中共政府に牛耳られた世界。
<日米首脳会談の共同声明でウイグル等の人権問題に関し「懸念」を盛り込むらしいが、国連が機能しなくなった今、民主主義国家が連携して行動するしかない。中谷元防衛相等が主張する「人権侵害制裁法」が不可欠だ。
中国に国連を牛耳られた民主主義国家の悲惨
国連の重要な決議機関が中国などの独裁国家によって牛耳られているため、人権を守るための決議を出すことができず、民主主義国家の意思が反映できない状況に陥っている。
たとえば、ミャンマー軍は4月9日、ヤンゴン在住の若者ら19人が先月の国軍記念日に発生した軍幹部の殺害などに関わったとして、死刑判決を受けたと発表した。これに対して軍と対立しているミャンマーの国連大使が、国連安保理の非公式会合に参加し、「ミャンマーの罪なき市民の命を救うには、安保理として一致した強い行動が今すぐ必要です」と訴えた。
しかし国連安保理には中国もいればロシアもいる。まさに人権を弾圧している国家が絶対的な発言権と決定権を持っており、拒否権まで持っているのだ。国連として強い行動に出ることができない状況になっている。
アメリカはバイデン政権になってから、ようやく国際社会に戻ってくる動きを見せ始め、今年3月12日にアメリカは国連人権理事会の会合で、「中国政府による新疆ウイグル自治区の少数民族に対するジェノサイド(民族大量虐殺)やチベットへの弾圧」を批判した。
しかしアメリカはトランプ政権であった2018年6月19日に、国連人権理事会を離脱している。したがってブリンケン国務長官が2月24日に「アメリカは中国の人権問題を追及する方針である」というビデオメッセージを寄せはしたが、アメリカはこの段階ではまだ、あくまでもオブザーバーとしての発言に過ぎない。
それに比べて中国とロシアは昨年10月13日の国連総会において、国連人権理事会の理事国選挙で理事国に選ばれた。任期は3年間で、連続任期は2期に制限されている(新たな任期は2021年1月1日から始まっている)。
昨年4月19日のコラム<トランプ「WHO拠出金停止」、習近平「高笑い」――アフターコロナの世界新秩序を狙う中国>に書いたように、国連のほとんどの専門機関や関連機関を中国が牛耳っている。中国が国際社会における発言権を強化するということは即ち、このたびのミャンマー軍クーデターのような残虐な殺戮行為に軍が出て、多くの無辜の民の命を軍が武器で容赦なく奪っていっても、「国連としては何もできないという状況に追い込まれる」ということを意味する。
ミャンマーではこれまで600人以上の抗議デモ参加者が軍によって殺害されているというのに、4月10日にはさらに80名以上の人が銃撃により死亡しているという。これを止める力が国連にないという恐るべき現実が人類を支配しているなどということがあっていいのだろうか?
ミャンマーの惨状は、「国連」が中国などの独裁国家によって牛耳られていて「動けない」という現実を、否応なしに私たちに突き付けている。
民主主義国家の価値観に基づく横のつながりが不可欠――日本で声を上げた「超党派議連」
だからこそ必要なのは価値観を共にする民主主義国家の横のつながりだ。
4月6日、「人権侵害に関与した外国の当局者へ制裁を科す議員立法制定を検討する超党派の議員連盟」が、国会内で設立総会を開いた。人権侵害に関与した人物や団体に対する制裁を可能とする「人権侵害制裁法」の今国会での制定を目指している。中心となって動いてきたのは中谷元・元防衛相だ。
中谷氏は早くから中国の人権侵害に関し「批判や抗議だけでは改まらない」と指摘していた。人権侵害に対し制裁を科す法律は海外で「マグニツキー法」と呼ばれ、アメリカやカナダ、イギリスおよびEUはこうした制度を整えてきたが、中谷氏は「G7(先進7カ国)で人権侵害のみを理由に制裁する法律がないのは日本だけだ」とも指摘していた。
中谷氏の指摘はアメリカでも広く報道され、私自身取材を受けて分析を求められた。アメリカでは中谷氏が主張しておられる「日本だけ逃げていると思われないよう、口先だけでなく行動できる形をとるのが必要だ」という姿勢を高く評価している。中谷氏が主導してきた超党派議員連盟の動きは日本にとって不可欠だ。
今や「国連は独裁国家に牛耳られているので、国連の外で民主主義国家の価値観による連合」がなくてはならない状況に世界は今追い込まれているからである。
中国というモンスターを生んだのは日本
中国によって国連が牛耳られるようになったのは、日本が1989年の天安門事件後の対中経済封鎖で「中国を孤立させてはならない」などとして、中国を支援してきたからだ。何度も同じ図を出して大変申し訳なく思うが、もう一度中国商務部のデータから作成したグラフを以下に示したい。
