米国が「不公平な日米安保をやめたい」と言われれば。日本政府は即座に「それでは解消しましょう」と応じるべきだ。

「トランプ大統領は、現在の日米防衛条約は米国側にとって不公正だと考えている。もし日本が攻撃されれば、米国は日本を支援するが、米国が攻撃されても日本が軍事的に米国を支援する義務はないからだという」
「トランプ大統領は最近この日米同盟への不満を、きわめて近い側近たちに私的に口にした。それらの側近のうち少なくとも3人がその事実を(ジェイコブ記者に)明かした。日米安保条約は60年以上前に調印され、日米同盟の基礎となってきた」
「しかしトランプ大統領は日米安保条約から離脱するような措置は実際には何も取ってはいない。米国政府高官たちは離脱というような事態が起きることはまず考えられないと述べている」
 以上が同報道の主要部分である。
一貫している「片務性への非難」
 ここで述べられている2つの大きな要素は、「トランプ大統領の日米同盟への不満」と「米国の日米安保条約からの離脱」である。このうち第1の、トランプ大統領の日米同盟の「不公正」への不満に関する限り、この報道はまったく正しいといえる。なぜならトランプ氏自身がその不満を何度も公の場で述べてきたからだ。
最初はトランプ氏が大統領選への立候補を宣言して2カ月後の20158月だった。アラバマ州モービル市での3万人を集めた決起集会で、赤い野球帽をかぶって壇上に立ったトランプ氏は熱を込めた演説のなかで次のように述べた。
「(いまの日米同盟の下では)アメリカはもし日本が攻撃された場合、日本を防衛することを義務づけられている。しかし日米安保条約の規定では、日本はアメリカを防衛支援する必要はない。こんな取り決めを良いと思うか」
 会場の大観衆からはもちろん「ノー」という声がどっとわき起こった。
 トランプ氏は、日本が憲法9条の規定から集団的自衛権の行使を自ら禁止し、米国本土が攻撃された場合はもちろんのこと、米国民や米軍がたとえ日本のすぐ近くで攻撃された場合でもなんの支援もしない、という日米同盟の実態を非難したわけである。
 それから1年後の20168月、アイオワ州のデモイン市での演説でもトランプ氏は同じことを述べた。
「日本との安保条約では、もし日本が攻撃された場合、米軍は全力を挙げて日本を守らねばならない。しかし米国が攻撃されても、日本に何かをする義務はまったくない。(日本国民は)家にいてソニーのテレビでも見ていればよいのだ」
 1年前とまったく同じ内容、そして同じレトリックだった。トランプ氏の一貫した持論なのである。
 大統領に就任してからは、日米同盟の片務性への非難は口にしなくなった。日米同盟堅持の重要性や日本側の反発に配慮してのことだろう。現在うまく機能している同盟をあえて揺さぶるのはリスクが大きすぎるという判断でもあろう。
 だが、本来の不満が解消されたわけではない。それを知った記者が、トランプ大統領がG20出席のため日本に向けて出発する直前という格好のタイミングを狙って報道したということだろう。
日米同盟の堅持は揺るぎない国策だが・・・
 この報道の第2の要素「米国の日米安保条約からの離脱」については、トランプ大統領は実効性のある選択とは考えていないということが、記事のなかでは再三強調されていた。ジェイコブ記者も自分のツイッターで、「実際に米国が日米同盟から離脱したり日米安保条約が破棄されることはない」と書いていた。
 米国の歴代政権にとって日米同盟の堅持は超党派の揺るぎない国策だった。日本に米軍基地を保ち、東アジアや太平洋への関与を保つという政策は米国の国益にかなうという基本認識が保たれてきたのである。トランプ大統領もトランプ政権もその国策の支持を明確にしている。
 だが、それでもトランプ大統領は現在の日米同盟の片務性に不満を抱いているということなのだ。
 もっとも日米同盟の片務性に不満があるのはトランプ大統領だけに限らない。いまの憲法9条による集団的自衛権の禁止が日米同盟強化の障害になるという認識は、現在の米国議会のコンセンサスともなっている。反トランプの急先鋒である民主党リベラルのブラッド・シャーマン下院議員が下院外交委員会で、日本が有事に米国を助けないことを非難して日本に憲法改正を求めたことは本コラムでもすでに報じたとおりである(「『日本も派兵せよ』改憲論者が米国議会の委員長に」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56458)。
際立っている日米同盟の異端ぶり
 米国ではこのブルームバーグ通信の報道に対応する形で、ワシントン・ポストやワシントン・タイムズなど他のメディアも関連記事を掲載した。そのなかで注目されたのは、トランプ大統領がブルームバーグ通信の報道の前日に「中国や日本は、ホルムズ海峡を通る自国のタンカーを自国で守るべきだ」という趣旨の発言をしたことが日米同盟への不満発言の前段になった、という指摘だった。米国向けでもない石油の運搬を米国がなぜ防衛するのか、日本はなぜ自国の経済権益さえも自国で守らないのか、という批判である。この批判が日米同盟の片務性への批判につながった、というのだ。
 ちなみに米国が世界で結ぶ種々の同盟関係のなかで、相手国に米国の防衛支援の義務がまったくないというのは日米同盟だけである。全世界でも異端の同盟が日米同盟なのだ。同盟とは、複数の国家の防衛面での結びつきであり、本来は相互の防衛扶助を意味する。そのことを考えれば、日米同盟の異端ぶりはことさら目立つ。
 ただし日米同盟の歴史をみれば、当の米国自身がその種の片務性を望み、認めてきたことも確かだ。米国は日本の軍事能力を最小限に抑えておくという方針を長年続けてきたのである。だが、その米国の思考も政策も、今や明らかに変わったというわけだ。その変化の最新の象徴がトランプ大統領の日米同盟への不満なのだといえるだろう>(以上「ブルームバーグ」より引用)


