当事者能力を欠いた菅会見と問題意識の希薄な記者たち。
<新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言の対象区域を広げる重要な局面を迎えた13日、菅義偉首相は肝心の県名を言い間違え、記者会見ではやりとりがかみ合わない場面も見られた。コロナ対応を担う西村康稔経済再生相や、政府分科会の尾身茂会長がそのフォローに追われた。
まずは13日夕の政府対策本部。NHKの中継が入るなか、首相は「大阪府、京都府、兵庫県、愛知県、岐阜県、静岡県、栃木県の7府県について、特措法に基づく緊急事態宣言の対象といたします」と述べた。県名に「岡」が共通する福岡と静岡を言い間違えたようだった。慌てた記者団に、会議を終えた西村経済再生相は「福岡県です」と言い残して首相官邸を去った。 その後の記者会見。感染者が保健所による行動歴などの調査を拒否した場合の罰則導入や、事例の公表などについて問われると、首相は「どのぐらい協力のいただけないケースがあったのか、実例について申し上げる必要があると思っている」と述べ、罰則導入については語らずじまい。尾身会長が「協力してもらえるような支援の仕組みというのをした方がいいという意見と、最低限の罰則も場合によってはやむを得ないという意見がある」と解説を加えた。 飲食店への営業時間の短縮要請の効果や、休業要請に踏み込む可能性について質問が飛ぶと、首相は「今回、さらに対策をお願いするので、必ず効果が出てくる」としたうえで、「専門的な視点から、先生、よろしいですか」と発言。尾身会長が「最悪のことも想定しなくてはいけない。最悪の場合は休業要請は選択肢としてあり得るし、そうではないベスト系のシナリオもある」と語った。 ■国民皆保険、見直し?医療体制を強化するための法整備をめぐっては、首相は「国民皆保険、そして多くのみなさんがその診察を受けられる今の仕組みを続けていくなかで、コロナがあって、そうしたことも含めてもう一度検証していく必要があると思っている。必要であれば、そこは改正をするというのは当然のことだと思う」と述べた。発言の真意は不明だが、国民皆保険を見直す考えを示したとも受け取れる発言だった>(以上「朝日新聞」より引用)
引用記事によると「首相は「大阪府、京都府、兵庫県、愛知県、岐阜県、静岡県、栃木県の7府県について、特措法に基づく緊急事態宣言の対象といたします」と述べた。県名に「岡」が共通する福岡と静岡を言い間違えたようだった。慌てた記者団に、会議を終えた西村経済再生相は「福岡県です」と言い残して首相官邸を去った」という。
菅氏が「福岡県」を「静岡県」と言い間違えたそうだが、事は「言い間違え」では済まない。菅氏本人が記者会見場へ戻って訂正すべきだ。それが責任者の責任ある発言というもののあり方だ。
そして後段にある皆保険制度の見直しとも取れる発言は由々しき問題だ。皆保険制度を「壊す」タクラミは突然出て来たのではない。安倍自公政権下で「混合医療制度」を導入した時から、皆保険制度を見直す意図は見えている。
菅氏は当時の官房長官だったから、安倍自公政権で混合医療導入を決定した際に、改憲制度の見直しを見据えていたはずだ。記事では「国民皆保険、見直し?」とあやふやな報道をしているが、なぜ記者諸氏はそこを突っ込まないのだろうか。国民全般に関わる重大問題ではないか。
記事では「飲食店への営業時間の短縮要請の効果や、休業要請に踏み込む可能性について質問が飛ぶと、首相は「今回、さらに対策をお願いするので、必ず効果が出てくる」としたうえで、「専門的な視点から、先生、よろしいですか」と発言。尾身会長が「最悪のことも想定しなくてはいけない。最悪の場合は休業要請は選択肢としてあり得るし、そうではないベスト系のシナリオもある」と語った」とあるが、そこにも記者諸氏は誰も突っ込まなかったのだろうか。
なぜ責任ある菅氏が肝心な「補償」問題を本人が語らず、分科会長に答弁させるのだろうか。武漢肺炎の感染状態と今後の予測に関しては感染症の専門家たる尾身氏が語るべきだが、予算措置や立法措置の伴う「補償」に関して政治家が責任回避するかのような会見を許すマスメディアの記者たちは無能の誹りを免れない。
問題意識と当事者能力の希薄な総理大臣の記者会見に、やはり問題意識の希薄な記者たちが集って「会見ゴッコ」を繰り広げているとしか思えない。政治家やマスメディア関係者の劣化を目の当たりにしている思いだ。
最後に繰り返すが、専門家は正確な科学的データを政治家に示し、政治家は科学的なデータと科学的な見通しに立った政策を発表すべきだ。当然、責任が伴うのは政治家だ。だから専門家は「ホント」の専門家を招聘しなければならない。分科会に感染症の専門家や医学の専門家以外の経済人や摩訶不思議な言論人を委員として入れた政治家は真摯に武漢肺炎から国民の健康と命を守ろうとしているのか疑問に思わざるを得ない。