民主を叫ぶ若者の声を銃口で封殺した天安門事件(1989年6月4日)に対するG7の厳しい対中経済制裁を、ひとり日本だけが緩和させ、遂には1992年に天皇訪中まで実現させて、壊滅寸前にあった中国共産党による一党支配体制維持に日本は絶大な貢献をした。
図の1992年から1993年にかけてある、理論物理の特異点のようなピークが、それを示している。この時を契機に世界の企業が中国に投資しはじめ、その投資額は年々増えていくばかりだ。こうして天安門事件の時には崩壊寸前にあった中国の経済は命を与えられて、2010年には中国のGDPは日本を超えて世界第二位となった。
そのお陰でこんにちの経済大国・中国がある(2018年にあるピークに関しては拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』のp.381を参照されたい)。
今では中国は、その経済力にものを言わせて人権問題で対中制裁をした国や特定の企業に対して報復制裁を行っている。だから、中国を最大の貿易相手国としている日本政府は、中国による報復制裁が怖くてウイグル人権問題に対する制裁をするのを躊躇しているという側面もあるだろう。
だからこそ、民主主義国家が「一斉に」横につながらなければならないのだ。
天安門事件の時に、日本だけが「抜け駆け」をした結果が、どんな現実を招いているか、日本は猛省をすべきだ。国連が機能しなくなるほどの、人類に対する大罪を日本は犯してしまったことになる。
取り返しのつかないほどの大罪を、日本はこれ以上くり返してはならない。中谷氏を中心とした超党派議員連盟の活動に、心からのエールを送りたい>(以上「NEWS week」より引用)
引用した記事は遠藤誉氏(中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士)のNEWS weekに掲載された論評だ。見出しは「ウィグル人権問題 中国に牛耳られる国連」だ。
まさに国連は中国の独壇場になっている。これまで国連を引っ張って来た欧米諸国は影響力を失い、中共政府が手厚い投資や支援を行っているアフリカや中南米諸国が中共政府の応援団になっている。いまや国連は常軌を逸しているといわざるを得ない。
中国に国連を牛耳られた民主主義国家の悲惨
国連の重要な決議機関が中国などの独裁国家によって牛耳られているため、人権を守るための決議を出すことができず、民主主義国家の意思が反映できない状況に陥っている。
たとえば、ミャンマー軍は4月9日、ヤンゴン在住の若者ら19人が先月の国軍記念日に発生した軍幹部の殺害などに関わったとして、死刑判決を受けたと発表した。これに対して軍と対立しているミャンマーの国連大使が、国連安保理の非公式会合に参加し、「ミャンマーの罪なき市民の命を救うには、安保理として一致した強い行動が今すぐ必要です」と訴えた。
しかし国連安保理には中国もいればロシアもいる。まさに人権を弾圧している国家が絶対的な発言権と決定権を持っており、拒否権まで持っているのだ。国連として強い行動に出ることができない状況になっている。
アメリカはバイデン政権になってから、ようやく国際社会に戻ってくる動きを見せ始め、今年3月12日にアメリカは国連人権理事会の会合で、「中国政府による新疆ウイグル自治区の少数民族に対するジェノサイド(民族大量虐殺)やチベットへの弾圧」を批判した。
しかしアメリカはトランプ政権であった2018年6月19日に、国連人権理事会を離脱している。したがってブリンケン国務長官が2月24日に「アメリカは中国の人権問題を追及する方針である」というビデオメッセージを寄せはしたが、アメリカはこの段階ではまだ、あくまでもオブザーバーとしての発言に過ぎない。
それに比べて中国とロシアは昨年10月13日の国連総会において、国連人権理事会の理事国選挙で理事国に選ばれた。任期は3年間で、連続任期は2期に制限されている(新たな任期は2021年1月1日から始まっている)。
昨年4月19日のコラム<トランプ「WHO拠出金停止」、習近平「高笑い」――アフターコロナの世界新秩序を狙う中国>に書いたように、国連のほとんどの専門機関や関連機関を中国が牛耳っている。中国が国際社会における発言権を強化するということは即ち、このたびのミャンマー軍クーデターのような残虐な殺戮行為に軍が出て、多くの無辜の民の命を軍が武器で容赦なく奪っていっても、「国連としては何もできないという状況に追い込まれる」ということを意味する。
ミャンマーではこれまで600人以上の抗議デモ参加者が軍によって殺害されているというのに、4月10日にはさらに80名以上の人が銃撃により死亡しているという。これを止める力が国連にないという恐るべき現実が人類を支配しているなどということがあっていいのだろうか?
