米国民は世界に対しても責任を負っていることを自覚すべきだ。

 <「バイデン有利」も接戦

 11月3日に行われるアメリカの大統領選挙が目前に迫ってきた。今年は、コロナウイルス感染を恐れて、記録的な数の有権者が、郵送などで既に事前投票を済ませている。つまり、両候補にとって、流れを変えるような時間は、もうほとんど残されていない。今回は、ピューリッツァー賞に輝いたこともある米地方紙で記者として働いていた日本人ジャーナリストが、最新の結果予想と選挙当日の3つの見どころを解説する。(志村朋哉・在米ジャーナリスト)

◇ ◇ ◇

 専門家も注目する統計データサイト「ファイブ・サーティー・エイト」の予想によると、ジョー・バイデン民主党候補が勝利する確率が88%、ドナルド・トランプ大統領が12%となっている。(10月20日時点)

 これは全米や州単位で行われている、あらゆる世論調査の結果を、独自の公式に当てはめて導き出された値だ。(個々の世論調査を深読みするのは、誤差が大きくて危険。)他社の予想も似たような数値となっている。

 つまり、トランプ大統領が再選する確率は、「サイコロで1の目が出る」よりも低い。

 「全てのデータが正しいと仮定すれば、もしくは少なくとも4年前の選挙と同じくらいに正確だとすれば、バイデンが大勝するでしょう」とカリフォルニア大学アーバイン校で政治学と法学を研究するチャールズ・スミス教授は言う。

 しかし、2016年の選挙で、トランプ氏が下馬評を覆してヒラリー・クリントン候補に勝ったため、世論調査に懐疑的な人は多い。

 そのため、多くの世論調査は、トランプ勝利のカギを握ったと言われる、大学を卒業していない白人有権者の声がより反映されるよう変更を加えた。(ちなみに、世論調査に正直に答えない「隠れ」トランプ支持者が大量に存在する証拠はない、とファイブ・サーティー・エイトは分析する。)

 それに、トランプ候補の健闘ぶりは、世論調査の誤差の範囲内だった。ファイブ・サーティー・エイトの直前予想でも、トランプ氏が勝つ確率は約3割と、決して低くはなかった。調査が的外れだったのではない。

勝敗分けるわずかな差

 多くの人が思っている以上に、現代のアメリカ大統領選は接戦だ。いくつかの激戦州での、わずかな差で勝敗が決まる。

 「ここ20年の大統領選挙は、アメリカの歴史で最も激戦」とカリフォルニア大学アーバイン校の政治学者で選挙の専門家であるバーナード・グロフマン特別教授は言う。「ちょっとした変化で、クリントンが大統領になっていたかもしれないということです」

 問題は、接戦が予想されていたのに、リベラル寄りなメディアが「常識外れなトランプが勝つ訳ない」とたかを括っていたことだ。今回は、その反省もあって、報道が慎重になっている。

 バイデン陣営も、世論調査が示す以上に接戦で、「トランプが勝つ可能性はある」ので、気を抜かずに投票するよう有権者に呼びかけている。

 「今回も非常に激戦で、正確な予想は難しい」とグロフマン教授。「確率が低くても勝てないわけではありません。バイデンは、あらゆる場所でクリントンよりも良い世論調査結果を得ていますが、それでもトランプが勝利することはあり得ます」

 前回との大きな違いは、誰に入れるか決めていないと答える有権者が、ほとんどいない点だ。トランプ大統領の4年間の仕事ぶりを見て、有権者の意思は固まっている。

 追う立場のトランプ大統領にとって、厳しい状況なのは確かだ。

「正常」さをウリにするバイデン

 では、なぜバイデン元副大統領が、優位に立っているのか。

 一つには、トランプ大統領が、4年前から支持基盤を拡大できていないことが挙げられる。

 「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ大統領は、移民や中国などを攻撃することで、経済的に苦しむ白人ブルーカラー層の支持を得た。

 そうした人々の多くは、民主党は都市部のエリートに牛耳られ、自分たちの「伝統的」な思想やライフスタイルを見下していると感じている。

 「自分は高卒だけど、ちゃんと毎日仕事をしている。日曜日には教会に行く。ハンティングが好きで銃規制には反対だけど、誰にも迷惑はかけていない。それなのに、なぜ生き方を否定されて、差別者扱いされなければならないんだ」といった不満を筆者は幾度となく耳にしてきた。

 トランプ大統領は、そうした心の声を、歯に衣着せぬ発言で代弁し、熱狂的な支持を集めている。そのおかげで、弾劾されようが、コロナ禍だろうが、約40%の揺るがない支持率を保ってきた。

 しかし、支持基盤にウケる過激な発言や政策は、無党派を遠ざけることにもなった。

 白人至上主義を非難するのをためらったり、不法入国した家族を引き離す政策を押し進めたりしたことで、郊外の高学歴層や女性をうんざりさせた。2018年の中間選挙で、民主党が下院の過半数を獲得したことが、それを物語っている。

