貧者の戦争。

世界最大の石油輸出国であるサウジアラビアの石油施設が攻撃された事件から21日で1週間となった。同国政府の調査では無人機だけでなく、巡航ミサイルも組み合わせた大がかりな攻撃だったことが判明し、復旧作業が長期化する懸念もささやかれる。イランの関与を疑う米国は20日、サウジの防空力強化を支援するため米兵を増派すると発表した。中東の緊張が一段と高まっている>(以上「日経新聞」より引用)


 前政権のオバマ大統領は中東から米軍を撤退しようとしていた。米軍に代わって現地政府を支援して、米軍が支援する国の軍隊で紛争地域を鎮静化させようとしていた。なぜなら米軍は強大な兵器を使用する空爆などの空中戦は得意だが、地上軍を派遣しての戦いを苦手としているからだ。
 実際にベトナム戦争では圧倒的な火器を総動員して空爆を繰り返し、枯葉作戦なども実施してジャングルを枯野に変貌させたまで地上戦を戦ったが、ついに大敗を期した。同じように近代兵器を総動員して戦っているアフガンでの戦績も捗々しくない。中東のISとの戦いも、米軍が前面に出るのではなく、イラク軍などを支援する形で鎮圧に成功した。

 サウジアラビアへ米軍を増派するとトランプ氏は決定したが、米国民はトランプ氏の決定を支持するだろうか。主として米軍が受け持っていたサウジアラビアの防空体制下でサウジアラビアの重要な石油施設が攻撃されてサウジアラビアの石油産出能力の半分が失われる、という大打撃を受けた。
 用心棒として米軍は役に立たない、という「風評被害」が国際社会に広まると、米国の世界戦略が揺らぐことになる。極東でも米国は朝鮮半島支配に苦慮している。軍事的に台頭して米国の地位を脅かそうとしている中国に対して、米中貿易戦争を仕掛けているが、パッとした目に見える結果が出ていない。

 マスメディアはドローンなどによる攻撃を「貧者の戦争」と称しているが、それは異なる。かつて「貧者の戦争」とは細菌兵器の代名詞だった。安価に「炭疽菌」などを培養して、絶大な威力を持つテロが実施できることから、そう呼ばれた。
 しかし「炭疽菌」の培養には専門的な施設や生物学者や医学者などが必要だ。決して「貧者の兵器」というわけではない。ただ「細菌兵器」製造に掛ける金額が空母や戦闘機開発と比らべれば、ケタが二つも三つも少ないことからそう呼ばれたに過ぎない。

 だが、ドローンによる攻撃は特別な製造するための施設や科学者などといった専門家も必要ない。素人でも製造可能だし、搭載する爆発物も専門的な知識がなくてもネットで検索すれば誰でも造れる。
 つまり戦争やテロが素人でも可能になったということだ。そうすると敵勢力が何処にいるのか攻撃が実施されるまで判らないため、攻撃を未然に防止するのは困難になる。そして従来のレーダーなどによる攻撃機探知も、超低空を飛翔して来る鳥ほども小さなドローンを認識するのは苦手だ。

 戦争のパラダイムが大転換期を迎えているようだ。先の大戦で「戦勝国」となった国々がそのまま世界支配の座に居座り、国連と称する「戦勝国クラブ」を運営して世界支配を恣にして来たが、そうした戦勝国支配体制は、どうやら終焉を迎えたようだ。
 戦勝国クラブの面々は性懲りもなく戦後70有余年も、世界平和を口実とした利権確保・争奪戦争を世界各地で行ってきた。しかしそうした世界支配のための巨大な軍事力はそれほど意味を持たなくなった。玩具のようなドローンによってサウジアラビアの石油施設が破壊されて、国際原油相場に深刻な影響を与えかねない事態を引き起こしている。

 もちろん、テロは許し難いし、公序良俗に反する悪辣な盗賊行為には毅然として反撃すべきだ。世界平和を破壊する者に対して、人類は怯んではならない。しかし「世界平和」を口実にして、戦後支配体制を「戦勝国クラブ」で維持してきた体制は、決して世界平和をもたらさなかった、という反省の上に立った「国連」に代わる国際機関の新設すべきか、国連を「戦勝国支配」からリニューアルしなければならない。世界は新しい段階に否応なく移って行こうとしている。

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。