ミャンマーの惨状は、「国連」が中国などの独裁国家によって牛耳られていて「動けない」という現実を、否応なしに私たちに突き付けている。
民主主義国家の価値観に基づく横のつながりが不可欠――日本で声を上げた「超党派議連」
だからこそ必要なのは価値観を共にする民主主義国家の横のつながりだ。
4月6日、「人権侵害に関与した外国の当局者へ制裁を科す議員立法制定を検討する超党派の議員連盟」が、国会内で設立総会を開いた。人権侵害に関与した人物や団体に対する制裁を可能とする「人権侵害制裁法」の今国会での制定を目指している。中心となって動いてきたのは中谷元・元防衛相だ。
中谷氏は早くから中国の人権侵害に関し「批判や抗議だけでは改まらない」と指摘していた。人権侵害に対し制裁を科す法律は海外で「マグニツキー法」と呼ばれ、アメリカやカナダ、イギリスおよびEUはこうした制度を整えてきたが、中谷氏は「G7(先進7カ国)で人権侵害のみを理由に制裁する法律がないのは日本だけだ」とも指摘していた。
中谷氏の指摘はアメリカでも広く報道され、私自身取材を受けて分析を求められた。アメリカでは中谷氏が主張しておられる「日本だけ逃げていると思われないよう、口先だけでなく行動できる形をとるのが必要だ」という姿勢を高く評価している。中谷氏が主導してきた超党派議員連盟の動きは日本にとって不可欠だ。
今や「国連は独裁国家に牛耳られているので、国連の外で民主主義国家の価値観による連合」がなくてはならない状況に世界は今追い込まれているからである。
中国というモンスターを生んだのは日本
中国によって国連が牛耳られるようになったのは、日本が1989年の天安門事件後の対中経済封鎖で「中国を孤立させてはならない」などとして、中国を支援してきたからだ。何度も同じ図を出して大変申し訳なく思うが、もう一度中国商務部のデータから作成したグラフを以下に示したい。
民主を叫ぶ若者の声を銃口で封殺した天安門事件(1989年6月4日)に対するG7の厳しい対中経済制裁を、ひとり日本だけが緩和させ、遂には1992年に天皇訪中まで実現させて、壊滅寸前にあった中国共産党による一党支配体制維持に日本は絶大な貢献をした。
図の1992年から1993年にかけてある、理論物理の特異点のようなピークが、それを示している。この時を契機に世界の企業が中国に投資しはじめ、その投資額は年々増えていくばかりだ。こうして天安門事件の時には崩壊寸前にあった中国の経済は命を与えられて、2010年には中国のGDPは日本を超えて世界第二位となった。
そのお陰でこんにちの経済大国・中国がある(2018年にあるピークに関しては拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』のp.381を参照されたい)。
今では中国は、その経済力にものを言わせて人権問題で対中制裁をした国や特定の企業に対して報復制裁を行っている。だから、中国を最大の貿易相手国としている日本政府は、中国による報復制裁が怖くてウイグル人権問題に対する制裁をするのを躊躇しているという側面もあるだろう。
だからこそ、民主主義国家が「一斉に」横につながらなければならないのだ。
天安門事件の時に、日本だけが「抜け駆け」をした結果が、どんな現実を招いているか、日本は猛省をすべきだ。国連が機能しなくなるほどの、人類に対する大罪を日本は犯してしまったことになる。
取り返しのつかないほどの大罪を、日本はこれ以上くり返してはならない。中谷氏を中心とした超党派議員連盟の活動に、心からのエールを送りたい>(以上「NEWS week」より引用)
まさに国連は中国の独壇場になっている。これまで国連を引っ張って来た欧米諸国は影響力を失い、中共政府が手厚い投資や支援を行っているアフリカや中南米諸国が中共政府の応援団になっている。いまや国連は常軌を逸しているといわざるを得ない。
これまでも国連は「戦勝国クラブ」然として、世界各地の紛争を鎮めるどころか安保理常任理事国(=戦勝国)の利害調整機関としてしか機能して来なかった。その証拠に戦後70有余年もの間、地球上から硝煙が絶えたことはない。
