山本太郎氏はポピュリストではない。「国民の生活が第一」の政治を叫んでいるだけだ。

<日本政治に左派ポピュリズム政党が誕生した。7月21日の参院選は日本においても、欧州で吹き荒れるポピュリズムの風が吹くという結果になった。山本太郎、「れいわ新選組」である。比例での得票率は4・6%に達し、既成野党への不満の受け皿となり、政党要件を満たした。大事な点は彼らの主張は、欧米の左派ポピュリズムそのものということだ。

れいわの衝撃

7月4日の新宿駅西口地下から、「旋風」が起きそうな予感は漂っていた。ニューズウィーク日本版の取材で訪れた私は、予想以上の熱量だったとメモを取っている。山本太郎は参加者の前で声を張り上げる。
 「いまの政治はみなさんへの裏切りだ。20年以上続くデフレ、異常ですよ。物価が下がり続け、消費が失われ、投資が失われ、需要が失われ続け、国が衰退している。デフレを続けてきたのは自民党の経済政策の誤りの連続でしょ」
「生活が苦しいのは、あなたのせいにされていませんか?努力が足りなかったからじゃないか?違いますよ。間違った経済政策のせいですよ。消費税は増税じゃない、腰が引けた野党が言う凍結でもない。減税、ゼロしかないじゃないですか」
「ないところから税金をとるな。金持ちから取れ。誰もが自信を持てない世の中になっている。自分が生きていていいのかと思ってしまうのはどうしてですか?あなたには力がある。諦める前に、チャンスをください」
 そして、彼は何度も「選挙はおもしろくないといけない」と繰り返した。難病患者が国会に行くというストーリー、沖縄の創価学会員が東京で公明党代表に挑戦するというストーリーも「おもしろく」演出することに長けていた。
 全国各地を周り、他の野党候補も積極的に応援しながら、自身への票を掘り起こした。朝日新聞の出口調査によると、応援先の野党支持層から一定数が「れいわ」に流れていることがわかる。
 盛り上がりは7月19日の新橋、7月20日の新宿で最高潮に達したといっていいだろう。ミュージシャンや著名人が応援に駆けつけた。結果的に、与党支持層は切り崩せなかったが、野党の不満はすくい上げた。

上と下の対決

ポイントは最初から最後まで、安倍政権、そして野党の緊縮財政志向を徹底的に批判することに多くの時間を割いたことだろう。デフレを糾弾し、「上」から金を取り、「下」にもっとよこせと訴える。そして、「あなた」に呼びかけ自己責任は無いと言い切る。元俳優、バラエティでも活躍したタレントになって演説のスタイルも巧みだった。
 時に明確な批判対象を設定し、言葉には他の政治家にはない「本音」―と受け取れるような言葉-を盛り込む。先に参照した出口調査によると、40代以下を主要な支持層として取り付けたという。個別の政策はともかく、権威に立ち向かう姿を応援したいという層もいたことは間違いない。
 山本の政策は徹底的な反緊縮と減税である。平たく言えば、デフレ脱却のために、消費税を廃止し、国はもっとお金をかけて財政出動せよというものだ。彼の著作などによると、金融緩和にも肯定的な左派系の経済学者として有名な松尾匡・立命館大教授に学んだことが転機になっている。

欧州の左派ポピュリズム政党

一連の主張やスタイルは数年前から欧州を席巻している左派ポピュリズムのそれである。政治学者の吉田徹・北海道大教授は「欧州で台頭する左右ポピュリズムを分かつもの」(週刊エコノミスト、2017年2月7日号)でこのように分析している。
 「左派ポピュリズムおいては財政主権や再分配、右派ポピュリズムにおいては国民主権や反グローバル化が唱えられる。こうした主張は、08年のリーマン・ショックと続く10年のユーロ危機を経て、既成政党批判と反緊縮財政、金融・財政主権の回復、場合によってはユーロ圏からの離脱という政策・言説でもって、両極ポピュリズムは共通の立場をとることになる。このような政治的主張は、格差や貧困の進展、労働市場からはじかれ、没落の恐怖におびえる高齢者や中間層、高い失業率にあえぐ若年労働者層の支持を集めることになる」
 「左派ポピュリズムと右派ポピュリズムを分け隔てる最大の違いは、個人やマイノリティーの自己決定権を認めた上で『開かれた社会』を認めるか、反対に家父長主義的で権威主義的、伝統的な共同体や家族が個人よりも優先されるような『閉じられた社会』が実現されるべきと考えるかどうかにある」
 要するに左派ポピュリズムには経済的な格差への不満を吸収するだけでなく、価値観を体現する政党という性格がある。「れいわ」が難病患者を優先的に当選させたことは、まさにマイノリティーの自己決定権を認めるという価値観を体現するものと言える。

