本社ビルでクラスター感染が起きたなら、経済どころか首が回らなくなる。
<菅義偉首相は13日午前、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言の発令や国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」事業の見直しに慎重な考えを示した。「専門家も現時点でそのような状況にはないとの認識を示している」と説明した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
首相は国内の感染状況について「新規陽性者数の増加傾向が顕著になってきている」と述べた。飲食を伴う懇親会やマスクを外した会話などを挙げて「いま一度、基本的な感染防止対策に努めてほしい」と国民に協力を呼びかけた。
加藤勝信官房長官は13日の閣議後の記者会見で、新型コロナ感染拡大を受けた移動の自粛要請に関して「一律に要請する必要があるとは考えていない」と話した。「専門家の意見も聞きながら地域の感染状況を注視していく」と強調した。
政府に感染症対策の司令塔となる専門ポストを設置するかどうかに関して「感染症危機管理事案が発生した際、即応できる体制を整備することが重要だ」との見解を示した。「新型コロナの経験も踏まえ、速やかに検討を進めたい」と話した。 田村憲久厚生労働相は記者会見で新型コロナの国内新規感染者が過去最多を更新したことを受け「危機感を持って対応しなければならない」と語った。
「環境的に夏と変わってきている。換気など密を防ぐことをお願いしたい」と要請した。外国人や若年層を念頭にSNS(交流サイト)などによる情報発信に力を入れると強調した>(以上「日経新聞」より引用)
<新潟県は12日、南魚沼署の30歳代男性警察官と、同署関係者3人、魚沼市の10歳代女子学生、新発田市の30歳代男性会社員の計6人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。県内の感染確認者は計222人となった。南魚沼署関連では20人の陽性が判明した。
発表によると、新たに感染が判明した男性警察官は8日午前9時~午後3時、南魚沼市余川のイオン六日町店で開催された、パトカー・白バイなどの展示体験イベントに出席していた。イベントには買い物客ら約300人が参加していたといい、県健康対策課は「心配な人は最寄りの保健所に電話で相談してほしい」と呼びかけている。
また、同課の中山均課長は「(同署内では)マスクをしていなかったり、症状が出てもすぐ受診しなかったりした人がいた」と指摘。同署の状況は「クラスター(感染集団)発生の可能性が高い」との見解を示した。
一方、県警は12日、南魚沼署の交番や駐在所勤務の署員約10人を新たに自宅待機としたと明らかにした。これで署員全員が自宅待機となった。県警本部から南魚沼署への警察官らの応援派遣は、保健所に指示を仰ぎながら当面継続するという。また、県警本部は各署に対し、署員の交代勤務や在宅勤務の検討を進めるよう指示した>(以上「読売新聞」より引用)
引用した二紙の記事を読み比べて頂きたい。最初の日経新聞では菅首相が「GO TO トラベル」を見直すつもりはない、というものと、次の引用記事は南魚沼署で武漢肺炎が蔓延して、全署員が自宅待機になった、というものだ。
日本で何が起きているのか、南魚沼署だけのことではない。全国の企業の事務所や工場でクラスター感染が発生すれば関係者全員が自宅待機となる、ということだ。決して絵空事ではなく、現実として武漢肺炎の猛威は私たちの身の回りに迫っている。
何でも指摘したが「GO TO トラベル」などの「経済を回す」と称する政府の施策は武漢肺炎が終息していない段階で実施すれば、それは「コロナウィルスを回す」ことでしかなく、感染拡大の原動力になる。政府が観光業者や飲食業者の窮状を見かねて実施しているのかも知れないが、そのやり方も大手に片寄った「すべての国民に政治の恩恵が行き渡る」やり方ではない。
コロナウィルス・ワクチンや特効薬が開発されるまで、隠忍自重して「検査と隔離」を拡大して武漢肺炎を閉じ込めるのが最善の策だ。だから「GO TO トラベル」などに予算を使うのではなく、「PCR検査」に予算を出動して国民の不安を取り除くことが先決だった。しかし愚かにも「経済を回す」ことを優先する「分科会」の意見を容れて安倍・菅自公政権は感染拡大策に舵を切った。
そもそも「分科会」は感染症の専門医だけではなく、経済界や評論家たちを入れた「拡大専門家会議」で、その「分科会」で感染症の蔓延といかに対処すべきかを議論するのは丸で漫画だ。感染症対策を議論するのなら感染症専門医を招聘して、国民的な広範囲の感染症対策に特化した施策を集中的に実施すべきだった。つまり「検査と隔離」以外に選択肢はなかったはずだ。
南魚沼署員が全員自宅待機となって、本署から応援を派遣して乗り切ることのようだが、手を付けていた事件捜査や地域の治安が一時的に疎かにならざるを得ない。民間企業の事務所や工場などがそうなったら、それこそ「経済が」回らなくなる。その経済的な影響の大きさは「GO TO トラベル」などで喚起される経済効果とは比べ物にならない。
政府が感染拡大のアクセルを踏んで、感染拡大防止は国民一人一人の自覚に待つ、とはなんという無責任な政府だろうか。これから厳寒期を迎える日本で「換気」を心掛けて事務を執ることは困難だ。なぜ条件の良い時期に「検査と隔離」を徹底して拡大し、安全地域を全国の各拠点から広げて全国的に抑え込む作戦を実施しなかったのだろうか。
安倍・菅自公政権は無能・無策に極まる。新型コロナ・ウィルスの感染拡大にいかに対処すべきかを議論すべき「専門家会議」を拡大して「分科会」に改組した段階で安倍自公政権は本気で武漢肺炎を終息させる気はないと見ていたが、「GO TO トラベル」を打ち出した段階で全国的に感染拡大するのは已む無しと諦めていた。この無能政権では「経済」が本当に回らなくなってしまいかねない。
東京にゴマンとある企業の「本社ビル」でクラスター感染が起きたなら、それも一社だけでなく次々と通勤社員によってクラスター感染が「本社ビル」や「本社事務所」で起きたなら、それこそ各企業は「首が回らなくなる」のではないか。そうしたことがまだ起きてないから非現実的だ、というのなら、後段の読売新聞の記事を肝に銘じて頂きたい。南魚沼署の署員全員自宅待機は他人事ではない。