そして現在は中共政府の独壇場と化している。WHOが格好の例だろう。中共政府から巨額投資を受けたエチオピアの外務大臣だったWHOテドロス事務局長は武漢肺炎の現地調査へ赴いた昨年一月に「人-人感染はない」と発表して世界的な武漢肺炎の大流行を引き起こした。今や一億人を超える人類が感染し、100万人を超える人々が亡くなって、さらに世界各国で蔓延している。WHOは一体何を仕出かしてくれたのか、と批判の大合唱が起きても不思議ではないが、人々は「国連」に畏怖しているのか、そうした声はあまり高くない。
中共政府の中国はWTOの自由貿易機構をフルに利用して国力を増強してきた。その支援をした最大の援助国は米国であり、日本だ。しかし現在、中共政府が敵視しているのは米国であり日本だ。
何という恩知らずの国だろうか。しかも当初から「韜光養晦」策で世界を欺いていたというのだから話にならない。香港返還時に英国と交わした「一国二制度」も韜光養晦の一環で、当初から反故にする「条約」だったというのだろう。
中共政府はすべて世界は中国共産党のためにある、ということなのだろう。世界平和も中国共産党が世界の覇権を握った暁に実現できると考えているのではないか。そのための人権弾圧も流血の犠牲も、すべては革命のためだ、として正当化されるのだろう。
何という時代錯誤だろうか。中共政府の要人たちは20世紀初頭のロシア革命期を生きているようだ。人類は十分すぎるほど20世紀で「人殺し」を大規模に演じて、散々反省したはずではないか。もはや21世紀の現代国際社会ではいかなる論理であろうと、他民族を抑圧したり人権を侵害することは許されない。中国共産党が他国や他地域の民族を抹殺したり漢族同化策を弄することは許されない。
民主主義国家はそれが誤りだろうが、国民の多数意見に政権を委ねることを「正義」だと規定している。しかし中共政府は共産党が憲法の上位に存在して、何物にも縛られない全権を行使している。だから中共政府が中国民の民意とは別に、他国や他地域に大量の漢族を「移植」させて、国や地域を丸ごと乗っ取ろうとしていることと、中国民の民意とは必ずしも一致していない。民主主義国は国際的な連帯を形成して中共政府の前世紀的帝国主義に反対し阻止すべきだ。中共政府は地球上に存在している最も危険な政権だ。
民主主義諸国が最も警戒すべきは自国内で暮らす中国人だ。彼らは何処で暮らしていようと中共政府の「国家総動員令」に従うように義務付けられている。その例は冬季長野オリンピックの聖火リレーで、ウィグル人団体が善光寺付近で「中共政府の人権弾圧」に抗議するデモを計画した際に、東京から大挙して中国人留学生などが中国総領事館が手配した貸切バス数台に分乗して駆け付けて、ウィグル人団体に暴行を働いた事件があった。彼らは日本という主権国家に暮らしていても、中共政府の「国家総動員令」に従う、という国家主権を脅かす存在だと日本国民に知らしめた。その事件を決して忘れてはならない。
既に在日外国人のトップを占めているのは朝鮮人ではなく、中国人だ。70万人弱の朝鮮人に対して、中国人は120万人の多くを数えている。
そして、注意すべきはそれぞれの国に入り込んでいる中共政府の活動家たちだけではない。むしろ国内で暗躍しているのは中国人と限らない。反日・日本人だっているし、最悪の場合は自国の外交官だったり自国の政治家だったり評論家だったりする。親中派と称する連中の言動に注視すべきだし、彼らの影響力を削ぐように世論を喚起しなければならない。
国会で中国人などが日本の土地を爆買いしている現実に対して、外国人の土地購入を制限する法案の審議で三浦某と称する国際政治学者は「中国人の土地爆買いに何の問題があるのか、自由であるべき」との暴論を吐いた。そして冬季北京オリンピック参加拒否の動きに反対意見を述べている。
こうした人物こそが要注意人物だ。対中制裁を自由主義諸国が連携して実施しようとしている最中でも反対意見を述べることは自由だが、自由を保障する民主主義国の欠陥を露呈している一面でもある。自由な意見を排除してはならないが、要注意人物として警戒する必要はある。彼女たちの存在が今日のモンスター国家・中国を作り上げたともいえる。