消費増税が日本を衰亡させる。

<とうとう4度目の緊急事態宣言だが、テレワークが際限なく続くな、という感慨しか浮かばない。それでも新型コロナウイルス前に比べて、当方の行動パターンが変わった点は何かといえば、散歩を兼ねて、家内のショッピングに付き合う回数が増えたことだ。

 男物売り場でポロシャツを手に取ると、家内は「いいじゃないの」とのたまうが、傷むのは、無情にも当方の稼ぎ額減少にスライドする毎月の小遣いだ。そこで「武士は食わねど」とは野暮、経済記者らしい応答をひねり出す。「いや、いいよ。こんなシャツで消費税10%分負担ならスイカひと玉でも買ったほうがいい」
 すると、「あなたは何にも知らないのね。それで買えるのは8分の1カットくらいよ」。4分の1カットのスイカは見たことがあるが、さらにその半分か。いやはや、情けない、いじましい限りである。

 そう、景気が悪くなったのを、コロナ禍ばかりのせいにするメディアの論調にだまされては行けない。
 確かにコロナで人の足が押さえられ、買い物や飲み食い、旅行・宿泊数が減っているのは間違いないが、人々の消費意欲に重くのしかかっているのは2014年4月、さらに19年10月からの消費税増税であり、消費税率10%(食料品などは8%)であることを、見過ごすわけにはいかない。
 家計全体の所得に反映する国内総生産(GDP)は20年度、コロナ前の19年度に比べて20・1兆円減ったが、家計が保有する現預金はこの間76・3兆円も増えた。富裕層がますますフトコロを膨らませている一方で、一般庶民も先行きの不安を感じて、節約してお金を使おうとしないのだ。正味の家計消費は20・5兆円もの減で、GDP減少の大半は家計消費の萎縮による。

 消費税収(一般会計分)はどうかというと、20年度20・97兆円で、所得税、法人税を抜いて最大の税収源になった。18年度比では実に3・29兆円、18・7%の増収である。正味の家計消費が8・2%減なのに消費税収が大きく増えたのはまさに消費税増税の「成果」である。
 輸出は減ったが輸入はそれ以上に減ったのでGDPを構成する純輸出はわずかなプラスになっているが、輸出と内需の不振で企業の設備投資も大きく減ったのだ(グラフ参照)。
 消費税増税を推進した財務省は消費税収増でしてやったり、か。「一将成りて万骨枯る」だ。デフレ下の増税に踏み切った与党と政権は、緊急事態宣言下の東京都民などがアルコール付き飲食を控える間にワクチン接種普及に全力を挙げて取り組むので、景気は急速に回復するとのお念仏だ。消費税増税を支持してきたメディアの大勢がそれに唱和するのは、「社会の公器」の資格を疑う。
 拙論は、一貫して消費税増税が国を滅ぼすと論じ、コロナ・パンデミック(世界的大流行)が勃発するや、消費税率を5%以下に戻せと夕刊フジなどで主張した。
 改めて、大幅な減税を政府、国会に求める>(以上「産経新聞」より引用)




 安倍自公政権ヨイショで名高いマスメディア・ツートップとは読売と産経だった。その産経新聞の特別記者・田村秀男氏が消費税5%引き下げ論をブッている記事を拝読して隔世の感を覚えた。財務省の緊縮財政論一色だったマスメディアの潮目が変わったようだ。
 これまでMMT(Modern Monetary Theory,現代貨幣理論)をブログで展開しても、理解して頂けることは皆無に等しかった。テレビをつければ「国債発行は国民貯蓄の範囲内で許され、それを超えるとハイパーインフレが起きる」などという、飛んでも理論が幅を利かせていた。

 しかし次第に「国家財政」と「家計簿」は異なる、という基本的な貨幣理解が進んで来た。近頃では「政府の借金」は「国民の資産」である、という至極真っ当な理論がやっと広く理解されるに到っているようだ。
 理解が広まったきっかけは昨年の「国民一人当たり10万円」の特別給付にあった。政府は12兆円の「赤字」だが、特別給付を懐に入れた国民は一人当たり10万円の資産が増えたことを実感したからだ。そうしたカラクリをマスメディア散々1200兆円の政府借金は国民一人当たり83万円の借金に相当する、などと大宣伝を繰り返してきた。

 完全に財務官僚によって洗脳されたバカな政治家は減税を主張する野党に対して、何かにつけて「財源をどうする」と増税ありきの議論に終始してきた。それに輪を掛けて経済学オンチの記者たちが「財源の裏付けのない空虚な政策論」と断定する記事を書く捲った。
 もちろんMMT理論でしても国債が無限に印刷できるとは言ってない。限界は自ずとあるが、それは唯一「インフレ率」だけだ。貨幣流通量が実体経済を上回って、インフレが起きたならば金融引き締めのタイミングを見図らなければならない。そしてインフレ率が経済成長率を上回った段階で金融引き締めに転じるべきだ。

 しかし日本は30年来、デフレ経済下にある。労働者所得は平均で15万円も減少している。GDPの伸びも1%台の前半でヨタヨタしている。世界が平均3%台の成長をしているから、世界から見れば日本は衰退していると見えるだろう。
 結果として、日本の物価水準は先進諸国と比較して「廉価」となり、外国人観光客がドッと押し寄せるようになった。決して日本の文化的な魅力が知れ渡ったからではない、物価などが安くなったため手頃な観光地として世界中に知れ渡っただけだ。インバウンド(外国人観光客消費)が増えたと悦に入っていた安倍元総理は日本経済が衰退したから、外国人観光客が増えたという因果関係も分からず、日本経済に危機感すら覚えない能天気な政治家だというべきだ。

