1~3月期のGDPの内訳は不況がやって来る足音そのものだ。
<20日に公表された今年1~3月期実質国内総生産(GDP)速報値は年率換算で2・1%増、2018年度で0・6%増だった。
一見いい数値のようだが中身は悪い。いずれも年率で消費が0・3%減、設備投資が1・2%減、輸出が9・4%減、輸入が17・2%減だった。一方で公共投資が6・2%増、住宅投資が4・5%増となった。
GDPを計算する上で、輸入の「減少」は成長要因になるので、消費、設備投資、輸出の減少を、輸入の減少と公共投資、住宅投資の増加で補った形だ。
輸入は、消費とともに、所得(GDP)に理論上連動する。目先の計算では、輸入減によりGDPがかさ上げされたが、これは一時的な話で、傾向としては民需による所得が低下傾向にあるとみたほうがいい。その中で、年度末の公共投資増加により、全体のGDPをかさ上げし、プラスに持っていった数字だと読み取ることもできる。
茂木敏充経済財政相は、「内需の増加傾向は崩れていない」と述べ、10月の消費税率引き上げは予定通り実施すると明言した。たしかに、公共部門を含む「内需」ではプラスだが、前述したように、「民需」は惨憺たる状況だ。
「外需」は政府も認めるように悪い。それこそ、安倍晋三首相がこれまで言及してきた「リーマン・ショック級」なのだろう。
今回のGDP速報結果はプラス成長となったが、安倍政権が消費増税を見送る際には、ある意味で好都合でもある。
選挙対策として増税見送りは好材料に見えるが、野党からは「アベノミクス失敗」という攻撃材料にもなる。
しかし、「リーマン・ショック級」の事態により、外需の先行きが不安という理由であるならば、内需に責任を持つアベノミクスの失敗ではなく、不可抗力の世界経済変動によるものだとなる。経済的な説明はともかく、これで少なくとも政治的には野党の攻撃を避けられる。
そして、世界経済が悪くなるとき、日本だけが進んで増税することもない、という一般常識にもかなっている。
逆に言うと、今回のGDP速報を受けて、これで景気は大丈夫だとして、10月の消費増税に突っ込んだら、世界の笑いものになる。特に、世界経済を話し合う20カ国・地域(G20)首脳会議を前にして、日本だけ増税しますと言えば、6月30日以降に実施される参院選(または衆参ダブル選)において、野党から猛烈な攻撃を受け、もたないだろう。
もし、10月に消費増税したら、年率換算で約6兆円の税収増になるが、その分、可処分所得が失われる。消費性向を6割とすれば、単純な乗数理論により9兆円程度、GDPの2%弱の減少要因となる。
もちろん経済対策が施されているので、直ちにGDP減少はあり得ないが、対策が切れると、ショックが来るとみたほうがいい。
具体的には20年7月の東京五輪までの影響は出にくいが、それ以降、ボディーブローのように悪影響が出てくるだろう >(以上「ZAK ZAK」より引用)
産経新聞系列のZAK ZAKが高橋洋一氏の論評を掲載している。元内閣参事官で安倍友の一人と目される高橋氏だが、彼は経済学者として珍しく常識的だ。
経済学者の多くが安倍友となりアベノミクスがいかに経済学から遊離したアホノミクスであろうとも批判しない人たちばかり目についている。日本のマスメディアもその線に沿ってアベノミクスを支持しこそすれアホノミクスだと批判して来なかった。
しかし経済の実態は決して「イザナギ景気」超えの好調とは言い難い状況だ。その根本的な要因は総需要不足にある。総需要不足の最大原因は労働者所得の低さにある。
なぜ日本の労働者所得が低いのか。それはグローバル化による低賃金国とのガチの競争に巻き込まれたからだ。生産投資による生産性の向上により低労働賃金国と競争しなければならなかったが、企業経営者の多くがグローバル化による国際分業論に飛びついた。
失われた30年を創出したのはバブルの強制終了を煽り立てた日本のマスメディアと、無能な企業経営者たちだ。もちろん「不動産取引監視地域」の指定や「金融総量規制」を法制化した政治家諸氏の無能もその要因の一つだ。
日本のバブルを強制終了させて、日本と日本国民に何が残っただろうか。そしてグローバル化に乗って中国などへ生産工場を海外移転させて、結果として日本と日本国民に何が残っただろうか。デフレ下に苦しんでいるのは生産拠点の海外移転により、事実上海外から労働者の低賃金を輸入したからに他ならない。それにより企業収益は短期間で最大化したが、日本国内の労働者への分配は殆ど行われなかった。
20日に公表された今年1~3月期実質国内総生産(GDP)速報値は年率換算で2・1%増、2018年度で0・6%増だった、というテレビ・ニュースが駆け巡ったが、その実態を冷静に分析する「解説者」は殆どテレビに登場しなかったようだ。
高橋氏も指摘しているように、1~3月期は一見いい数値のようだが中身は悪い。いずれも年率で消費が0・3%減、設備投資が1・2%減、輸出が9・4%減、輸入が17・2%減だった。一方で公共投資が6・2%増、住宅投資が4・5%増だった。つまり輸入減が突出していることに着目すべきだ。それは不況が近づいている足音そのものだからだ。
今年10月に消費増税など決してすべきではない。むしろ消費減税を行って、本格的な不況へと落ち込む前に日本経済を浮揚させるべきだ。
日本にとって必要なのは最低賃金の引き上げと、投資の活性化策だ。゛国民の生活が第一」の政治を強力に実施すべきであって、財政規律論などといった死んだ過去の静態経済学などを持ち出す場合ではない。