自粛要請が上手く機能していないから自粛命令が出せる緊急事態法の制定が必要だ、というのは議論の飛躍でしかない。

73回目の憲法記念日となった3日、改憲派と護憲派は新型コロナウイルスの感染拡大を受けインターネットを用いた集会を開催した。安倍晋三首相(自民党総裁)は改憲派の集会に寄せたメッセージで「緊急事態条項」創設の重要性などに触れながら、改憲実現に重ねて意欲を示した。ただ、野党は依然、改憲論議に慎重で、首相の総裁任期が切れる来年9月までの憲法改正は容易ではない。
 「憲法制定から70年余りが経過し、時代にそぐわない部分、不足している部分は改正していくべきではないか」
 首相は、ジャーナリストの櫻井よしこ氏らが主催した憲法フォーラムに寄せたビデオメッセージでこう述べた。緊急時に限って政府による強い権限行使を可能とする緊急事態条項の創設や、9条への自衛隊明記にも重ねて意欲を示した。
 櫻井氏も「国家の土台である憲法を一日も早く改正しないと手遅れになる」と強調。集会では「ただちに憲法論議を開始し、速やかに憲法改正の国会発議を実現するよう要望する」との声明文を発表した。
 護憲派も国会前で集会を開き、「全国の市民は連帯し、安倍改憲発議を阻止しよう。権力私物化、改憲暴走の安倍政権を倒し、政治を変えよう」との宣言を採択した。
 不要不急の外出自粛などを強制できない政府の限界が明らかになっている中、緊急事態条項創設をめぐる与野党の足並みはそろっていない。
 自民党の稲田朋美幹事長代行は3日のNHK番組で、緊急時に国民の私権をどこまで制限し、憲法で明記されている国会の定足数や議員の任期をどうすべきかについて議論が必要だと訴えた。公明党の斉藤鉄夫幹事長は私権制限強化は法律で対応可能との認識を示しつつ、緊急時を想定し、議員の任期などは憲法審査会で議論すべきだと強調した。
 一方、立憲民主党の福山哲郎幹事長は「新型コロナに乗じて憲法改正の議論を安易にするのはやめていただきたい」と反発。共産党の小池晃書記局長も「新型コロナ対応がうまくいっていないのは憲法のせいではない。一致結束を呼びかけながら、国民の多数が反対している改憲を持ち出すのは最悪だ」と述べ、安倍政権の姿勢を批判した。
主要野党は憲法審査会の日程などを協議する幹事懇談会の開催にも反対している。与党内でも、改憲について「このようなときに持ち出すのは適当ではない。もう少し落ち着いてから対応すべきではないか」(自民党の二階俊博幹事長)との声があり、首相の総裁任期の来年9月までに実現する保証はない。
 首相は集会に寄せたメッセージで「憲法改正への挑戦は決してたやすい道ではない」と認めつつ、改憲派の不安を払拭するかのように、こうも強調した。
 「必ずや皆さんとともに成し遂げていく。その決意に揺らぎは全くありません」(内藤慎二)>(以上「産経新聞」より引用)



 自粛「要請」で緊急事態宣言が上手く機能していないから、私権を制限できる「緊急事態法」の制定を可能にする憲法改正が必要だ、とする安倍氏の「憲法改正論」は自らの政治能力のなさを棚に上げたものでしかない。なぜなら自粛「要請」で上手くいかないのは「自粛」に対する「補償」がしっかりと裏打ちされてないからだ。
 緊急事態法があれば「要請」ではなく「命令」を発して強制できる、というのは妄想でしかない。「命令」には必ず「補償」が制度的に用意されなければならない。

 安倍自公政権は現行憲法を勝手に「解釈改憲」して、自衛隊の海外派遣や集団的自衛権の発動を可能にしている。そうした「解釈改憲」そのものが憲法違反だ。それを指摘し罰せない最高裁判所のあり方を是正するために憲法を改正するのなら賛成だ。
 現行憲法は余りに政府権限を強くし過ぎている。確かに国会議員は民主的な選挙で選出され、政府は国会議員から選ばれた総理大臣が司っている。しかし安倍自公政権の「解釈改憲」という憲法違反の暴走を招いているのも現実だ。

 憲法の条文に込められている精神を忘れて、条文解釈という文章読解の技術に堕した「解釈改憲」が横行するのではいかなる「平和憲法」を制定しても意味をなさない。当時の「平和憲法」とされていたワイマール憲法を民主的な選挙で選ばれた政党・ナチスのヒットラー総統がワイマール憲法を停止して独裁権力を手に入れて戦争へと暴走した歴史を忘れてはならない。
 稲田氏が憲法改正の根拠として「緊急事態法」が必要だからと力説したようだが、彼女が防衛大臣当時に一体何をやったのか。彼女が統括しているはずの防衛省はサモワールからの「日報」を隠蔽したではないか。それも国会答弁で防衛大臣の稲田氏が「日報はない」としていたが、実際には「日報」が存在していた。文民統制、という憲法規定を遵守しない防衛省を統括していた大臣が「緊急事態法」の制定が必要だ、と主張するのは危うさを感じさせるだけだ。この無能な政治家が統括していた防衛省が国民の人権や私権を大幅に制限できる「緊急事態法」を与えて一体何を仕出かそうとしているのか、彼らの魂胆に恐怖する。

 現在の自粛「要請」では国民を「統制」できないから「緊急事態法」が必要だ、とする理論は飛躍し過ぎている。国民を「統制」出来ないのは「補償」が自粛「要請」に裏打ちされてないからだ。
 政府に商店や企業経営を停止して休業させる権限はない。だから休業したなら一般管理費相当の「補償」を行う、という特別措置法を用意して「要請」を行うべきだ。そうすれば休業しても従業員を解雇したり経営維持に必要な基礎的経費を心配しないで休業できる。「補償」がしっかりしていれば「要請」するまでもなく、自ら休業を申し出る業者や企業経営者が出るだろう。
 つまり現在の自粛「要請」が徹底しなかったから「緊急事態法」が必要だ、というのは議論の飛躍でしかない。むしろ現在の自粛「要請」で上手くいっていないのは「補償」なき自粛要請だからだ、という反省が必要なのではないだろうか。

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