管理社会と自由取引とは相容れない。

中国で「新しい倒産ムーブメント」が始まった…!

 中国で、企業が破産(倒産)することを通じて再建に取り組むことが当たり前となってきた。いまや大国有企業のいくつかも破産を通じた「再建ムーブメント」に入っている。これまでは破産させないゾンビ企業が跋扈していたが、状況が大きく変わりつつある。こうした倒産した企業の不良債権を含む資産などを特殊資産と呼ぶが、この特殊資産投資市場が中国の企業倒産急増で拡大している。
 2021年第二四半期、特殊資産取引指数は338.18で、第一四半期より21.9%上昇、前年同期比では12.8%上昇している。資産金融競売の成立額も同様に上昇しており、2021年第二四半期で185.44億元、第一四半期より79.62%増、前年同期比3.64%増。平均取引額は1212.08万元で、第一四半期より73.98%増という。
 ここ数年の傾向として「剛性兌付」(国家や党が後ろ盾となっている企業の社債はデフォルトしない、倒産しない)という神話が崩れ、裁判所による倒産再建、あるいは倒産清算という形で負債を処理する方法がとられ始めた。最近では中国半導体国産化政策の核心企業であった清華大学運営の半官企業「紫光集団」が、債権者の徽商銀行によって破産再建の申し立てが行われたことが大きなニュースになった。北京大学運営の方正集団は今年7月から正式に司法当局から倒産再建整理計画が承認された。

破産案件が「毎日更新」

 特に厳しいのは不動産関連業界で、今年上半期だけで203社の不動産企業が破産申請を裁判所に提出している。2021年5月末、全国の裁判所では14の破産専門法廷が設けられ、100の清算・破産審理裁判が行われている。最高人民法院は全国企業破産整理再建案件情報サイトを見れば毎日のように、破産案件審理の情報が更新されている。
 こうした破産した企業はどのように不良債権が整理され、再編されるのか。たとえば中国最大の大学運営企業、北大方正集団の場合、非国有の平安集団、国有の珠海華髪集団、深圳特髪集団などが合同で投資し、立て直すことになった。
 中国紙の21世紀経済報道がこの案件について詳細を報じていたので紹介すると、この破産再建スキームの鍵は平安信託が受け持つ財産権信託だという。企業のすべての資産を再評価し、守るべき本業の資産と処分する資産を分け、売れる資産は売り、返せる負債は返し、本業の業務内容を精査し、スリム化し、問題の改善策を示した上で新たな投資家を入れて、立て直す。利益の相反する複数の主体が絡むので、複雑で困難な仕事とされる。

これまでにない複雑さ

 方正集団の場合、価値ある手持ち資産を売り出しその金で負債を補填する「売り出し再建方式」に加えて、信託企業にそのブランドのインセンティブを生かして財産権信託スキームを作らせ、特殊資産処理に参与させるというやり方を採用した。財産権信託(権利信託)は、信託受益権そのものが別の権利信託の権利になる。中国の信託業協会によれば今年第1四半期、信託企業は資産証券化信託を大幅に増やしており、財産権信託業務を拡大しているという。
 方正集団は、情報産業、医療、不動産、商業貿易、教育、金融などの多様な分野で業務を展開、傘下には6社の上場企業を含む400企業・事業単位を抱える。その資産規模はおよそ3000億元。うち債務再編にかかわる資産の総額はおよそ2000億元。今回、破産を通じて整理されることになったのは、方正集団親会社とその傘下の北大医療、方正産業、方正情報、北大資源の四大産業集団だ。
 信託企業がこうした倒産再建スキーム業務にかかわるのは決して初めてではない。2018年の渤鋼集団、2019年の重慶文峰商店街などの破産再建処理の中で信託企業は重要な役割を担っていた。ただ、北大方正はその知名度の高さから言っても、不良債権額の大きさから言っても、これまでの例に当てはまらない複雑さであり、企業破産再建整理に信託企業が介入する場合の今後の重要モデルになるとして注目されている。

「勝者」である方法

 平安信託によれば各セクターの保有資産は投資家全体で受け継ぎ、本業にかかわる継続保有の資産以外は、再編主体内に残す。このうち一部は複雑な歴史的問題が絡み短期内での処分、運用はできないので留保。処分可能な資産で財産権信託を設立し、先に資産整理を実施し、優先的に関連費用を清算後、信託受益人に分配する。さらに今回の財産権信託スキームの管理と処理は部門、階層ごとに意思決定メカニズムを採用。これは、持ち分の受益権に影響を与える状況を適時、効果的に区分して、決策するということで規範性、原則性、柔軟性を考慮し最終的に債権人の利益を最大効率で保障する、という。
 平安信託特資事業部北部経営センターの鄭艶社長は、「債権人にとっては、資産運用や価値修復によって補填された分配は、短期的な割引販売による権益損失を回避し、時間を価値に置き替えることが出きる。管財人にとっては、決められた時限内に順調に破産再建整理を進める助けとなる。投資者にとっては破産整理主体のリスクを切りはなすことができる。これは債務者、債権人、管財人、投資者にとってともに勝者である方法だ」という。
 平安信託自身は、この種の業務で受託人に対する事務的な信託管理サービスによる収入があり、また資産の経営、処分、清算サービスなどを通じて、収益が発生すれば一定の割合の報酬を得られることになる。

「外資系」が動き出した…!

