米中全面戦争はあり得ない。ただゲリラ的戦術から尖閣諸島を守る必要がある。

中国とアメリカの軍事衝突は「もうすぐ」…?
 中国の軍事行動の危険が高まっている。アメリカとぶつかる。そのとき日本も、ただではすまない。なぜ、軍事衝突が起こるのか。どんな衝突のシナリオが考えられるのか。その背景とともに考えてみよう。

 アメリカ、オーストラリア、インド、日本。それにイギリスも加わって五カ国が会議を開くことになった。「自由で開かれたインド太平洋」がテーマだ。これは中国包囲網である。中国の軍事的冒険に待ったをかける、牽制のサインである。でも、効果があるのかわからない。
  中国が、ユニークな点はどこか。それは一国なのに、その存在それ自体がグローバルなことだ。こんな国はあまりない。 
 この国はとにかくサイズが大きい。人口は14億人もいる。それが、内モンゴルもチベットも新疆ウイグルも領土です、中華民族の中国です、と言っている。そしてさまざまに自己主張する。中国ナショナリズムである。
  中華民族とはなんだろう。中国は多民族ではなかったのか。  清朝は、満洲族の王朝だった。漢民族は服従した。ほかにモンゴル族や回族やチベット族や朝鮮族や…、多くの民族がいた。さまざまな民族がひとつの国をつくることを、「五族共和」といった。  そのあと、梁啓超が最初に言い出したようだが、「中華民族」の言い方が始まった。言葉があると、それが指す実体があることになる。中国人は中華民族だ、である。  実際はどうか。中国人の大部分は、漢民族である(およそ90%)。漢語を用い、漢字を使い、漢民族の文化と伝統をもつ。  そして、漢民族のほかに、多くの「少数民族」がいる。漢文化に同化してしまった人びともいる。自分たちの言語や文化伝統をなくさないでいる人びともいる。
 
中国ナショナリズムの問題点
 中国の憲法は、漢民族以外の民族として生きる権利を保障しているはずである。けれども実際には、その正反対のことが行なわれている。  漢民族と中華民族の二重構造。巧妙なフィクション。名前は中華民族で、実態は漢民族。これが、中国ナショナリズムの問題点である。  英語で考えると、このトリックがわからない。中国はChina 。中国人はChinese 。はるか昔からそうだった。なぜならChina は「秦」の意味。これが西欧語に定着したのだ。  日本語には、漢字、漢文、漢民族、などのいい方がある。中国は新しい言葉だ。だからなじめずに、支那といっていた。戦後は、中国になった。つまり日本語は、漢と中国を区別する。  漢民族を英語でひくと、Han Chinese とある。でもあまり聞かない。中国人も漢族も、Chinese ですませている。  中国語はどうか。漢語(Hanyu) と中文(Zhongwen)の両方の言い方がある。前者は、漢族の言語。これが正しい。でもそれを、中文(中国人の言語)ともいう。漢族の人びとは、自分が中国そのものだ、と思いたいのだ。  以上、中国ナショナリズムのロジックをまとめてみる。 ----------  
1)…→清朝→中華民国→中華人民共和国、はみな中国である。  
2)中国を担ってきたのは、中華民族である。  
3)内モンゴル、チベット、新疆ウイグルは、清朝が支配していたから中国である。  
4)中国に住む人びとは、中国公民で、中国政府に従わなければならない。  これにもう一行、  
5)中華人民共和国と中国政府を、中国共産党が指導する。 
----------  を加えると、ロジックは完成する。  モンゴル人、チベット人、ウイグル人は、中華民族の一員(中国人)なのだから、中国語(つまり、漢語)を話しなさい。中国に同化しなさい。もちろん独立は許さない。中国の大多数の人びと(漢民族)には、自然に思えるかもしれない。でもなんと、強引なのだろう。
 
中国は「一国二制度」をやめた
 中国に実力がないうちは、強引なことはできなかった。トウ小平は慎重だった。だから「一国二制度」を提案し、香港は50年間、現状のままでいいです、と保証した。  「一国二制度」は、実は、台湾に向けたメッセージだった。「一国」なのだから、独立してはいけない。でも「二制度」だから、いまの政権はそのままでよいですよ。時間が経って合意できたら、「一制度」になりましょう。  冷戦が終わり、社会主義国が総崩れになった。中国は世界情勢を深刻に受け止め、多党制や連邦制も、こっそり内部で検討したようだ。中国共産党の一党支配が続けられなくなったらどうしよう、といちおう考えたのである。  でも中国は、実力をつけた。アメリカなど世界を相手に、自己主張し始めた。これまでの遠慮はやめよう。そこで、「一国二制度」をホゴにして、国家安全保護法を香港に適用した。  一国一制度だ。新疆ウイグルや内モンゴルでの締めつけを強めた。「中国の特色ある」社会主義市場経済を進めると宣言した。「中国の特色ある」とは、やり方が西側諸国と違っても、文句を言わせないぞ、という意味である。中国には、絶対に譲れない「核心的利益」がある、とも言い出した。
 
