日本は米国の臣下だけでは満足せず、中国の臣下にもなろうとしているのか。
<二階幹事長が安倍首相の特使として訪中し、習近平国家主席に安倍首相の親書を渡した。各国首脳と異なる低姿勢ぶりが目立った。二階氏にターゲットを絞って日本の内閣を懐柔した習近平政権の思惑は成功している。
4月24日、中国の中央テレビ局CCTV、人民日報、新華網および中国人民政府網は一斉に「習近平会見日本首相特使二階俊博」(習近平、日本首相特使二階俊博と会見)と報じた。
その中でハッとするほど目立ったのは、自民党の二階幹事長が安倍首相の親書を習近平国家主席に手渡す時の「恭しい」姿勢である。というのも、24日、習近平は25日から始まる「一帯一路国際協力サミット・フォーラム」に参加する多くの首脳と続けざまに会見したからだ。CCTVで連続して映し出す各国首脳やIMFのラガルド専務理事等の姿は、横柄ではない程度ににこやかだが、決して「あなたに跪きます」といった風情の「へつらい」はなく、それなりに毅然としていて爽やかだった。
特に赤いマニキュアでポイントを付けたラガルドの直後に映し出された二階氏の姿は、「えっ!」と声に出したくなるほどの「朝貢ぶり」を全身から醸し出していたのである。
安倍首相の親書を習近平に渡す瞬間の映像はCCTVで観ることができる(映像が出てくるまでに少し時間がかかる)。うまくリンクしなかったら、CCTVの報道を転載したこちらのサイトでも観ることができると思うので、クリックしてみていただきたい。
日本人の感覚からすれば、人に物を渡す時の姿勢としては、ごく普通かもしれない。
日本のTBSでも、同様の映像を報道していた。ただ、TBSの映像では手渡した後に二階氏が両腕を体にピタリと合わせて直立の姿勢を取った瞬間は映し出されていない。特に気にしていないからかもしれない。
CCTVで、敢えてその瞬間まで含めて放映したのは、それが「習近平への朝貢」の意思を体現していると解釈したからだろう。中国で生まれ育ち、中国人の視点に慣れている筆者にとっては、その「切り取り方」が何を表しているかは、すぐにピンとくる。多くの中国人にとっても一目瞭然であることから、この瞬間を逃さずに放映したものと思う。
また、二階氏は、まるで初めて習近平と会談した金正恩委員長のように、「私はあなたの生徒です」と言わんばかりに、必死になって習近平の言葉のメモを取っていた。他国の首脳がリラックスしてテーブルの上で手を組んだり、にこやかに椅子の背に体を持たせかけている姿とは、あまりに違い過ぎて異様な光景として映った。
習近平が言った言葉に関しても、一見「ささいな」、しかし実は非常に重要な違いがある。
それはTBSでナレーターが最後に説明した(二階氏が)「習主席から一帯一路への日本の積極的な参加を求められた」という部分だ。
ただ単に「積極的な参加」と翻訳すると、まるで「これまで一帯一路には参加を表明していない」かのように聞こえる。
習近平が実際に言った言葉は「希望日方更加積極参与共建一帯一路」である。直訳すれば「日本が一帯一路を共に建設していくことを更に強化していくことを希望する」と言ったのである。
つまり、昨年10月26日の安倍・習近平会談のときに、安倍首相が言った「(一帯一路への)協力を強化する」という言葉を前提にしたもので、「(一帯一路に関して)すでに第三国での協力に日本が賛同していること」を前提としており。これは3月11日付のコラム<全人代「日本の一帯一路協力」で欧州への5G
効果も狙う>で詳述した通りだ。
安倍首相は現在訪問中のヨーロッパで「一帯一路」に潜んでいる危険性を述べたりして中国を牽制するような姿勢を見せている。ヨーロッパ歴訪の後はアメリカをも訪問してトランプ大統領と会談することになっているからだろう。