 このような大量の特殊資産の処分は信託企業、特に民営金融企業の業務能力の試金石ともなる。だが、剛性兌付神話に胡坐をかいて経営破綻していても存続していた「ゾンビ企業」が今後続々と破産することになれば、中国国内の企業や投資家だけの手におえるのだろうか。
 そもそも、これまで国有銀行などの不良資産の受け皿であった四大国有資産管理会社(AMC)の一角をなす華融集団ですら自ら野放図な業務拡大により総資産における負債率90%という無茶苦茶な状況に陥って、7月には上海ハンセン総合指数と港股通指数のインデックスから外されている体たらくだ。中国企業にいくつもの相反する利権の絡む資産を冷静に公平に評価し取捨することができるのかどうかも、気になるところだ。
 そこで目下注目を集めているのが外国の資産管理会社、投資運用会社の動向だ。中国は2018年以降、証券市場の対外開放に本格的に踏み切った。2021年以降、ブラック・ストーン、オークツリー・キャピタル、KKR(コールバーグ・グラビス・ロバーツ)といった名だたる国際投資運用企業が中国市場での投資規模を拡大、不動産分野での特殊資産投機を展開している。

いま起きている「本当のこと」

 ブラック・ストーンは富力集団からマカオ香港広東グレートベイエリア内最大の都市物流パークの70%株権、泛海(オーシャンワイドホールディングス)傘下の米国国際データ集団を買収、SOHO中国総本部の91%の株権などの買収を次々と進めている。オークツリーは蘇寧に2.85億ユーロ融資し、蘇寧が所持しているインテルナツィオナーレ・ミラノ株を抵当に押さえた。KKRは39億ドル投じてアジアインフラ基金、17億ドル投じてアジア不動産基金を設立したほか、150億ドルをかけてアジアの四つのファンドを調達。中国のプライベートエクィテイ・基石資本の持つ薬局運営プラットフォーム「全億健康」のすべて株も買収した。
 これは中国の医療流通分野では近年まれにみる大型買収劇だった。2020年4月には中国最初の外資(香港資本)が株主の資産管理会社、海南新創建設資産管理企業が成立している。このほか、深圳、広州、浙江省などの地域での自由貿易区改革案の中で、不良資産の外資企業への譲渡が検討されている。
 外資が中国の特殊資産市場に参入することはもちろん今までもあった。アジア金融危機後、暫定法規によって試験的に不良資産を外資に引き受けさせる試みがあった。華融からモルガンスタンレー、リーマンブラザーズなどの4社合同のチームが108億元で四つのバルク資産を購入したのが2001年10月。これが外資の特殊資産市場デビューだ。翌年にはゴールドマンサックスが中国四大AMCのひとつ長城集団から80億元分で特殊資産を購入した例もあった。

不良債権を「買う人たち」

 2005~2008年には帳簿上1600億元の不良資産が外資に購入された。これは中国不良資産総額の10%に当たり、外資はおよそ40%の収益を得たといわれている。しかしながら、2009年以降はリーマンショックの影響もあり、また外資が不良債権市場で暴利をむさぼっている状況に警戒感を増した当局が規制を強めた。同時に国内で資産管理会社が少しずつ市場を開拓、外資を駆逐しはじめた。2015年以降、中国がこの不良資産市場、特殊資産市場に外資を呼び込もうとし始めた。中国の企業倒産が本格化してきたからだ。オークツリー、ファラロンなどが相次ぎ前後して合資企業を設立していった。だが、監督管理当局は一部地方には金融資産管理企業を新設させ、こうした企業がコストに見合わない市場競争をはじめた。このため、むしろ外資企業は様子見の状況だった。
 2018年以降になって、中国の不良資産規模は初めて2兆元を突破。特殊資産市場の過当競争も少しずつ落ち着いてきたので外資も再度、中国市場への進出意欲を見せ始めた。2018年外資企業が購入した中国の不良資産は32億ドルで2017年の2倍となった。外資銀行とファンドが2019年に中国市場で成立させた不良資産取引は14件、投資額は11億ドル。北京地方金融監督管理局サイトのデータによれば、オークツリーだけでも65億ドルを中国の不良資産市場に投じている。