 米国大統領選でトランプ氏が「日本との安保条約では、もし日本が攻撃された場合、米軍は全力を挙げて日本を守らねばならない。しかし米国が攻撃されても、日本に何かをする義務はまったくない。(日本国民は)家にいてソニーのテレビでも見ていればよいのだ」と日米安保条約を批判していた。
 同じ批判を繰り返して、来年の大統領選で再選を確実なものにしようとしている。その論旨を進めれば当然「中国や日本は、ホルムズ海峡を通る自国のタンカーを自国で守るべきだ」という発言に繋がる。米国向けでもない石油の運搬を米国がなぜ防衛するのか、日本はなぜ自国の経済権益さえも自国で守らないのか、との批判に発展してしまうのも当然の帰結だろう。

 しかし先の大戦以後、日本が軍事力を持たないことを米国の国是としてきたことも事実だ。そのため日本に航空産業を禁止し、日本の独自OS開発を禁止した。そうした日本が米国をしのぐ経済大国になろうとしていたことから「プラザ合意」を強制して、日本経済の成長力を奪った。
 日本を配下に従えていなければ米国は不安でならない。どれほどの日本国民を米国は大虐殺したか、どれほどの悪辣な陰謀で日本を戦争に引きずり込んだか、そして欧米列強は有色人の棲む地域を蹂躙して非人道的な悪魔の支配を数世紀も続けて来たかが「問題にされ」るなら、現在の白人支配体制の人類世界が激変することになりかねない、との恐怖感を米国の白人たちは抱いている。

 そうした怖れを米国人すべてで共有するためには安保条約の片務性に耐えて日本を防衛する「善意あふれる米国」を米国民に意識させる必要がある。そして間違っても先の大戦が日本による「植民地解放戦争」だったことが白日の下に晒されてはならない。
 だから韓国の慰安婦ファンタジーや中国の南京大虐殺ファンタジーに飛びついて日本を貶める。「日本だって虐殺や婦女暴行などの悪行三昧を働いているではないか」というチクリマンの役割を韓国や中国に期待している。

 しかしそうした大ウソもバレ始めた。そして何よりも、習近平氏の中共政府・中国が米国の背後に迫ってきた。もしかすると追い抜かれるかも知れない、という恐怖は」世界一番」であり続けなければならない米国にとって、他国の後塵を拝する、というのは絶望以外の何物でもない。
 習近平氏の中国と対抗するには日本の力が必要になってきた。日米安保の片務性で日本の対米批判を封じて来た戦略を変化させる必要が生じてきた。しかし軍事的に対等な関係になった場合、歴史上閉じて来た日本の対米批判のパンドラの箱が開かないか心配でならない。日本国民をGHQが徹底して自虐史観で洗脳して来た「集団麻酔」もそろそろ切れかかっている。実際に私のような「覚醒した日本国民」のブログも多数登場している。

 トランプ氏が発言しているように、ホルムズ海峡に中国や日本の軍事艦船が自国タンカー防衛に出たなら、そしてタンカー防衛と称して中国海軍と海上自衛隊が「共同戦線」を張ったなら、それでも米国は冷静でいられるだろうか。
 さらにはホルムズ海峡の航行の安全確保のために、ホルムズ海峡周辺国の「安定」のために中国軍や日本自衛隊が進駐したとしても、米国は冷静でいられるだろうか。そうすれば米国の世界的な軍事プレゼンスは瓦解する、という現実と冷静に向き合えるだろうか。

 少し考えれば米国民にだって解るだろう。ホルムズ海峡の航行の自由を米軍が守っているのは米国のためだということが。そうした簡単な戦後世界を支配してきた米国のレトリックさえ失念して「不公平だ」と叫ぶほど、米国大統領と米国民は劣化した。
 日本政府はトランプ氏が「日米安保条約は不公平だ」と叫べば、ただちに「それでは解消しよう」と応ずべきだ。そうすれば米国は自らのレトリックに気付くだろう。そして赤面するに違いない。

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