 日本の土地やビルが中国人に買い漁られているのも、日本の物価水準が他の先進諸国に比べて格安になっているからだ。実際に中国の名だたる都市の土地価格(土地価格とはいっても占有期間70年の地上権だが)は日本の東京のそれよりも高い。地方都市のマンションですら4,000万円から5,000万円するのはザラだ。
 しかし中国の一般都市労働者の平均賃金は上海ですら月収4万6千円ほどでしかない。それで1億円もするようなマンションを買っているのだから、気が遠くなるような長期負債を背負っているわけだ。裏返せば中国の金融機関は私たちの常識を遥かに超えた、ジャブジャブの宇宙次元の金融緩和状態にあるといえるだろう。

 そうするとどうなるか。日本と比べれるまでもなく異次元の個人消費チョーインフレ経済、というべき状態だ。いや個人だけではない。北京政府も地方政府も先を争って巨大不動産投資プロジェクトを競っていた。需要があろうがなかろうが、高速鉄道を全土に張り巡らし、「鬼城」と呼ばれる巨大ゴースト・タウンを全国各地に出現させた。それらも当然ながら政府支出としてGDPの一角を形成する。
 需給バランスの実態からかけ離れた投資が出来るのも「計画経済」の成せるところだが、無理な「計画経済」がいつまでも続くわけがない。強権により物価高騰を抑えているが、そうしたヒズミは停電などになって表れている。つまり発電原材料の石炭が高騰しているにも拘らず、電気料金は据え置かれているため発電会社は発電すればするほど赤字になる。それで「計画」的に停電を実施することになる。

 日本はすべてにおいて中国と反対だ。異次元金融緩和は投機家たちのもので、国民が住宅ローンを銀行に申し込んでもなかなか下りない。個人消費も罰則に等しい消費税を10%に引き上げる愚挙まで仕出かした。それで経済成長するわけがない。
 異次元金融緩和の貨幣流動性が国民経済へ循環するようにすべきだ。そのために政府は財政出動して公共事業や農家への補助金支出などにより「資金」を全国各地の国民へばら撒くことだ。もちろん消費税は廃止すべきで、それらが呼び水となって企業投資や個人消費が刺激され、全国的な景気マインドが改善される。

 経済停滞していた30年間も世界の平均的3%成長していたなら、労働者平均所得は1,000万円を超えていたはずだ。もちろん日本のGDPも1,200兆円を超えているだろう。停滞することなく日本が経済成長していれば、中国の1,700兆円と豪語している経済など大したことではない。中身を比べれば「組み立て工場」経済の中国など、日本の「モノづくり」経済の盤石さとは比較にならない。
 だが日本を破壊し衰亡させるのを目的とするかのような政権が30年間の大半の期間、政権を担ってきた。「構造改革」と消費税導入で日本を解体し衰亡させることに専念してきた。マスメディアも「構造改革」が実は改革ではなく解体と日本バラ売りだということを一切報じて来なかった。安倍自公政権下でも最も顕著で、以前なら一つでも起きたら政権はフッ飛んでいたであろう公文書改竄事件や隠蔽事件があっても何ともなかったし、総理大臣の個人的な縁者に対する優遇政治も看過された。「さくら~」なども端的な政治の私物化だが、それですら安倍自公政権はビクともしていないどころか、捜査に乗り出すどころか検察は眠っている。自民党の選挙資金1億5千万円の支出に関しても安倍氏への捜査に検察は微動だにしていない。

 しかし菅政権に到って、政治の実態に無関心だった国民もやっと自公政権の無能・無策に気付いたようだ。100年に一度の国家危機のパンデミックに直面していても、遅ればせながらワクチン接種を行っているが、その他は全くといって良いほど無能で無策だ。
 いや、故意に蔓延状態を維持したいと画策しているかのように、国内感染当初から一年半以上も「検査と隔離」を広く国民全体に拡大実施しようとしていない。それで感染拡大を抑え込めるわけがない。「上空の敵機をみんなが睨めば墜落する」と教えた戦中の教師以上の愚かさだ。

 自公政権の無能・無策に気付いたが、それに輪を掛けて野党党首の面々も無能・無策のままだ。ただ相手の失点と揚げ足取りをして悦に入っているだけでしかない。日本の明日を国民に何も提示していない。明確な政治メッセージなど皆無だ。それでは国民が野党を選びようがない。
 だからこのブログで何度も野党は「所得倍増計画」を掲げよ、と提案した。政治の対立軸は「保守」対「革新」ではない。それは「グローバル化」対「反・グローバル化」だ。別の角度から言えば「デフレ経済」対「経済成長」でもある。経済成長なき経済は衰亡経済だ。人口減の日本に経済成長は出来ない、という誤った常識が定着したのはバカな評論家たちの害毒だ。経済成長は産業革命を持ち出すまでもなく、生産性の向上だ。一人で百人分の仕事ができるようにするのが生産性への投資だ。そうすれば労働者は1/100で済むから、外国人労働移民など不用だし、労働人口減が経済成長にマイナスに働くこともない。そうしたパラダイム転換を促すのが政治の役目だ。野党政治家の中で経済成長を主眼に政治を取り仕切れる人物が果たしているのか。いるとすれば2009民主党マニフェストを纏め上げた小沢一郎氏だけではないか。

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