「狼」たちの宴は始まったばかり

 こうした外資金融、機関投資家、資産運用会社はかつて日本では「ハゲタカ」と呼ばれたが、中国の専門家、学者たちは「狼」と呼んでいる。「狼を招きいれていいのか」といった議論はある。だが中国の不動産や社債バブルの焼野原は今後も屍累々、腐敗させるくらいなら狼の手を借りた方がいい、というのが今のところの体制の意向だ。
 だが、もし中国が狼の手を借りてゾンビ企業のむくろを片付けたとしても、その先にあるのが徹底した共産党による規制と管理下の経済市場であるならば、構造改革など土台無理ではないか、という気もする。いずれにしろ下半期は中、下流の中小企業の業績はさらに悪化し、実体経済の債務リスクは上昇するとの予測が出ている。狼たちの宴は始まったばかりだ>(以上「現代ビジネス」より引用)



 引用したのは「現代ビジネス」に掲載された中国評論家の福島香織氏の長い論評記事だ。しかし習近平氏が昨年から本性を露わにした「戦狼外交」及び、その「戦狼外交」に対する欧米諸国から手厳しい反論を受けるや、臆病者のように「内部循環経済」を謳い、「必ず勝利する」と中国民に対して強い姿勢を示し続けている。
 しかし中国経済の脆弱性に習近平氏は気付いていないのか、あるいは気付いていても気弱なところを国民に察知されると中国主席としての面子に関わるため、あくまでも強気一辺倒で振舞うしかないのかも知れない。果たして福島氏が引用評論の題は「習近平が“自爆”へ…いよいよ中国経済「倒産ラッシュ」で「狼たちの宴」が始まった!」だ。 習近平氏はまさに自爆しようとしている。

 福島氏は「狼たちの宴が始まった」と結んでいるが、その狼がいわゆる「ハゲ鷹」であるなら、不良債権を買い取っても、それが買い取り音以上の価値を生むものでなければならない。みすみす狼たちが損を被るとは思えないからだ。
 そうすると政府が不良債権を購入した狼たちに、彼らが購入した不良債権に対する「利回り」を保証するか、高価買取を約束していなければならない。なぜなら中国企業の不良債権が国際金融で流通するとは思えないから、結局は中共政府「保証」がなければ「ハゲ鷹」達だって手を出さないからだ。だから福島氏は「その先にあるのが徹底した共産党による規制と管理下の経済市場であるならば、構造改革など土台無理ではないか、という気もする」と結んでい。

 日本で不良債権を飼うとすればヤクザが通り相場だった。サラ金が持て余している不良債権などを安く買い叩いて、組の若者たちを取り立てに向かわせる、という手口だ。そうすれば額面百万円の不良債権を10万円で買い取って、債務者を脅して30万円の回収で手を打てば20万円の儲けとなる。
 そうしたヤクザまがいの手法が外資に出来るだろうか。しかも不良債権の相手も多くの場合は中国企業だ。しかもほとんどのケースが国営企業だ。そうすると中共政府が直接手を下した方が早いことになり、実際に政府が「損切」をして再生させている例もある。

 経済が急拡大している内は不良債権は大した問題ではなかった。なぜなら経済の急成長期にはインフレが進行して不良債権の額面価値が実質的に下落するからだ。しかし経済成長が減速し、さらにマイナス局面に入ると不良債権は企業に重くのしかかってくる。
 「戦狼外交」へと習近平氏が経済・外交政策を転じたことにより、中国経済は急減速した。コロナ禍の影響もあって、昨年はマイナスとなっている。今年に入っても昨年に続く全土的な大洪水と武漢肺炎の再蔓延で中国経済は芳しくない。背伸びして投資した不動産価格は下落に転じ、政府が不動産の販売価格のガイドラインを提示して、それ以下で販売してはならないと「規制」している。多くの不動産企業は損切すらできないまま、資金ショートにより相次いで頓死しているのが現状だ。

 国家財政が枯渇し始めた中共政府は慌てて金集めに動いて、金の卵を産む鳥を殺して食べ始めた。IT民間企業を相次いで国営化と称して接収し、配車企業などを支配下に置いた。中国ITへの国内金融機関の投資を禁じる一方、外国からの投資は禁じない、として外国からの投資を呼び掛けている。
 しかし「改革開放」から「内循環」に舵を切った中共政府の外資導入促進策など誰が信じるというのだろうか。それは単に国家予算が枯渇したからに他ならない、と外国投機家たちは即座に看破するだろう。それでも中国へ進出しようと考える企業経営者がいるとしたら、中国経済のパラダイムが転換したことを知らない能天気な思考回路しか持たない経営者だ。中国へ進出したなら「反国制裁法」によって、丸裸にされて追い出されるだけだ、という事すら想定できない愚か者だ。福島氏が看破した「徹底した共産党による規制と管理下の経済市場であるならば、構造改革など土台無理ではないか」との予測こそ、正しい中国の近未来予想ではないだろうか。

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