マスメディアは報道しない「自由」を満喫している。

安倍晋三首相とトランプ米大統領が日米貿易協定に最終合意した。首相は「両国に利益をもたらすウィンウィンの合意」と強調したが、とてもそう呼べる内容ではない。
     焦点となった米国産牛肉や豚肉への関税は、日本は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)並みの水準にただちに引き下げる。米国がTPPを離脱したにもかかわらずだ。トランプ氏は「米国の農家にとって偉大な勝利だ」と誇った。
     なのに、もう一つの焦点だった日本車への関税について、米国はTPPで約束していた撤廃を見送る。自国産業保護のためだ。継続協議としたが、撤廃は困難とみられている。
     自由貿易の目的は、主要な市場を互いに開放し、経済を活発にすることだ。日本と欧州連合(EU)が今年発効させた協定も日本が農産物、EUが車の関税削減で合意した。
     米国は今回、日本に対して車以外の製品などの関税削減は決めたが、日本の対米輸出の3割を占める車の関税は残す。これでは日本のメリットは限られてしまう。
     さらに首相は先月、協定と別に日本企業が米国産トウモロコシを大量購入する計画を示し、会談したトランプ氏を喜ばせた。首相は害虫対策と説明したが、専門家からはそれほどの被害でないと疑問も出ている。
     日本政府がそこまでして米国の要求を受け入れたのは、トランプ氏が日本車関税撤廃どころか、追加の高関税発動をちらつかせたためだ。
     トランプ氏の最優先課題は大統領選での再選だ。農家や自動車工場は選挙情勢を左右する激戦州に多い。
     今回の交渉は、両首脳が交渉入りで合意した昨年9月からわずか1年のスピード決着だ。日本政府は成果を急ぐトランプ氏に花を持たせ、過大な要求を突きつけられないうちに交渉を終えたかったのだろう。
     追加関税について、日本政府は、両首脳の署名した共同声明に回避する文言が盛り込まれたと説明する。
     しかし文言は、昨年9月の共同声明を踏襲したにとどまる。予測不能なトランプ氏だけに歯止めとは言いがたい。追加関税が発動されるリスクは消えていない。
     政府は協定案を来週召集の臨時国会に提出する。国益にかなう内容なのか、しっかり審議すべきだ>(以上「毎日新聞」より引用)


     上記に引用したのは毎日新聞の社説だ。日米貿易協議に関して「ウィンウィンの合意」ではないと論評する根拠を農業と自動車に関する協議結果だけに置いている。全くその通りだが、TPPの際に問題としたのは「非関税障壁」ではなかったか。
     二国間FTA協議で問題とされたのは「ラチェット条項」であり「ISD条項」(ISD条項とは「Investor State Dispute Settlement」の略で「投資国家間の紛争解決条項」と訳される。主に自由貿易協定(FTA)を締結した国家間において、多国間における政府と企業との賠償を求める紛争の方法を定めた条項)ではなかったか。そうした非関税障壁に関する協議について一切報道されていないのはなぜだろうか。

     あるいは日米貿易交渉で当初は「日米FTA」と表現していたものを、突然非関税障壁競技を含まない物品貿易だけに限定した「日米TAG」だと政府は説明し、日本のマスメディアもTAGだと報道した。そして今回の日米自由貿易協議に関しては、なぜか政府発表でもマスメディア報道でも「日米TAG」という文言すら消えた。
     そして報道される内容は米国から輸入される農産品と日本から輸出する自動車の関税だけだ。果たして日米貿易協議で農産品と自動車に関する関税だけの協議で終わったのだろうか。

     マスメディア報道で子細な協議内容が公表されない限り、上記毎日新聞のように「論評」することは出来ないと考えて、全体評価を控えて来た。しかし毎日新聞は農産品と自動車だけの関税協議のみを掲げて「ウィンウィンの合意ではない」と評している。
     自由貿易協議は米国グローバリズムの巣窟のハゲ鷹たちが最も重視している「儲けの源泉」だ。自由貿易協議はハゲ鷹たちの利権の源泉だし、彼らの最重大関心事はまさに「非関税障壁」の投資関係とISD条項ではないか。ISD条項に関する協議内容が欠落した報道にどれほどの意味があるのだろうか。

     あるいは前回の政府発表通り日米貿易協議は物品だけに限定されたTAGであり、非関税障壁に関しては何も話し合わなかったし、何も取り決めてないのだろうか。しかしトランプ氏が米国を代表する大統領なら、米国利権の核心である「投資」に関して何も取り決めない日米自由貿易協議などあり得ない。
     もしもFTAでもなく、貿易全般にわたる品目(TAG)でもなく農産品と自動車に限定された貿易協議を安倍・トランプ間で取り決めたとしたら、ウォールストリートに巣食うハゲ鷹たちが騒然と喚き立て、激しくトランプ氏を批判しているだろう。そうした論評が米国のマスメディアに出ないことは、米国のハゲ鷹たちにとって。今回の協議内容は満足のいくものだったと見るべきではないか。

     政府は日米貿易協議の国会承認決議を年内に取り付ける、とマスメディアにあったが、その際には協議内容の詳細が公表されるのだろうか。それまでに積み残された自動車関税2.5%も片が付くのだろうか。
     断っておくが、自動車関税の2.5%撤廃のために、日本の農業を破壊する農産品の輸入関税を差し出したとしたら全く不平等な結果だと評すしかない。なぜなら自動車関税は10%に引き上げられたとしても何ら打撃はないはずだ。なぜなら輸出する自動車企業は消費税相当額の還付を受けているではないか。10月から自動車輸出に関する消費税還付は10%になるではないか。それらは下請け関連企業が支払った消費税ではないか。

     米国への自動車の輸出が多少減ったところで日本国民は餓死しない。しかし農産品を米国に握られたら、米国の意のままに日本国民は飢えさせられる。食糧安全保障と自動車産業を天秤にかけるべきではない。
     米国も価格保証を実施して、農家への補助金政策を実施している。米国農家の所得の補助金割合は36%に達している。かつて民主党政権時に掲げたマニフェストの日本の農家への戸別補償制度をブッ潰した自民党と公明党は日本農業そのものを潰そうとしている。世界の先進各国の多くは自国の農業を聖域として戸別所得補償を実施している。日本だけが愚かにも工業と農業を同列にして議論している。安倍氏がトランプ氏と握手した日米貿易協議が「ウィンウィンの合意」なのか、国会承認の議論が始まるまで日本国民は目隠しされている。

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