このような、その場限りの、矛盾に満ちた「変身」を重ねても、すでに遅い。安倍首相の特使として訪中した二階氏は、「安倍首相の代わりに」25日から北京で開催されている「第二回一帯一路国際協力サミット・フォーラム」に参加するだけでなく、「中国とのこの件(一帯一路)に関する協力を強化したい」と習近平に述べている。会談では「習近平主席が提案なさった一帯一路は巨大なポテンシャルを持った壮大な構想で、中国がこの構想を通して世界と地域に重要な貢献をしていることを、日本は積極的に高く評価している」とも言っている(中国語を日本語訳した)。
それだけではない。習近平との会談後、二階氏は記者団に「今後も互いに協力し合って(一帯一路を)進めていく。米国の顔色をうかがって日中の問題を考えていくものではない」と強調したとのこと(産経新聞など)。
同様の言葉は、北京に行く直前の4月23日の記者会見でも発している。
自民党の<役員連絡会後 二階幹事長記者会見>をご覧いただきたい。
毎日新聞の記者の「明日から幹事長は訪中されます。中国の一帯一路については、アメリカの対応に配慮して、日本政府も閣僚の派遣を見送っております。その中で幹事長は訪中の意義についてどうお考えですか」という質問に対して二階氏は「これはお隣の国ですし、大変日本にとっては重要な国であります。アメリカの御機嫌をお伺いしながら日中関係をやって行くのではありません。日本は日本として独自の考えで中国と対応をしていく、こういうことです。アメリカから特別の意見があったら承りますが、それに従うつもりは無いです」と回答しているのである。凄いではないか。日本は米中のどちら側に立って外交を進めるつもりなのか>(以上「NEWSweek」より引用)
上に引用したNEWSweekの記事でも二階氏の対中「朝貢姿勢」に驚いている。二階氏は習近平氏に向かって「アメリカの御機嫌をお伺いしながら日中関係をやって行くのではありません」と発言までしている。
なんという愚かな男だろうか。習近平氏の中国がこれまで日本に対して一体何をして来たのか、二階氏は何もご存知ないのだろうか。
中国が経済的に行き詰まり、経済崩壊の危機に直面していることを二階氏はご存知ないのだろうか。習近平氏は中共政府の最高権力者として剣が峰に立っている。
その習近平氏が経済崩壊の打開策として(もはやいかなる打開策も「遅きに失して」いるが)日本に擦り寄っていることに気付かないのだろうか。ここで二階氏が習近平氏に言うべきは「航行の自由」と「覇権主義の放棄」ではないか。
なぜ二階氏は日本の立場を主張する好機を逃すどころか、習近平氏に平身低頭してご機嫌伺いしなければならないのだろうか。二階氏は一体どこの国民を代表する政治家なのだろうか。
それとも「一帯一路」で金儲けに食いつこうと企む一握りの経済人・投機家の要請に従って二階氏は習近平氏に取り入ろうとしたのだろうか。少なくとも二階氏が習近平氏相手に展開した「朝貢外交」は浅まし過ぎて見るにたえない。
習近平氏の中国は軍拡一方で、まさしく「中国帝国」を築こうとしている。「一帯一路」が橋頭堡を世界各地に築き、そこから世界を蚕食しようとしている。その「一帯一路」の一方の端が日本だと二階氏は習近平氏の帝国主義にコミットしたかのような発言をしたが、それは世界各国に誤解を与える。
日本も中国と同様の軍拡・帝国主義に政治方針を転換したかのような印象を与えかねない。二階氏が日本の利益をどれほど既存したか、彼にその認識がないとしたら事態は深刻だ。米国が台湾を中国から守ろうと態度を明確にしているさなかに、日本の裏切りとも思える政権与党幹事長の発言はワシントンに驚きと怒りを以て配信されただろう。
なぜこのような人物を中国へ派遣したのだろうか。日本の国家と国民を代表する「外交」の場に最もふさわしくない人物だ。世界漫遊記を展開する安倍氏の手駒にはこの程度の人物しかない、ということなのだろう。類は類を以て集まるという。日本政治が劣化している張本人はまさしく安倍氏の罪に他ならない。