「ニッポン人の議論は「のんきすぎ」でお話にならない 危機感もって「本質」を徹底的に追求せよ」

経済規模を示すGDPは、「GDP=人間の数(つまり人口)×1人当たりの生産性」という式で表すことができます。これから日本では人口が減るので、生産性を上げないと経済の規模が縮小していきます。これは、かけ算さえ知っていれば誰にでも理解できる簡単な事実です。
人口が減っても高齢者の数は減らないので、年金や医療費をはじめとした社会保障費の負担は減りません。そのため、日本の場合、経済規模を縮小させてしまうことは絶対に許されないのです。
生産性を上げるとは、労働者の給料を上げること、そのものです。人件費をGDPで割れば、労働分配率が求められます。つまり、生産性と労働者の給料は表裏一体なのです。
英国銀行は、労働分配率を下げるとデフレ圧力がかかると分析しているので、デフレを早期に脱却するという意味でも、日本は労働者の給料を上げ、労働分配率を高めるべきです。
生産性向上にコミットする経済政策を「High road capitalism」と言います。「王道」と訳されることもありますが、見方を変えれば「茨の道」とも言えます。当然、その反対は「Low road capitalism」です。こちらは、ある意味で「邪道」とも言えます。簡単に言うと「High road capitalism」は高生産性・高所得の経済モデルです。「High road capitalism」の根本的な哲学は「価値の競争」です。市場を細かく分けて、セグメントごとにカスタマイズされた商品やサービスで競い合うのが競争原理になります。そのため、商品とサービスの種類が多く、価格設定も細かく分かれています。
High road capitalismを志向している企業は、商品をいかに安く作るかよりも、作るものの品質や価値により重きを置く戦略をとります。他社の商品にはない差別化要素であったり、機能面の優位性であったり、とりわけ、いかに効率よく付加価値を創出できるか、これを追求するのが経営の基本になります。
最も安いものではなく、ベストなものを作る。そのスタンスの裏には、顧客は自分のニーズにより合っているものに、プレミアムな価格を払ってくれるという信条が存在します。
High road capitalismを追求するには、もちろん最先端技術が不可欠です。そして、それを使いこなすために、労働者と経営者の高度な教育も必須になります。同時に機敏性の向上も絶対条件です。
Low road capitalism」は1990年代以降、日本が実行してきた戦略です。規制緩和によって労働者の給料を下げ、下がった人件費分を使って強烈な価格競争を繰り広げてきました。
海外の学会では、Low road capitalismに移行すると、一時的には利益が増えると論じられています。しかし、Low road capitalismによって短期的に利益が増えるのは、技術を普及させるための設備投資が削られ、社員教育も不要になり、研究開発費も削減される、すなわち経費が減っているからにすぎません。Low road capitalismは先行投資を削っているだけなので、当然、明るい将来を迎えるのが難しくなります。まさに今の日本経済そのものです。
実は、「Low road capitalism」でも経済は成長します。しかしそのためには、人口が増加していることが条件になります。人口が減少していると、「Low road capitalism」では経済は成長しません>(以上「NEWS week」より引用)


 上記論文はデービット・アトキンソン氏が記した論評「ニッポン人の議論は「のんきすぎ」でお話にならない 危機感もって「本質」を徹底的に追求せよ」から一部引用したものだ。デービッド・アトキンソン氏はオックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせた。退職後も日本経済の研究を続け、『新・観光立国論』『新・生産性立国論』など、日本を救う数々の提言を行ってきている。最近になって日本の生存戦略をまとめた『日本人の勝算』を敢行している。
 デービット・アトキンソン氏が指摘するまでもない。私も生産性を向上させて経済成長路線に日本の経済政策の舵を切るべきだと何度もこのブログで提言してきた。そうしなければ人口減少と共に日本は衰亡する運命にある、と警鐘を鳴らしてきた。

 安倍自公政権の推進している「構造改革=グローバリズム」は日本を亡ぼす。TPPや欧州とのFTAなどで日本経済が成長すると考えるのは大間違いだ。それはデービット・アトキンソン氏が二項対立で示したLow road capitalism」路線でしかない。
 デービット・アトキンソン氏が論評に書いている通りLow road capitalism」は短期的に利益の拡大をもたらすかもしれない。しかし長期的には「生産材への投資」をしないため経済は衰退へと向かう。ことに少子化がはっきりしている国で経済成長を促すにはHigh road capitalism」を選択するしかない。その政策こそが経済政策の「王道」であると同時に「茨の道」でもあるとデービット・アトキンソン氏は指摘している

 なぜHigh road capitalism」が「茨の道」なのか。それは生産への投資を行うと同時に技術や研究開発にも投資が必要だからだ。生産性の向上に各種開発が欠かせない、というのは常識だ。そうした「茨の道」を避けて安易な「安価な労働力」を求めてLow road capitalism」を選択しているのが現在の日本の多くの経営者たちだ。
 しかしそれでは衰退の坂道を転げ落ちるのは火を見るよりも明らかだ。なぜならGDP=人間の数(つまり人口)×1人当たりの生産性」という原則があるからた。GDPを拡大させるのに人口減が明らかならば人口減の数値以上に一人当たり労働生産性を大きくしなければならない、というのは小学校の算数程度の知識でも分かる話ではないか。

 そして労働生産性の向上と同時に国民所得を増大させる必要がある。そうしないと国民の購買力が上がらないからだ。つまり個人消費の拡大を政策でアシストしなければGDPの拡大に必要な「消費の拡大」が起きないからだ。
 GDPの主力エンジンは日本の場合は個人消費だ。決して貿易ではない。その貿易の「条件」の話し合いで日本の食糧消費を外国に「譲渡」しようとするのが自由貿易の話し合いだ。なんのことはない、FTAやTAG交渉は日本を衰退させるための「条件」の会談を演じているだけだ。繰り返すが日本のGDPは決して貿易に大きく依存してはいない。その多くは日本国民の個人消費に依存している。

 「ニッポン人の議論は「のんきすぎ」でお話にならない 危機感もって「本質」を徹底的に追求せよ」というデービット・アトキンソン氏の警句を日本の政治家と日本のマスメディア関係者諸氏に贈る。

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