「検査と隔離」の拡大を。

＜新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「緊急事態宣言」が21都道府県まで拡大することになった。「まん延防止等重点措置」も12県が追加されることになり、9月12日まで計33都道府県が宣言ないし重点措置の対象になる。この政府決定の後、25日夜に会見した菅義偉（よしひで）首相は、猛威を振るうデルタ株の厳しさとワクチン接種への希望を口にした。

ワクチン証明書で「飲食店や旅行、イベント」

　「明かりははっきりと見え始めている」。菅首相はこの日もワクチン接種の効果に期待を示した。 

　首相の説明によると、8月は1日100万回以上のペースで進み、8月24日までで国民の約54％が1回を接種、約43％が2回を完了。総接種回数は1億2000万回に達しているという。 「8月末には全国民の半数近くが2回の接種、9月末には6割近くが接種を終え、現在のイギリス、アメリカ並みに近づく」 

　現在の感染状況は、全国の新規陽性者数が連日2万人を超え、東京都でも5000人前後が続く極めて高い水準で「全国的にほぼすべての地域で、これまでにない感染拡大が継続している」（菅首相）。これは感染力が強いとされるデルタ株まん延の影響だと指摘し「感染者を抑え込むことがこれまで以上に容易ではなくなっている」と語った。 

　ただ日本で接種が進められているワクチンには「デルタ株にも明らかな効果があり、新たな治療薬で広く重症化を防ぐことも可能」だと強調。いまだピークアウトが見えない第5波の感染状況だが「出口」にも言及した。 「9月12日の緊急事態宣言の期限は、ワクチンの接種状況、重症者の数や病床利用率を分析し、判断を行っていく」 

　さらに、解除後の“未来”にも触れた。「その先には、『ワクチン接種証明書』の積極的な活用の方法を含め、飲食店の利用、旅行、イベントなど日常生活や社会経済活動の回復もしっかり検討する。全力でこの危機を乗り越えていく」。

政府の分析は楽観的？「専門家の了解得ている」

　質疑では、政府のコロナへの状況分析は「やや楽観的な部分があった」としたコロナ分科会の尾身茂会長の国会答弁を引き合いに出し、「政府にとって不都合なデータにも耳傾けたのか」と記者がただす場面もあった。 

　菅首相は「宣言や重点措置は、政府の考え方を分科会の中で説明し、了解を得た上で行っている」「常に、西村担当相が尾身会長と連携しながら行っている。そういう報告を受けている」と原則論を述べるにとどめた。

宣言期限までに専門家による「解除後」議論求める

　菅首相会見の後に行われた西村康稔（やすとし）経済再生担当相の会見では、この首相発言に関する質問が記者から出た。「大臣の目からみて明かりは見えているのか。10月でもワクチンを打てる人は6割。あと半年くらいは我慢だというのが本来の国民へのメッセージでは」 　これに対し、西村担当相は、1年半にも及ぶ自粛疲れやコロナ慣れが指摘される中で、国民に協力してもらうためには「将来の絵姿を、光を見ていただかなければいけない。それを感じていただけないと、あと何か月も続くのかと、とても我慢できないということだと思う」と理解を求めた。 

　その上で「イベントのあり方、飲食店でどういったことが可能になるのか。抗原検査キット、PCR検査をどう組み合わせて、その組み合わせの中でどういったことが緩和されていくのか」と述べ、宣言の期限である9月12日までに、専門家に解除後の「絵姿」が示せるように議論を急いでもらっていると説明した＞(以上「時事通信」より引用)

　果たして菅氏は科学的な根拠に基づいて話をしているのだろうか。最近ではテレビでも「月~火曜日の東京の新規感染者数は少ないが先週同曜日比では…」と解説するようになっている。その解説は科学的なのだろうか。

　つまり土、日曜日のPCR検査数が少ないから、新規感染者数が月~火曜日の新規感染患者数が少ない、とニュースキャスターは喋っているが、彼らは自分が何を言っているのか理解しているのだろうか。新規感染患者数が頭打ちになったから、菅氏は「明かりが見える」と発言したようだが、そうした新規感染患者数が「明かりが見える」根拠になるとかんがえているのたろうか。

