」を言わなくなった。そして肝心要の「緊縮財政から積極財政へ」転換する、とも言わなくなった。これで岸田政権は従前の安倍-菅自公政権と何ら変わりない「構造改革」路線を歩むことになったようだ。

 岸田氏本人が「我が国は民主主義の危機にある。こうした強い危機感を感じ、我が身を省みず誰よりも早く立候補を表明した」とチンプンカンプンな発言をしているようでは、彼の政治家としての資質すら疑わしい。日本が民主主義の危機の瀬戸際に立っているとすれば、それは立憲制度を無視して「解釈改憲」した安倍自公政権が元凶ではないか。
 日本の危機とは衰亡する経済にある。成長なき停滞を30年間も維持した「構造改革」政治と緊縮財政と消費増税が日本の経済成長を妨げた。日本は緩慢な国力衰亡の坂道を転がり落ちている。国民も気づかないほどだが、30年たつと各国との比較で驚くほどの凋落ぶりが良く解る。

 彼の派閥の大先輩・池田勇人氏が打ち出した「所得倍増論」へ向かって、日本経済は高度経済成長を歩んだ。当時が最も熱い中間層を形成していたのは「経済成長」こそが格差是正をもたらすからだ。日本国民が戦後の貧困から立ち直り、国際的に先進国の仲間入りしたのも経済成長があったからだ。
 現在の少子高齢化が社会問題化しているのは経済成長なき30年を過ごしたからだ。貧困化したのも、まったく同じ理由からだ。30年間も経済成長しなかった原因を取り除くことこそが日本政治の喫緊の課題だ。当初歯切れ良かった岸田氏の「成長戦略重視」の政治姿勢は総裁選の間に財務省からの巻き返しにあったのか、すっかり影を潜めてしまった。

 ただかつてこのブログで主張していた看護師や保育士の「準国家公務員化」を採用して、岸田氏は国が給与を決める方式にするという。それは歓迎すべきことだ。国民所得を増やす方向の政策をあらゆる分野で実施すべきだ。
 そして消費の罰則にあたる消費税を廃止すべきだ。飲食業者の救済には企業交際費の損金算入を認めるべきだ。そうすれば飲食業者は息を吹き返すに違いない。さて、岸田氏がいかなる政策を実施するのか、お手並み拝見するしかない。

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