熱海土砂災害は人災だ。

<熱海市で発生した土石流災害では、9人が犠牲となり、20人が安否不明となっている(7月9日現在)。連日、捜索活動が続くが、悪天候や泥が多い現場での作業は難航している。 「土石流の起点から海岸までの傾斜角度は、約11度の急勾配です。土石流は時速40キロ弱、3分程度で勢いよく流れ下っていったのです」 
 そう指摘するのは、山口大学大学院の山本晴彦教授(環境防災学)だ。
  黒々とした土石流は、逢初(あいぞめ)川を一気に駆け下りていった。伊豆山で盛り土が確認され、崩落源となった地点の標高が約400メートル。そこから谷を下って河口までの距離は、わずか約2キロしかない。
 「このため土石流は3メートルほどの高さになって、川べりの住宅をなぎ倒した。これが扇状地であれば土石流は左右に広がるので、土砂の堆積(たいせき)深は浅くなる。ところが、今回は横に広がらなかった分、土砂が堆積し、警察官や救急隊員たちは腰まで泥につかっての作業を余儀なくされています。地形的に河岸段丘で高低差があるため、重機も入れず、行方不明者の捜索を非常に困難なものにしています」
  今回、崩落した盛り土の量は約5万5500立方メートルと推定されている。
  崩落現場を含む一帯の土地は、神奈川県小田原市の不動産会社が2006年に取得。宅地開発のため木を伐採し、09年には高さ15メートルの盛り土をする計画を示していた。ところが、20年には約50メートルまで積み上げていた。産業廃棄物も混入していたことから、熱海市は再三にわたって行政指導をしていたが、業者は応じないまま撤退したという。
  盛り土工事をする場合は、浸透してくる地下水や雨水を効率よく抜くため、排水パイプや暗渠(あんきょ)管などの設置が不可欠だが、排水工事をした形跡はない。静岡県の難波喬司副知事は「盛り土の工法が不適切だった」と明言し、人為的要因である可能性を示唆した。
  地質学者の塩坂邦雄氏がこう解説する。 「雨水や地下水が盛り土にたまってくると、保水能力を超えて重くなります。さらに、盛り土と山肌の境界部分に水が入ると、浮力が働き滑りやすくなります。それで一気に崩れたと考えられる」

 一方、崩落現場近くには、尾根の岩盤を切り拓いて平坦(へいたん)にし、大規模太陽光発電のためのソーラーパネルを敷き詰めた土地がある。これは現在の所有者が造成したものだ。今回崩壊した谷とその周辺一帯の土地は、現在の所有者が、盛り土工事をした時の元所有者から11年に購入した。
  ソーラーパネル造成地が土石流の発生に影響したとの指摘もあるが、所有者の代理人の河合弘之弁護士はこう反論する。 「ソーラーパネルのある土地から流れる水は、崩壊した谷とは反対側に流れるようになっている。ソーラーパネルが原因になったというのは、根も葉もないデマだとはっきり言っておきたい」
  前出の塩坂氏は、ソーラーパネル造成地と土石流発生との関係については、「直接的な関係はない」とした上で、こうした見方を示す。 「ただし、まったく影響がないわけではない。盛り土とソーラーパネル造成地は最も近いところで20~30メートルほどしか離れていません。ソーラーパネル造成地のほうが標高は高くて工事用の取り付け道路があるのですが、それがちょうど雨どいの役割をして、水が盛り土のほうへ流れ込むようになってしまっていた。その集水面積は軽視できません」
  宅地などの造成でもソーラーパネルでも、山地での開発が進めば環境には何かしらの変化が現れる。今回、発生源を調査したNPO「地球守」の高田宏臣代表理事はこう話す。
 「崩壊した谷の上部にも、残土によって造成したと思われる平坦な土地があります。その土を見ると、雨水が表土をえぐり、泥水を谷に流し込んでいました。また、谷部は盛り土によって水脈が止められ、土は粘土のように水を通さない泥になっていた。こうした泥が川底に堆積し、土石流が発生しやすい状況になったと思われます」 
 高田氏が続ける。
 「熱海と同様の森林開発は、日本のいたるところで起きています。今の日本の土木工事は、地形を壊すことに無頓着になっています。今回の土石流は特別な出来事ではありません」 

