国家は国民を閉じ込める「檻」であってはならない。

中国の発表が端からフェイクだとしたら
「中国経済が崩壊するとの話は10年くらい言われ続けているが、一向に崩壊しないではないか」との思いを持っている人は多いだろう。

確かに一見すると、中国経済は盤石にさえ見える。昨年(2020年)は新型コロナウイルスのせいで世界経済が大きく崩れ、G20に入っているような主要国が軒並みマイナス成長に転落する中で、中国だけが唯一プラス成長を遂げたとされる。

さらに2028年にはアメリカを追い抜いてGDPで世界一になるのではないかといった観測まで飛び出している。こうなると「中国経済崩壊論こそが崩壊したのだ」という気になるのは当然だとも言える。

だが、こうした中国側の発表が完全なるフェイクだとしたら、見える景色は全く変わってくるーー。

きちんとしたデータで確認してみれば、公式発表とは全く違った中国経済の実際が浮かび上がってくる。しかも習近平体制になってから、崩壊に向かうスピードは上がっている。この結果、ひどい実態を隠そうとしても、隠しきれない状況に、だんだん移りつつあるのだ。

私の言っていることはにわかには信じがたいだろうが、数字を紐解けば誰にでもすぐに理解できるはずだ。

昨年(2020年)10-12月期の中国のGDPは、前年同期比で6.5%増えたことになっている。つまり2019年の10-12月期のGDPと比較して6.5%増えたことになる。

思い出してもらいたいのだが、2019年の10-12月期にはコロナ騒動は全くなかった。コロナ騒動が全くなかったこの時と比べて、途中でコロナ禍で大きく経済が傷んだはずなのに、1年後はそんな影響などまるでなかったかのように、6.5%成長していると言っているのである。

このことのおかしさは、中国が発表した2019年のGDP成長率が6.1%だったことを思い出せば、なおはっきりする。コロナ禍など何ら起こらなくても6.1%の経済成長にとどまっていたはずなのに、コロナによる大きな打撃を受けた昨年はそれを上回る高い成長を遂げたと言っていることになるからだ。

ちなみに、中国は四半期ごとのGDP統計を前年同期比で発表する珍しい国だ。少なくとも主要国では前期比で発表するのが通例で、例えば2020年の10-12月期のGDP成長率であれば、その一つ前の期である2020年の7-9月期と比較するのが一般的である。そこで中国の統計を前期比に転換して諸外国と比較しやすい状態にすると、そのおかしさはさらにはっきりしてくる。

中国が発表した昨年(2020年)の四半期ごとのGDP成長率は、前年同期比で1-3月期がマイナス6.8%、4-6月期がプラス3.2%、7-9月期がプラス4.9%、10-12月期がプラス6.5%である。この数字を前期比に変えると、年率換算で1-3月期がマイナス37%、4-6月期がプラス60%、7-9月期がプラス13%、10-12月期がプラス12%である。

1-3月期のマイナス37%は随分大きなマイナスに見えるかもしれないが、イギリスの4-6月期のマイナス60%と比べると遥かに軽いことになる。

確かにコロナ禍はイギリスに大きな打撃を与えた。コロナ禍前のイギリスの完全失業率は4.0%だったが、コロナ禍発生後に最大で5.1%にまで上昇した。失業率が1.1%も上昇する打撃が生まれ、それが一時的にはマイナス60%という大きなブレーキにつながった。
 
プラス60%にも及ぶ「超V字回復」のウソ
では中国の失業率はどうだっただろうか。
中国政府が発表する失業率統計は全くあてにならないことで有名であり、これを使って考えるわけにはいかない。そこで他の機関が出している推計値で考えてみる。

アジア開発銀行は6290万人から9520万人が新たに失業したのではないかと推計した。ざっくり言えば、7900万人前後で少し幅を持たせて考えたということになる。

また「スイス銀行」の俗称で知られるUBSは7000万人から8000万人が新たに失業したのではないかと推計した。

中国の有名なエコノミストである李迅雷氏も、新たな失業者は7000万人を超えるとし、これによって失業率が20.5%まで高まったのではないかと述べている。

これらから見て、少なくとも10%程度は失業率が上昇したと考えてよいだろう。

コロナ禍で失業したりビジネスが立ち行かなくなって困窮した人たちもいるだろうということで、日本では10万円の定額給付金が支給された。イギリスでも休業せざるをえなくなった事業者や従業員に対して政府が最大8割の手当を支給した。だが、中国ではこうした痛み止めの支給は行われていない。

失業率が10%も増え、経済的に苦しくなった国民に対する痛み止めの支給もなかったにもかかわらず、経済へのダメージはイギリスよりもはるかに軽く済んだということが、あり得るのだろうか。どう考えてもそれは難しいだろう。

中国は1-3月期にマイナス37%の大きな落ち込みがあった後の4-6月期にプラス60%にも及ぶ超V字回復を果たしたことになっている。ではこの超V字回復を果たした後の6月末の失業率はどの程度だったのだろう。

北京大学国家発展研究院の姚洋所長の推計によれば、6月末での完全失業率は15%で、時々アルバイト的なことをやることはあってもほぼ失業しているのと同然の「半失業」の人たちを加えると、失業率は20%になるとした。

コロナ禍で1-3月に大きく落ち込んだ経済が4-6月期に超V字回復を果たしたはずなのに、失業率の改善は大して見られないのだ。こうなるとこの超V字回復自体が怪しいと言わざるをえない。
 
中国経済の正しい見方
では中国の経済統計がおかしいのは2020年だけなのだろうか。実はそうではない。

中国のスマホの国内出荷台数は2016年に5.6億台だったのが、2017年に4.9億台、2018年に4.1億台、2019年に3.9億台、2020年に3.1億台と、年々縮小し続けている。スマホは2年もしたらバッテリーのもちが悪くなって買い替えたくなるものだが、買い替え需要があまり発生していないのだ。

ここからバッテリーのもちが悪くなっても買い換えないで頑張っているユーザーが多いということが推察され、それは庶民の懐具合が我々の想像を遥かに超えるほど悪化していることを意味する。毎年6%以上の経済成長を続けている国の姿ではないだろう。

では、庶民はダメでも富裕層の消費が伸びているということはあるのだろうか。

そこで中国の乗用車の販売台数の推移を見ると、2017年に2376万台だったのが、2018年に2235万台、2019年に2070万台、2020年に1929万台と、やはり年々落ちている。これを見ると富裕層の消費が伸びていることも考えられないのだ。

つまり、毎年6%以上の経済成長を続けてきたという話自体がフェイクだと考えないと説明がつかない。

習近平は改革・開放と民営化によって伸びてきた中国経済を、社会主義的統制を強化することでどんどんと潰している。例えばアリババなどのIT企業がさらに伸びれば、ITによる世界支配に貢献できるであろうに、習近平は愚かにもこうしたIT企業を解体・弱体化する方向に舵を切っている。

習近平独裁体制が強化される中で、習近平のやることに誰も異論を挟むことができなくなり、経済の崩壊速度が高まっているのだ。そしてこの現実を覆い隠すために、経済統計のフェイクのレベルが以前よりも強化されていると見るのが、正しい中国経済の見方になる。

中国経済は「世界一の人口を抱えて世界一のマーケットになる潜在力がある」「中国経済はまだまだこれからだ」といった幻想によって支えられているにすぎない。拙著『それでも習近平が中国経済を崩壊させる』をお読みいただければ、中国経済がいかに多くの困難に直面しているか、より明瞭に理解できるだろう。

日本企業は等身大の中国経済を知ることによって、今のうちに思い切った撤退を進めるべきである。早ければ早いほど、傷口は小さくすむ>(以上「現代ビジネス」より引用)





 引用した記事は現代ビジネスに掲載された朝香 豊氏(経済評論家)の論評だ。浅香氏は中国経済は崩壊する、と早くから予測し、いつまで経っても崩壊しないから予測が外れたと批判されてきた。
 私も数年前から中国経済は崩壊する、と予測したブログを書き続けて来た者として朝香氏に同情を禁じ得ない。なぜ、中国経済は断末魔の叫び声を上げつつも、崩壊しなかったのだろうか。

 それは一言でいえば「統制経済」だからだ。2016年6月に起きた上海株式市場の大暴落はバブル崩壊の端緒となるはずだった。自由主義諸国なら株式市場の大暴落は金融海に波及し、そこを起点としてすべての経済バブル崩壊が起きる、というプロセスを経るのが常識だ。
 しかし中共政府の中国は常識が通用しなかった。中共政府は即座に株式市場を統制した。株の売りを禁じ、買いのみを許した。その後に一部の株に関して売りを是認したが、頑なに不動産関連の株の売買を規制した。それは自由主義諸国ではあり得ないことだ。