　他の指数としてPCR検査数に対する陽性率もというものがある。それも新規感染患者数の発表と同時に発表すべきだが、テレビではたまにしか陽性率を報道しない。それでは科学的な根拠になり得ないし、PCR検査そのものが限定的にしか行われていないのなら、感染動向を知る科学的な根拠にはなり得ない。

　ことほど左様に、日本政府・厚労省は武漢肺炎に関して科学的なアプローチをしていない。ただ漫然と「対症療法」らしき行動を日々行っているだけだ。だがそれですら、発熱して武漢肺炎の感染を疑った本人がPCR検査を申し出ても全員がPCR検査を受させてもらっているけではないと限定的だ。日本政府・厚労省はどうかしている。

　そうしたPCR検査状態を一向に改善しようとしないで、さらに武漢肺炎に感染した患者を隔離すらしていない。「自宅療養」とは感染症の患者の放置以外の何ものでもない。しかも医師や看護師が巡回しているなら、一人で看られる患者数を減らしていることになるし、感染株ごとに防護服を着替えなければならないなど、現場の手間は著しく増大する。

　ある研究機関の人流と感染経路との実態調査で、実は人流と感染者数の間に相関関係のないことが判明している。飲食業者の夜間営業が感染拡大させている、との明確な根拠もない。陰性の人たちばかりが集まって飲食しようが大騒ぎしようが、誰も感染しないのが道理だろう。

　だからPCR検査を徹底せよ、と何度もこのブログに書いた。陽性者を隔離せよ、と何度も書いた。しかしテレビでバカな弁護士コメンテータが「PCR検査は無駄だ」と発言して、それが一時ネット上で常識化した。バカな弁護士コメンテータをなぜテレビ局は使い続けるのだろうか。少なくとも、感染症の専門医を武漢肺炎関連の場面ではコメンテータとして出演させるべきだ。

　それはコロナワクチンでも同じことがいえる。mRNAワクチンを打てば二年以内に死ぬとか、マイクロチップがワクチンに混入されていて、国民が個人的に管理される、などと荒唐無稽なコメントをネット上に拡散している愚かな連中がいる。

　mRNAワクチンは細胞に何ら作用するものではない。ただ抗原抗体反応に関与して、コロナ抗体を創り出すだけだ。それは他の様々なワクチンと全く何も変わらない。人体を形成している二兆個余の細胞の遺伝子をすべて書き変えるような注射液は未だ発明されていない。

　飛語流言の類を拡散する者はいつの時代にもいる。ことに災害時や非常時には好んで衆目を集めるために敢えて根拠なき発言を繰り返す「お調子者」がいる。しかし、それは社会にとって害悪でしかない。

　菅氏が「明かりが見えている」という発言も飛語流言の類だ。科学的な根拠を伴わない、彼の希望的観測でしかない。PCR検査が日々百万人規模で実施され、陽性率が日々報じられていているのなら、陽性率の変化から感染拡大傾向にあるのかそうでないのかを客観的に判断できる。しかし都道府県が発表している「今日の新規感染患者」というのは感染拡大か否かの判定基準にはならない。なぜなら新規感染患者数を減らすにはPCR検査数を減らせば良いからだ。

　「検査と隔離」以外に、的確な感染症対策はない。インフルエンザと同じように「共存共栄」すれば良い、と発言する者もいるが、武漢肺炎は余りにリスキィーだ。劇症的な症状を伴い、重篤化すると致死率が異常に高まる。しかもインフルエンザと違って、武漢肺炎には特効薬が未だない。

　そうすると「検査と隔離」しか武漢肺炎を終息させる手立てはない。今からでもPCR検査を確実に百万人規模で全国で実施すべきだ。民間の検査機関にそれに対応できる能力はある。PCR検査キットも簡単に取り扱える。もちろん医療従事者が対応すべきだが、街の診療所で実施可能だ。菅氏にそうした考えがないのなら、一日も早く政権から去って頂きたい。それが国民の健康と命を守ることだ。