問われているのは野党

日本において左派ポピュリズム政党が誕生した背景は、欧州のそれと同じものだろう。問題を突きつけられているのは、既存のリベラル系の野党だ。立憲民主党は議席数を伸ばしたとはいえ、政権交代の選択肢とはおよそ言えない。比例で当選したのも労働組合系の候補者が上位を占め、都市部の選挙区を含め注目を集めた目玉候補は軒並み落選した。共産党は支持層の一部が「れいわ」に流れている。これがなぜかを分析しないと、与党支持層、投票に行っていない人たちからの票の掘り起こしにもつながらない。
 山本自身は落選したが、私がニューズウィーク日本版で予想した通り、次の衆院選への出馬を宣言した。一度吹いたポピュリズムの風は当分、止みそうもない>(以上「Yahooニュース」より引用)


 れいわ新撰組の出現に驚いたのか「Yahooニュース」が石戸諭氏という元毎日新聞記者でノンフィクション作家の論評を掲載している。恐らくそれが日本の「マスメディア」が受けた衝撃ではないだろうか。
 党代表の山本太郎氏の発言は時として過激かも知れないが、決してポピュリズム(大衆迎合主義)だとは思わない。むしろ山本氏の言動は財務省とマスメディアによって洗脳された「成長しない日本」のための日本国民を揺り動かして覚醒させようとしているために少々乱暴になっているだけだ。

 国民主義や反・グローバリズムを「ポピュリズム」だと批判しているのはグローバリズム体制のマスメディアだ。そうした意味では石戸氏もグローバリズムの幇間マスメディアの一員に過ぎないことが解る。
 失われた20年という低成長時代が、このままの状態でもう20年続いたなら日本のGDPはメキシコに抜かされるといわれている。国民は極端な貧困社会で生きることになる。成長しない経済社会は悲惨な結果をもたらす。

 ただ急には貧困化が顕在化しないから、何となく微温湯に漬かっている蛙と同じだ。国民は貧困化しているが、一つの時代しか生きていないから少し上の先輩たちの所得を比較できないで「現状是認」しているだけだ。
 現在の40才サラリーマンが貰っている年収と、20年前の40才が貰っていたサラリーマンの年収とを比較すれば良い。そうすると百万円以上も少なくなっていることが分かるだろう。かつて日本のGDPは世界のGDPの17.6%を占めていた。それが4%を切ろうとしている。それが何を意味するのか、お解りだろうか。

 日本は確実に貧困化している。日本の労働者の所得が落ちて、GDPの主力エンジンがかつての勢いを失っているからだ。若者が自動車を買わなくなった、という。それは間違いだ、所得が少ないから買えなくなったのだ。
 そしてグローバル化理論に乗って、日本の経営者たちが競うように制裁拠点を海外へ移した。それにより多くの日本的なモノ造りが国内から失われ、海外(主として「中国」と「韓国」)に技術や生産ノウハウを奪われて日本の工業生産は競争力を失い衰退した。

 一部素材を輸出規制して窮地に陥らせている、とネトウヨ諸君は欣喜雀躍しているが、その韓国のサムソンが日本の日立やNECや東芝が束になっても敵わないほどの売り上げを誇っていることを知らない。それほどの巨大企業に急成長したのは日米半導体戦争で日本が米国の制裁により日本の各企業の半導体製造部門を海外(主として「台湾」と「韓国」)へ移転し、製造技術と製造ラインをすべて奪われたからだ。
 そうした現実をグローバリスト達は決して日本国民に報せようとしない。日本のお家芸だった白物家電も生産拠点を移転した各国にすべて奪われた。それもグローバリズムの「国際分業論」に乗った馬鹿な経営者たちの結果だ。

 れいわ新撰組の山本氏が叫んだ言葉の数々は「国民の生活が第一」の政治を取り戻そう、ということでしかない。それは日本の政治家として極めて真っ当な政治理念だ。それをポピュリズムだと批判するのは既成マスメディアと既成マスメディアに依存する幇間評論家たちの常套句でしかない。
 貧困化を阻止して国民の底上げをするのは生活保護に頼らない国民を増やすことに繋がる。社会保障の支出を抑えるには支出の蛇口を絞ることではない。社会保障を必要としない国民を増やすことだ。そのためには経済成長こそが最も必要とされる政策だ。そのことを山本氏は繰り返し叫んでいるだけだ。

 石戸氏は経済原論なり、MMT理論を少しは勉強すべきだ。既存マスメディアが財務省のイヌとなって「日本潰し」の米国と一体化して日本を貧困化させようとする策動の輪の中に組み込まれている自身の姿を自省すべきだろう。あるいは日本貧困化の策動までも承知の上で、「国民の生活が第一」の政治を叫ぶ真っ当な政治家を「ポピュリスト」だと批判するのが仕事だと自覚しているのなら、石戸氏は明からに私の敵だ。この微々たるブログで今後とも批判するしかない。なぜならグローバリズムは日本を衰亡させる「亡国」の輩だからだ。

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