日米安保破棄を恐れてはならない。

G20後に板門店を訪れ金正恩・朝鮮労働党委員長と電撃会談したアメリカのドナルド・トランプ大統領。それに先立つ625日、米ブルームバーグ通信がトランプ大統領による「日米同盟破棄発言」を伝えた。
 記事によればトランプ大統領は、日本が攻撃されれば米国が援助することを約束するが、米国が攻撃された場合は日本の自衛隊による支援が義務ではない日米安全保障条約について「あまりにも一方的だと感じて」おり、「日米安保を破棄する可能性」について側近に漏らしたという。
 トランプ大統領は29日、G20サミット閉幕後の記者会見でも日米安全保障条約について「不公平な条約だ」と不満を表明し、安倍晋三・首相に対し「片務性を変える必要がある」と伝えたことを明かしている。
 もし「日米同盟破棄」が現実となれば、日本の外交・防衛は抜本的な見直しを余儀なくされる。
 1960年に締結された日米安保条約では、米国は日本の防衛義務を負う。その代わり、日本は在日米軍基地や空域を提供し、さらに年間約2000億円という巨額の米軍駐留経費を負担している。
 在日米軍が撤退するとなれば、米軍駐留経費の負担はなくなるものの、日本は隣国の脅威に一気に晒されることになる。産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が言う。
「中国はこのところ沖縄・尖閣諸島周辺の日本領海への公船の侵入を活発化させている。もし東アジアにおけるアメリカの最前線部隊である在日米軍がいなくなれば、中国人民解放軍は即座に尖閣諸島強奪作戦を開始する可能性がある。場合によっては沖縄まで標的になるかもしれない。
 それに乗じて北朝鮮やロシアも一気に動き出す。中国を敵に回せば国連の安全保障理事会は機能しない。自衛隊の戦力だけで侵略行為をしのぎきるのは不可能です。アメリカを頼ろうにも、同盟破棄してしまえば積極的な介入は期待できません。2014年にロシアがクリミアに侵攻した時のように、中国に対して軍事力は投入せず、抗議や経済制裁をするのみではないか」
 そのような事態に備えるためには、現在53000億円に膨れ上がっている防衛予算を、さらに上積みしなければならない状況も考えられる。元駐韓大使で外交評論家の武藤正敏氏は、韓国の動きも注視すべきと指摘する。
「トランプ発言はブラフだと見ておくべきだが、片務性を正したいという意思があるのは間違いない。仮に日米同盟が破棄されるならば、より重要度が低い米韓同盟も破棄され、在韓米軍も撤退する可能性が高い。すると、韓国は中国と北朝鮮の影響下に入ることが、自国の安全保障につながると考える。
 米軍撤退によって野心を再燃させた北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長が核・ミサイル開発に邁進しても韓国の文在寅・大統領では対応しきれず、日本は核の脅威に晒されることになる。
 一方で韓国は慰安婦問題や徴用工訴訟などでの反日姿勢をさらに強め、これまで以上の謝罪や賠償を日本に突き付けるでしょう。G20での日韓首脳会談が見送られるなど戦後最悪とされる日韓関係のもとでは、そうしたリスクもゼロではありません」
 これまでの経緯を考えれば、トランプ大統領と金正恩委員長の「友好的演出」は一時的なものにすぎない可能性は十分にある。再び北朝鮮が強硬路線に走り、韓国も反日姿勢を強めれば、まさに四面楚歌状態──その中で求められるのは高度な外交手腕だが、60年の長きにわたって日米同盟に依存するばかりだった日本の政治家や外交官に、各国と立ち回る能力があるかは疑わしいのが現実だ。
 トランプ大統領の「日米同盟破棄」にどれだけ現実味があるかは今のところ全くわからない。だがトランプ発言は、日本外交が「主体的な安全保障体制とは何か」を真剣に考える契機となったのは間違いない>(以上「週刊ポスト」より引用)

 日米安保条約破棄になれば中国が直ちに尖閣諸島を占領する、とは余りに国際関係を知らない者の妄想だ。たとえばフィリピンから米軍が撤退したから中国が南シナ海の岩礁に軍事基地を建設したというが、日本から米軍がすべて撤退したからといって中国が直ちに日本と戦闘状態に陥ることはない。
 なぜなら中国が日本との外交関係をすべてご破算にして尖閣を占領する「国益」と、日本との外交関係や経済協力をすべて失う「国損」とを勘定に掛ければ簡単に解ることだ。しかも日本との関係が悪化して、それがほかの東南アジアの国との関係悪化に繋がらないと思う方がどうかしている。

 中国が日本の尖閣や沖縄に侵攻しようとするなら、東南アジアで中国は孤立する覚悟を固めなければならない。それのみならず、国際社会ですべての国と外交関係がおかしくなることも想定しなければならない。
 力で国境線を変更しようとしたり、相手国を武力で制圧しようとしたりするのを容認するのは前世紀までだ。ロシアがウクライナの東部地域を軍事侵攻して切り取ったが、それに対してヒトラーのハンガリア侵攻を容認した当時の国際情勢と、現在のプーチン氏に対する国際情勢は大きく異なる。

 チェンバレンの誤りを現代世界は繰り返さない。そして韓国が日本に対して強硬姿勢に転じる、というのも誤りだ。安保条約を破棄して米軍が日本から撤退する、ということは、とうぜん韓国からも撤退することを意味する。
 なぜなら韓国の米軍は日本の基地に駐留する米軍が存在するのを前提にしているからだ。日本は韓国駐留米軍にとって兵站の後方支援基地であると同時に、軍属などの緊急避難場所でもある。その日本との安保条約がなくなるのなら、韓国に駐留する米軍は危険度が高まり、韓国内から撤退せざるを得ない。

 そうするとどうなるか。韓国は自前で単独で北朝鮮の軍事力との対決を強いられる。その恐怖に韓国は耐えられないだろう。なぜなら先の朝鮮戦争で単独の韓国軍は北朝鮮軍に一月と経たずして半島先端の釜山にまで追い詰められた経験がある。
 韓国軍は弱い。歴史が証明している。そのことを韓国民は知っている。だから必死で日本との融和を求め、日本の支援を求めざるを得ない。ことに財産を持つ大金持ちほど日本へ逃げたいと思っている。

 現在の朝鮮半島南北統一は妄想に過ぎない。なぜなら具体的な「統一実務者会議」が始まってすらないからだ。いずれの政治体制で統一するのか、いずれの国の法規で統一するのか。それとも中国がやったように「一国二制度」で統一するのか。この場合は統一とはいわないが。
 ともあれ、日米安保条約破棄となったら中国が尖閣に侵攻し、韓国が賠償問題で強気に出る、というのは机上の空論だ。それもタチの悪い妄想に過ぎない。日本はそれほど小さくないし、それほど弱くない。

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