習近平の「強硬路線」は止まらない…
 こうした強硬路線の先頭に立つのが、習近平だ。トウ小平が決めた最高指導者は「二期10年」のルールを棚上げにし、続投する構えだ。背後には、習近平の強硬路線を支持する大勢の党幹部がいる。  内モンゴルでもチベットでも、新疆ウイグルでも、中国はやりたいようにやっている。人権侵害じゃないのか。外国が文句を言っても、「国内問題だ」とはねつける。香港も、「国内問題だ」で批判をはね返す。  問題は、台湾だ。中国にすれば、台湾は中国の一部で、「国内問題だ」。アメリカは、そうですか、と引っ込むわけにはいかない。台湾は、選挙で政権を選択する民主主義が根付いている。実質的な独立国だ。アメリカは、「ひとつの中国」原則を認めた代わりに、「平和的に問題を解決」するのだぞ、と釘をさしただろう。中国が腕ずくで、台湾を併合するなど、指をくわえて見ているはずがない。  中国は、どうあろうと台湾を取り返して、中国の統一を完成させたい。中国ナショナリズムの悲願である。それができる軍事力があるのに、なにもしなければ、国内から突き上げを喰らうだろう。  中国が、台湾を実力で取り返す。これは、既定路線である。あとは、タイミングの問題だ。そう、アメリカも西側諸国も、覚悟しなければならない。  とは言え、いきなりの軍事行動はリスクが大きい。台湾侵攻は、1945年の沖縄上陸作戦よりもっと大規模なスケールになるだろうからだ。  そこで手始めに、ちょっとした軍事作戦で、アメリカの出方を探る可能性がある。たぶんそれは、尖閣諸島ではない。日本は日本領土だと言っているし、アメリカは日米安保条約の適用範囲だと言っている。作戦が困難で、テストケースになりにくい。  それより、中国が中国領だと主張している、台湾の小島がちょうどよい。「国内問題」だという理屈が立つからだ。たとえば、東沙諸島。南シナ海の真ん中にあり、台湾が実効支配している。これを奪取して、アメリカが本気で反撃するか様子をみる。  この種の作戦に対して、アメリカは、絶対に許さないと強く出る必要がある。もしもアメリカ艦隊に、中国大陸から空母キラーのたぐいが飛んで来れば,空爆や巡航ミサイルで同程度の反撃をする。日本も、周辺事態法にもとづいて、アメリカを助太刀しなければならない。
 
中国vsアメリカ連合が軍事衝突したら…
 では、中国に警告を発する意味で、アメリカが先手を打つことは可能か。  作戦としては可能だ。中国が勝手に埋め立て、軍事施設を置いた南海の島々を、「国際法違反」だからと破壊する。空爆やミサイルで、軍事施設を粉々にしてしまうことは可能だ。  だがこれば、逆効果だろう。中国のナショナリズムに火が付く。こんな侮りを受けるのは、戦力が足りないからだ。経済力のありたけを注ぎこんで、軍事力の増強をはかるだろう。そして、またたく間に、台湾上陸作戦ができるだけの軍備を整えるだろう。  この春、アメリカの空母二隻に加えて、イギリスの新造空母クイーン・エリザベスが南シナ海で合同演習を行なう。ドイツの艦艇も参加する。中国をにらんだデモンストレーションだ。  それもよいが、台湾防衛のため、東アジア地域の防衛力を強化する必要がある。中国空軍に比べて数で劣る台湾に、ステルス戦闘機を売却したり、日米共同で軍事演習を行なったり、中国の軍事的冒険を思い止まらせる圧力をかける。強硬路線は高くつく、とはっきりサインを送るのである。  中国が軍事行動に訴え、アメリカと衝突するなら、台湾はもちろん、アメリカや日本も大きな痛手を負う。それ以上に、中国がいちばん大きな打撃を受ける。軍事バランスが崩れないようにアメリカや日本が努力して、この地域の平和を保つことは、中国の利益にもなるのである>(以上「現代ビジネス」より引用)





 引用記事は現代ビジネスに掲載された橋爪 大三郎(社会学者)氏の論評だ。経済規模の拡大により発熱する中共政府が軍拡という捌け口に国民の不満を向けようとしている。そのことを巧みに橋爪氏は記述されているが、発熱し暴走する中共政府に対する解決策は何も示していない。いや橋爪氏は解決策を示す必要がないと思っているのかも知れない。
 なぜなら中共政府は米国を旗手とする自由主義諸国を相手に戦争などする気がないと思っているからだ。弱小国相手にコケラ脅しの空母を仕向けて従わせることはできるし、今後ともそうした手法は使うだろう。そうしなければ経済成長が停止した国民の不満の捌け口がないからだ。