 「トランプは、熱心なファンや共和党支持者にだけアピールして勝とうとしている」とスミス教授。「自身の基盤を過大に見積もっている。それだと限界が見えています」

 バイデン氏が、無難な穏健派であることも、安定したリードを保てている理由だ。

 熱狂的なファンがいる訳ではないが、ブルーカラー層の白人男性を含め、幅広い層から好感を持たれている。

 1973年に上院議員になって以来、必要となれば保守派とも協力して法案を通し、中道を貫き通してきた。民主党内の革新派からも適度に距離をとっている。

 副大統領を無難に8年間務めたことも、有権者からすれば安心材料だ。

 「アメリカ国民は、『正常』を求めている」とスミス教授。「日々、ニュースになるようなことをやらかして、自分の子供になぜ彼がそんな行動をとるのかを説明しなくてもすむ、『退屈な』大統領を必要としています。バイデンは、そういう意味で害がありません」

 それでも、決定打は、やはりコロナウイルスだろう。

 世界最多となる22万人以上が亡くなり、好調だった経済も地に落ちた。

 「トランプ大統領は、全米レベルでの対応策をとらなかった」とチャップマン大学で政治学を教えるマイケル・ムーディアン教授は語る。「有権者は大統領がウイルスの脅威を真剣に受け取っていないと感じています」

 トランプの状況は、ジミー・カーター、ジョージ・ブッシュ(父)元大統領が再選に失敗した時と似ている、とムーディアン教授は言う。両者とも不景気に悩まされた。

 「最終的には経済状況、有権者の懐具合にかかっています」とムーディアン教授。

 今回の選挙は、「トランプ vs バイデン」ではなく、トランプへの信任投票と見るべきだろう。

3つの注目点

 選挙当日の開票速報を見る際に、ぜひ注目してほしい点が3つある。

 一つ目に、選挙のカギを握る激戦州である。

 ご存知の方も多いと思うが、アメリカの大統領は、得票数ではなく、各候補が獲得した「選挙人」の数で決まる。

 選挙人とは、有権者の投票に基づいて正式に大統領を選ぶ代理人のような存在だ。各州には、人口に応じて選挙人の数が割り当てられている。ほとんどの州では、有権者から最多票を得た候補が、全ての選挙人を獲得する。過半数270以上の選挙人を獲得した候補が大統領に選ばれる。

 なので、全米で有権者から最も票を集めた候補が勝つとは限らない。一部の州で大差で勝つよりも、僅差で多くの州を得た方が有利になる。2016年の選挙では、総獲得票数ではトランプ氏がクリントン候補を300万票も下回ったが、中西部の激戦州を制し、選挙人の数(304対227)では上回った。

 今回の選挙で、勝敗を分けると予想されるのは、ペンシルベニア州(選挙人20)、フロリダ州(29)、ウィスコンシン州(10)、ミシガン州(16)。米西海岸時間の3日午後9時(日本時間の4日午後2時)くらいには、これらの州の結果次第で、勝者が判明するかもしれない。

 現時点では、バイデン候補が上記の4州でリードしている。最も僅差のフロリダ州でも、バイデン氏が70%の確率で勝つ、とファイブ・サーティー・エイトは予想している。(10月20日時点)

 二つ目の注目点は、連邦議員選挙だ。

 厳格な三権分立を採用するアメリカでは、議会の協力なしに大統領が政策を実現するのは難しい。予算を含め、法案の成立には、上下両院での承認が必要となる。

 現在は、上院は共和党、下院は民主党が過半数を占める。下院は、ほぼ確実に民主党が過半数を維持し、上院は74%の確率で民主党が過半数議席を得るとファイブ・サーティー・エイトは予想している。

 もしバイデン候補が大統領に当選し、両院も民主党が得た場合、急ピッチで改革が進められるだろう。

勝敗はいつ決まる

 最後の注目点は、「いつ勝敗が決まるか」だ。

 今回の選挙は、大量の郵送投票が見込まれるため、集計に時間がかかると言われている。当日までに届かない票もあるため、接戦の場合、結果が出るまで11月中旬くらいまでかかり、泥沼化するかもしれない。

 専門家は、トランプ大統領が選挙で負けても、敗北を認めない可能性を危惧している。本人も、負けるとしたら、不正が行われた場合だけだと述べている。郵送投票で不正がはびこる、と根拠のない主張を繰り返し、選挙への不信感をあおっている。

 バイデン氏が大勝すれば、トランプ大統領が文句を言っても孤立するだけ、とスミス教授は言う。

 「でも、接戦になれば、訴訟の嵐になる。トランプ大統領は、あらゆる僅差の州で訴訟を起こすはず」

 2000年の大統領選挙では、接戦となったフロリダ州の集計結果をめぐって法廷闘争が展開され、選挙から1カ月後に最高裁判所の判決でジョージ・ブッシュ(子)氏の勝利が決まった。

