公共事業に関する病理の深層。

 周南市長選挙がこの春に実施される。昨年11月に「官製談合」が摘発されて業者と次長が逮捕され、そのことを巡って「すっきり」させるべきだという現職を批判する女性県会議員が市長選に名乗りを上げた。
 しかし街の噂でどうもスッキリしないという。新人候補が現職批判の矛先が鈍っているというのだ。なぜなのか、それは新人候補もまた長年の県会議員として期数を重ねるうちに公共事業の「アカ」に塗れているからではないか、とヒソヒソ話が耳に入ってきた。

 かつて周南市議会議員だった当時、私は「周南市も電子入札を導入すべき」と提案したことがあった。十数年も前のことで、当時の市長も「十分に検討に値する」との答弁干したと記憶しているが、間もなく私は改選により議席を失い、市長も退いたため「電子入札」は実現されないままになっている。
 そこで新人候補に「電子入札」を導入するとの公約を掲げよ、と選挙事務所へ出掛けた。多忙を極める市長候補とは会えなかったが、後援会幹部と会談し「電子入札」に関するプリントを候補者に渡して欲しいと手渡した。

 しかし後援会幹部の反応が極めて薄かった。なぜなのか理解し難かったが、話しているうちに原因が分かった。彼は職を退くまで「建設設計コンサルタント」をしていたというのだ。
 私が「相手候補の批判をするではなく、電子入札をどうのゅうして、公共事業の入札をガラス張りにする」との公約を掲げれば良いではないかと提案しても、「安ければ良いというものではない」と応じる。

 もちろん安くても手抜きや不良材料を使用されてはならない、というのは当たり前だが、民間工事と比してバカ高い公共事業が「諸悪の温床」だというのは常識だ。
 民間建設事業では「マンションで一戸専有面積80㎡の100戸規模のものの建設費が幾らするか」ご存知か、と聞いた。地方都市でその程度のマンションならせいