日本政府は国家と国民のために経済成長を目指せ。

<<全人代で公表された5カ年計画からは、超大国として世界に君臨する野心が明らか。世界一の経済大国という「隣国」と日本はどう向き合うか>

 中国で第13 期全国人民代表大会(全人代)が開催された。採択された第14次5カ年計画では改革開放路線以来となる大きな政策転換が盛り込まれたほか、長期目標として1人当たりのGDPを中等先進国並みに引き上げるという目標も掲げられた。中国は超大国に向けて舵を切ったということであり、日本にとっては大きな脅威となるだろう。

 全人代は中国の国会に相当する機関で、年1回、開催される。法律上は中国における最高権力機関と位置付けられているが、中国は革命国家であり、政府は共産党の統制下にある。現実には党の方針を追認する役割を果たしているにすぎないが、それでも全人代での決定は極めて大きな影響力を持つ。

 特に今年は第14次5カ年計画が公表される年であり、諸外国はその内容に注目してきた。5カ年計画には新しい概念の「双循環」が盛り込まれたが、これは中国独特の用語で外需と内需を組み合わせるという意味である。

 中国はこれまで世界の工場として各国に工業製品を輸出しており、製造業の設備投資で経済を回してきた。今後は輸出という外需に加えて内需、つまり国内消費も重視するという意味であり、これは中国がいよいよ内需拡大策に舵を切ったと理解されている。

■現在の中国は日本の80年代

 日本は1980年代、中曽根政権下で取りまとめられた、いわゆる前川リポートをきっかけに内需拡大に舵を切り、その後、社会は急速に豊かになった。このところ各国のシンクタンクの多くが、2030年頃に米中の経済規模が逆転し、中国が世界最大の経済大国になると予想している。

 中国がこのタイミングで本格的に消費主導型経済を目指す方針を示したということは、中国がいよいよ世界の超大国として君臨するつもりであると宣言したことを意味する。

 日本の内需拡大策は、バブルの後始末に失敗したことで事実上、頓挫してしまったが、中国は日本の経緯をよく研究している。今の中国はまさに日本の80年代であり、ある種の不動産バブル状態にあるが、共産党指導部はこれを軟着陸させ、最終的にはアメリカのような巨大な消費主導型国家の構築を目指している。

■中国経済圏の巨大引力

 中国の野心が実現するのかは現時点では分からないが、日本のすぐ隣に基本的な価値観を共有しない超大国が出現しつつあるという現実について私たちは厳しく受け止める必要があるだろう。日本の国内世論は、中国の台頭について見て見ぬフリをし、ただ自国を賛美するという安易な論調であふれ返っている。

 各国の軍事費は基本的にGDPの一定割合で推移しており、中国の経済規模がアメリカを超えるということは、経済のみならず安全保障でも中国の脅威が増大することを意味する。国際特許出願件数がアメリカを抜いて2年連続で世界1位になるなど、イノベーションの分野でも中国は圧倒的な立場を確立しつつある。

 トランプ米政権以降、米中のデカップリング(分離)が進んでおり、近い将来、世界経済は米欧中という3つのブロック経済圏に集約される可能性が高い。既に日本の対中貿易は対米貿易を上回っており、中国と距離が近い日本はブロック経済化によって、いや応なく中国経済圏に引きずり込まれていくだろう。日本は超大国となった中国とどう対峙するのか早急に戦略を固める必要があるが、残された時間は少ない>(以上「NEWS week」より引用)




 引用記事はNEWS weekに掲載された加谷珪一(経済評論家)氏の論評だ。表題に「現在の中国は日本の80年代」とか「中国経済圏の巨大引力」と掲げるなど、加谷氏の経済分析力の「誇大妄想」振りには驚かされる。
 第一80年代の日本経済が現在の中国と比されるのか否かは議論が多過ぎるのではないだろうか。中曽根内閣当時に内需拡大に舵を切ったのは米国から「集中豪雨的輸出」を批判され、プラザ合意(合意とは名ばかりで、実態は「欧米による集中的な日本イジメ」)により為替レートを1ドル235円から20円も切り上げられ、1年後には1ドル150円まで切り上げられた。

 それにより日本の輸出力は大幅に低下し、必然的に内需拡大へと経済の軸足を移さざるを得なくなった。現在の中国は大幅なドル・元レートの切り上げなどはないものの、中国製品の値上げと2020武漢肺炎の世界的な蔓延時に中共政府が中国内で生産していた外国企業の医療物資を禁輸したたため、中国へ企業進出していた諸外国が一斉にサプライチェーンの見直しを行い、対中デカップリングに動いたために、必然的に中共政府が「内需経済」に転換せざるを得ない点で、80年代の日本とは大きく異なる。
 当時の日本は「ジャパン アズ ナンバーワン」と呼ばれる世界第二の経済大国で、当時の世界GDPの17%を日本一国で占めていた。現在の中国が経済大国になったといっても(中国の経済統計数字が正しいとしても)中国のGDPが世界のGDPに占める割合は15%でしかない。つまり80年代当時の日本とは比較にならない。

 そして何よりも国民経済の基盤というべき社会保障の経済インフラをみても中国のそれは、医療保険制度でも年金制度でも失業保険制度でも、とても国民生活を下支えするに足りる社会保障とはいえない代物だ。
 それでは個人消費を中心とする内需拡大など到底できないし、可処分所得の大部分は貧弱な社会保障の穴埋めに費やされるだろう。そして最も注目すべきは昨年12月に李克強氏が講演の中で吐露したように、国民の6億人が月収1,000元(約1万4千円)以下の貧困層なら、とても内需拡大など覚束ない。

 そして上海などの都会労働者の平均給与が「根据统计制度规定并经国家统计局核定,2019年上海市城镇非私营单位就业人员平均工资为149377元」とあることから、年収約210万円ということになる。それが都市部の労働者の平均年収ということだから、内需拡大して個人消費で中国経済を維持することなど到底出来ないことは明白だ。
 ただ中国共産党員の金満家はことに有名だ。日本などで爆買いしていた中国人は主として中国共産党の家族たちだ。そして中国共産党幹部が賄賂などで蓄財した巨万の富は米国やスイスなどの金融機関へ移している。内需拡大に彼らが蓄財した数百億円もの富が中国の内需拡大に使われるとは思えない。

 最後の段落には「中国経済圏の巨大引力」という見出しが躍っているが、果たしてそうだろうか。今年も6%強の経済成長見通しを立ててるようだが、その目論見は根拠のあるものなのだろうか。
 実際には中共政府は金融機関の不良債権がこれ以上膨らむとバブルのハードランディングが起きるのではないかと恐怖して、ついに金融の「総量規制」を始めた。日本が1990年当時にマスメディアが不動産業者を叩きに叩いて実施した悪政「総量規制」を、中共政府もバブル退治策として導入した。
 その理由も日本の1990年当時に似ているが、内容と程度は大きく異なる。つまり労働者平均年収の何倍までが住宅ローンとして「健全」か、という年収倍率を見れば明らかだ。日本では年収の5~7倍までの住宅ローンが限度だとされている。1990年当時のバブル時でも東京の不動産価格は年収の18倍程度だった。
 しかし中国では深圳で35.2倍、上海で25.1倍、北京で23.9倍、広州で16.5倍となっている。いかに世界的な低金利時代とはいえ、常軌を逸した住宅ローン地獄に中国民が陥っていることがお解りだろうか。中共政府は金融機関の不良債権をソフトランディングさせるべく、不動産価格のガイドラインなを設定した。政府による不動産価格の切り下げ命令が出たことになる。その切り下げ率は北京で約35%程度だという。結果として中国不動産業者第三位の恒大産業が倒産し他の不動産業者も破産の嵐に見舞われている。