 トランプ大統領が勝った場合、よほどの接戦でなければ、バイデン陣営が敗北を認めないとは考えづらい。しかし、選挙翌日に職場で涙を流す人もいた前回以上に、リベラル派には衝撃が走るだろう。

 アメリカ中が、かたずを飲んで見守る選挙になることだけは間違いない。

◇ ◇ ◇

 志村朋哉 米カリフォルニアを拠点に、英語と日本語の両方で執筆をこなす数少ないジャーナリスト。米新聞社の記者として4000人以上のアメリカ人にインタビューをしてきた経験とスキルをもとに、アメリカの「なぜ?」を伝える>(以上「時事通信」より引用)




 投票まで二週間を切った米国大統領選挙のついて志村朋哉・在米ジャーナリストが時事通信に寄稿している。今回も、だが、米国大統領選で民主党候補に片寄った報道が多い中で、志村朋哉氏の見方はジャーナリストとしての目を持っていると思われるため、ここに引用させてもらった。

 志村氏はトランプ氏とバイデン氏は接戦だという。妥当なところではないか。勝敗を決めるのはスウィング州の帰趨だ、というのは正常な判断だ。しかし、それでも日本と東南アジアの諸国、さらには自由主義諸国のためにはトランプ氏が次の大統領でなければならない。


 何度も書いてきたが、米国民は米国の中だけを見て米国大統領を決め過ぎだ。それは米国大統領の役割を正しく評価したものとはいえない。超大国の大統領には世界平和対しても責任があることを認識すべきだ。

 さもなくば、私達米国の軍事力に影響され続けている世界各国の国民は突出した軍事予算を認め続けている議会と、その議会を構成する上下国会議員を選出した米国民の責任を問わなければならない。


 それでもコロナ禍が全米に広がった責任を追及すべきだ、というのならわざわざ中国を訪れて視察したにも拘らず、コロナ禍が世界中に蔓延するのを放置したWHOの事務局長の責任を追及する方が先だ。それとコロナ禍が国内で蔓延しているのを隠蔽した習近平氏の中共政府の責任は重大だ。

 そしてバイデン氏ならコロナ禍を防げていたか、というと大変疑問だ。彼ならトランプ氏よりも早く対中空路を閉鎖できた、とは決して思えないからだ。中国との取引で儲けているディープ・ステイトの番頭・大統領のバイデン氏なら、対中空路の閉鎖はトランプ氏の措置よりも遅れていたことは確実だ。


 確かにトランプ氏はマスクを着けなかった。コロナウィルスに感染する可能性を少しでも少なくする措置としてマスクは重要なアイテムだ。しかし、トランプ氏にそうした感染症に対する知識が欠如しているのだろう。

 だがそれは彼の責任であると同時に、彼が任命した感染症対策室長の責任でもある。感染症対策を所管する官僚たちがマスメディアに登場して、しっかりと国民にレクチャーする必要があった。そしてハグやキスは「危険」だと親愛の情を示す方法を変えるように提案すべきだった。


 無教養にして卑野な米国大統領の出現には驚いたが、彼はこの四年間米国大統領として上手くやって来た。そして最後の一年間における国務長官ポンペオ氏の働きには刮目すべきものがある。

 ことにニクソン記念館の前で行った彼の演説は自由主義世界の対中観を一変させた。それは中共政府と中国民をデカップリングさせたことだ。中共政府は一度も中国民による選挙の洗礼を受けていない。つまり中共政府は正式に中国民から認められた政権ではないと中国共産党の正体を看破して見せた。このポンペオ氏の功績は大きい。それにより中共政府とズブズブだったメリケル氏まで対中デカップリングに賛同の意を示さざるを得なくなった。


 まさに対中デカップリングは始まったばかりだ。ここで手を緩めて親中派の民主党バイデン氏にホワイトハウスを空け渡すわけにはいかない。中共政府は新・シルクロードと「一帯一路」の海洋と、そして5Gによる情報網とで世界をがんじがらめの中共政府支配下に置こうとしていた。それも完成段階に近づいていた。

 中共独裁政権の世界制覇を許して、自由主義諸国の人権や平等は決して守れない。中共政府の中国を見れば明らかではないか。支配層の一握りの者が富を搾取し、14億の国民の内の13億人は中国共産党の奴隷となって貧弱な社会保障制度下で清貧の暮らしを強いられている。しかも顔認証システムと治安警察と密告制度ですべての自由が奪われている。


 国家が国民を閉じ込める「檻」と化している制度を世界に広げようとしていた中共政府の野心を止めるには米国を中心とした自由主義諸国による対中デカップリング以外にはない。そのことが全く問われない米国大統領選挙こそが、極めて内向きな世界覇権国家として無責任に過ぎると日本国民の私は遺憾に思わざるを得ない。

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