 中国経済は停滞し、後退局面に入っている。経済規模が拡大している間は制度矛盾も分配矛盾も「発展的解消」により社会秩序は安定する。だから二年前まで中共政府は「保八」というスローガンを掲げていた。つまり年率8%の経済成長すへきだ、ということだ。
 しかし高度経済成長が永遠に続くわけがない。高度経済成長は環境汚染や投機バブルを派生させる。すでに三年前の上海株式大暴落時に中共政府は株式市場を「統制市場」化した。そして金融バブル崩壊を迎えて、中共政府は不動産価格統制や外貨統制を強行している。そうした強権的な統制により中共政府の支配体制が崩壊するのを防いできた。

 しかし、もはや統制も効かなくなりつつある。その最たるものが消費者物価だ。トンコレラなどの蔓延で数百万頭ものブタが殺処分され、数千万羽の鳥が鳥インフルで殺処分された。それにより食肉市場が高騰している。
 そして前年春から秋にかけての穀倉地帯の長江洪水と氾濫により食糧は決定的な不足をきたしている。さらに秋にトウモロコシの生産拠点の東北部を襲った台風や害虫などにより極度の減産となっている。中国の食糧不足は深刻な影響を中国全域に及ぼしている。

 橋爪氏の論評は「中米対決があるや否や」と紙芝居屋のオヤジのように囃し立てているが、結論は正規軍同士の正面衝突は起きない、とすべきだろう。なぜなら中国共産党の幹部たちは蓄財した巨万に富を米国やオーストラリアやカナダやスイスなど、自由主義諸国へ移している。そして彼らの子供や愛人までも米国などに住まわせている。
 米中戦争勃発となれば米国内の資産は凍結されるし、子供たちや愛人たちの身柄が拘束されるかも知れない。そうした事態は何が何でも避けなければならない。そうすると残された選択肢は正規軍の正面衝突ではない。民兵による強訴的占拠があり得るだけだ。そのヒントはフィリピン近海に出現した220隻もの大漁船団だ。

 一隻に100人乗っているとして、220隻なら2万2千人だ。民兵とは 退役軍人からなる「民間組織」だ。しかし実質は人民解放軍と何ら変わりない。尖閣諸島に2万2千人もの人民解放軍が民間人を装って殺到して上陸し始めたなら、米軍といえども艦砲射撃などの手出しができない。
 残された国土防衛方法は機雷の敷設しかない。日本の海上自衛隊は世界に冠たる掃海技術をもっている。もちろん掃海艇も中東で活躍した木造船の後継船が既に就役している。掃海が出来れば敷設はお手の物だ。尖閣諸島周辺を機雷の巣にすれば良い。近づく船には「日本領土へ侵入するのなら自己責任でどうぞ」と宣告するだけで良い。

 最後に一点だけ。「中国のナショナリズムの問題点」の章で述べられていることだが、橋爪氏も中共政府が国民に洗脳宣伝している
1)…→清朝→中華民国→中華人民共和国、はみな中国である。  
2)中国を担ってきたのは、中華民族である。  
3)内モンゴル、チベット、新疆ウイグルは、清朝が支配していたから中国である。  
4)中国に住む人びとは、中国公民で、中国政府に従わなければならない。  これにもう一行、  
がすべて嘘だということだ。橋爪氏は明確に指摘していないが、清国は旧満州の少数民族「女真族」の王朝だった。だから辮髪といった奇妙な髪形をしていた。
 中国の歴史は日本国民には理解し難いだろうが、いわば「ブツ切り」の歴史だ。王朝ごとに少数異民族と漢民族とが交互に覇権を奪い合っている。そこに棲む中国人は王朝がどうであれ、腹さえ空かなければ気にしない。明日の食料さえあれば政権のことなど他人事だ。だから中国は政権交代ごとに前政権の遺構などを徹底して破壊した。例外的に清朝時代の紫禁城や天安門広場は残っているが、その他の歴史的建造物は殆ど破壊し尽くされている。

 中共政府に対しても、中国民は歴史的に同じスタンスではないだろうか。彼らは共産主義を理解し信奉して中国共産党に従っているのではない。飢えなければいかなる政権が中国を支配しようと気にしないだけだ。
 ただ7千万人(一説には9千万人とある)中国共産党員だけが政権の存亡を気にしているだけだ。その総帥たる習近平氏が米中戦争を仕掛けて何もかも失う道を選択するとは思えない。ただゲリラ的戦術だけは用心すべきだ。

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