 中国経済の成長がおかしくなると、成長していると見せかけることに注力した。いうまでもなくGDPは国民消費と貿易収支と政府支出によって成り立つ。その三本柱のうち、中国の高度経済成長を支えたのは貿易収支だった。実にGDPの過半数を占めた。
 しかし貿易収支がおかしくなると、中共政府は地方政府を督励して「不動産投資」でGDPを叩き出すようになった。それにより人影のないマンションやショッピングモールの「鬼城」とよばれるゴースト・タウンが中国全土に出現した。売れようが売れまいが不動産投資も「政府支出」だから、ゴースト・タウンもGDPの形成に寄与する。

 さらに中共政府は前年の経済統計数字を新年に入って二週間もすると出してくる。日本なら二か月はかかるが、中共政府の統計数字は手品のようだ。だが、それは比喩ではなく、手品だったようだ。
 朝香氏が引用記事内で中共政府が発表した対前期比の統計数字を対前年同期比に換算して、中共政府が発表している統計数字の矛盾を明らかにした。中共政府が発表する統計数字は嘘っ八だ。「習近平独裁体制が強化される中で、習近平のやることに誰も異論を挟むことができなくなり、経済の崩壊速度が高まっているのだ。そしてこの現実を覆い隠すために、経済統計のフェイクのレベルが以前よりも強化されていると見るのが、正しい中国経済の見方になる」と朝香氏は中国賛歌に忙しい日本の多くの経済学者に警告を発している。

 そして経済界に対しても「中国経済は「世界一の人口を抱えて世界一のマーケットになる潜在力がある」「中国経済はまだまだこれからだ」といった幻想によって支えられているにすぎない」と集団催眠から目覚めるように促している。
 昨年12月に李克強首相が「中国民の6億人は月収千元(約1万4千円)以下の暮らしをしている」と中国では未だに貧困が克服されてないことを暴露した。中国は巨大な人口を抱えているのは間違いないが、驚異的な経済発展から国民は取り残されている。平均所得の高い都市部上海ですら2018年の平均年収は約10万元(約160万円)と言われている。 年収160万円の人たちに日本の商売人たちは何を売り込もうというのだろうか。いい加減、中国に抱く妄想から目覚めたらどうか。

 崩壊する中国経済を国民の目から隠すには戦争しかない、と習近平氏は判断しているのだろうか。最近の習近平氏は繰り返し「戦争の準備をせよ」と人民解放軍に檄を飛ばしているが、本気で戦争を始める気でいるのだろうか。
 確かに台湾の対岸地区に兵器や軍を集結させているようだが、戦争を始めるには兵站を整えなければならない。もちろん糧秣だけでなく、石油備蓄も戦争遂行を可能にするだけのものを用意しなければならない。世界随一の石油輸入国・中国で、一月半分もなかった石油備蓄を半年分に上乗せする、として昨年夏に大量購入を決めたようだが、「中国の国家エネルギー局は昨年9月、原油備蓄量は戦略的備蓄を含めて約80日分であると明らかにした。中国国有の中国石油天然ガス集団(CNPC)は12月、中国政府は20年末までに戦略的備蓄を備蓄可能な最大値である5億300万バレルまで拡大する意向であると説明していた」という記事の続報はない。中国の一日当たり石油消費量は民生用も含めて1,352万5,000バレルだから備蓄可能限度まで備蓄したとしても37.19日分でしかない。戦時になれば備蓄石油の全てを軍用に回すとしても、80日分の備蓄があるとしている政府発表とは大きく乖離している。

 かくも出鱈目な統計数字しか持たない国がマトモな戦争など出来はしない。その前に中国経済は崩壊する。既に不動産バブルは弾けて価格統制しているにも拘らず、上海などの都市部でも30%以上も下落しているという。
 地方政府は軒並みデフォルト状態で、公務員の遅配は慢性化しているという。地方銀行も破綻し、民間投資集団の責任者が失踪したり自殺しているともいわれている。「从公寓飞」(マンションから飛ぶ)という言葉が常套句のように囁かれているそうだ。

 国家は国民を閉じ込める「檻」であってはならない。国家は国民を護る「家」でなければならない。それ以前に、国家指導者は国民によって選ばれてこそ、国民は国家指導者の指示に従う。なぜなら国民の意に添わなければ指導者を代えれば良いだけだからだ。それが出来ない国家では、国民は「檻」に閉じ込められた家畜となって命令に従うしかないのだろうか。

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