 実は、過去にも“人為的”な要因による土石流が発生している。
 一昨年の台風19号の影響で土石流が発生し、12人の死者・行方不明者を出した宮城県丸森町。実家が全壊した菅野由香理さんは、原因の調査を続けている。町内では141カ所の土砂崩れが発生していたが、最近になって発生源に共通の要因があることに気づいた。
 「土石流災害が起きる前から、雨が降ると山から泥が流れてくることがあったんです。それで地域の人は『山の奥で木を切ったからじゃないか』と言っていました。発生直後から発生源に注目していたところ、多くの場所で大規模な森林開発が行われていたことがわかりました」 
 菅野さんと共同で現地調査をした、自伐型林業推進協会の中嶋健造代表理事は言う。
 「熱海の土石流発生源も盛り土の上に敷設された道路が崩壊したように、地形を無視した道は土砂崩れを引き起こします。丸森町でも、土石流の発生源は大規模に森林を伐採する皆伐(かいばつ)地や木材を運搬する時などに使う作業道や林道が原因でした」 
 そこで、同協会が土石流被害の大きかった丸森町廻倉(まわりぐら)地区の土砂崩れ発生現場をグーグルアースの衛星写真で確認すると、同地区では54カ所の土砂崩れがあり、このうち53カ所が皆伐地や林道、作業道が発生源になっていた。人工林や広葉樹林の崩壊は1カ所だけだったという。
  同協会では、昨年7月の豪雨で大きな被害を受けた熊本県球磨村も同じ手法で調査している。すると、確認できた183カ所の土砂崩れのうち、9割以上が林業施業を原因とする崩壊だった。中嶋氏は言う。
 「皆伐地の作業道だけではなく、植林してから5~20年程度の森も崩壊していました。皆伐後に植林をしても、スギやヒノキが地中に根を張るまで20年以上かかるためです。植林してから40年以上経過した未整備林や放置林が災害の原因になると言う人もいますが、丸森町や球磨村では、未整備林や放置林はほぼ無傷でした」 
 大規模な森林破壊が相次いでいる背景には、政府が掲げる「林業の成長産業化」がある。政府は現在、木材自給率を25年までに50%まで引き上げる目標を掲げているが、19年の自給率は37.8%。目標達成は困難になっている。その差を埋めるために木材生産量の増加に必死になっているのだ。
 「数年前なら、大規模な皆伐は山深いところが多かった。それが、最近では人里に近い所でも行われています。大面積な森林伐採を止めない限り、今後、熱海のような災害が増えるのは間違いありません」(中嶋氏)>(以上「週刊朝日2021年7月23日号」より抜粋)




 亡くなった人11名、行方不明者17名という大惨事の熱海土砂災害が発生してから二週間が経過した。未だに現地は復旧しておらず、被災者約500人が不自由な避難所暮らしを送っている。
 熱海土砂災害が発生した当初から、私はこのブログで「人災だ」と断定している。適切な防災施設を設置しない盛土を放置した側と、その防災上の適正化を所有者に何度も申し入れつつ結果として「放置」していた熱海市と静岡県の責任も免れないが、いずれにせよ、人災であることに変わりない。

 なぜならこの盛土の崩落地以外に山肌に地滑りの痕跡がほとんど見えないからだ。つまり豪雨が土石流をもたらした直接的な原因だが、それも脆弱な状態のまま放置されていた「盛土」があったために起きた災害だからだ。
 もとより、土捨て場などの理由のいかんにかかわらず、盛土などすべきではないし、その盛土に適切な「水抜きの設置」や「土止のコンクリート擁壁」などが設置してあれば、土石流は発生しなかっただろう。

 さらに隣接地の尾根を削った広大な太陽光発電施設も10ha以下なら開発申請が要らない、という理由からか三人(社)の所有となって、すべて10ha以下の開発申請不要の広大な太陽光発電施設が設置され、尾根の樹木が伐採されていることも盛土へ流れ込む流域雨量を増やす結果となっているのも否めない。つまり隣接する太陽光設置面積が隣接地と併せて10haを超える場合に、会社が異なる場合でも業者に対して開発申請を提出すべきだ、と行政は業者を指導すべきだった。そうすれば尾根を大規模に伐採することはなかった。
 業者の開発逃れと思われる開発業者の名義変更を安易に認めた行政の責任は重大だと思われる。そして開発申請逃れとしか思えない、隣接する土地の太陽光開発を主導して行った企業の責任を土石流災害被害者は問うべきだ。

 そして急斜面の山から、じかに街へと続く河川や谷間に砂防堰堤が一つも見当たらないのも奇異だ。ハザードマップでは今度の土石流に襲われた地域は黄色で塗られた危険地域に当たる。それなら市議会等で「土砂災害の危険地域に指定された下流に家屋が密集する地域の安全確保のために砂防堰堤の設置は必要だ」と議員諸氏から要望等は出なかったのだろうか。
 つい数年前にあった広島安佐北区の土石流災害現場を見れば、熱海市に類似した危険地域があることは誰にでも認識できたはずではないだろうか。ハザードマップは危険地域等を色塗りして「一件終了」ではないはずだ。危険だと認識されれば、いかにして危険を取り除くように出来るのか、を執行部と議会は検討して適切な対策を実施すべきではないか。そのための議会ではないのか。

 熱海土石流災害は「人災」だ。誰が見ても疑問の余地はないはずだ。その人災の引き金となった盛土を盛った業者と、現在の所有する業者等の「謝罪」及び「説明」する「場」が未だに持たれないのは何故だろうか。そしてハザードマップは塗り絵の「お遊び」でないことを行政当局と各議員諸氏は肝に銘じるべきだ。

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