 「中国経済圏の巨大引力」とは加谷氏の分析結果というよりも、中共政府の見果てぬ夢ではないか。確かに中国の製造業は「世界の工場」というほど活況を呈した。しかし、それも2019年までのことだ。2020武漢肺炎を世界中に蔓延させたシッペ返しが強烈な勢いで中共政府に跳ね返っている。
 経済評論家たちは中共政府が発表した中国の2020経済成長を6.3%だと信じているようだが、それは大きな間違いではないだろうか。上海や重慶や深圳といった有名の都市部ですら、テナントビルに空室が目立ち、商店街のテナントも半分近くのシャッターが閉じたままになっているという。習近平氏が「絶好調」と叫ぶほど、中国経済の実態は「絶好調」とは程遠いようだ。なぜなら日本企業だけでも最盛期には6万社が中国へ進出していたが、今では邦人企業で中国に残っているのは1万数千社でしかない。しかも毎日のように邦人企業が中国を引き払っている。
 それは日本だけのことではない。欧米諸国の企業も相次いで中国から撤退している。あれほど中国にドップリと漬かっていたドイツのフォルクスワーゲンですらワーゲン最大規模の工場だったウィグル地区の製造工場を閉鎖した。世界の工場だった中国は様変わりしている。そして習近平氏は堪らず「内部循環型経済」を打ち出したが、内部で循環できるほど、つまり個人消費がGDPの主役として中国経済を引っ張る状況にあるだろうか。

 まず米国による対中デカップリングによって、現代産業界のコメといわれるチップ産業そのものが空洞化してしまった。中共政府は躍起になって自国でチップを供給すべくチップ製造に乗り出そうと、昨夏以来中共政府が鳴り物入りで巨額補助金を投入し、チップ製造企業を立ち上げようとした。が、最大規模の約2兆円を投入したチップ製造企業ですら補助金を掠め取る「詐欺」だったことは有名な話だ。いつまでたってもチップが出荷されないから工場へ行ってみるとチップ製造マシーンはおろか、広大な工場には何もなかったという。
 現在に到るも中国では最先端の回路幅5ナノのチップ製造どころか7ナノ・チップすら製造できないため、中共政府自慢の最新型ミサイルも在庫のチップがなくなれば製造不能になるという。
 加谷氏は引用論評の最終文で「日本は超大国となった中国とどう対峙するのか早急に戦略を固める必要があるが、残された時間は少ない」と警告されているが、果たしてそうなるか否かは今後の歴史が証明するだろう。だが、そうした心配をするよりも、まずは日本経済を蘇らせて、力強く経済成長させる手立てを考える方が、日本の国家と国民のために必要なのではないだろうか。中国は萎み行く巨大風船でしかない。その影に怯える必要も、その大きさに平伏す必要もない。なぜなら中身は空っぽだからだ。

 かつて池田勇人総理大臣が「所得倍増論」を掲げて経済成長を実施した。現在は国会で連日総務省と菅総理の長男との「癒着疑惑」を追及しているが、いかに官邸や自公政権が腐り切っているかを国民の目の前に晒しても、それで国民所得が向上し、政権交代が出来るわけでもない。
 志ある政治家なら「現代の所得倍増論」を引っ提げて、自公政権の受け皿となる野党連合の結集を図るべきだ。野党連合が掲げる政策と自公政権との対立軸は明白だ。失われた30年を演出したのが中曽根内閣以来の「構造改革」であったことは明らかだ。つまり、「構造改革」とは日本のグローバル化でもある。
 それなら「日本国民ファースト」を掲げるべきではないか。いかに海外進出した法人企業が莫大な利益を上げようと、国民にとって何ら益のないことも明らかになっている。むしろ海外移転した企業労働者の労働賃金並みに、日本国内の労働費引き下げ要因となっている。国民を富ませずして経済成長はあり得ない。
 経済成長を高らかに謳い上げる政権構想こそが日本の明日の希望になる。かつて2009民主党マニフェストはそれに近いことを盛り込んでいた。小沢一郎氏が掲げた「国民の生活が第一」の政治こそが、当時も今も求められている政治だ。目先の事象に目晦まし状態になっている野党政治家諸氏よ、もう一度2009民主党マニフェストに立ち返ろうではないか。

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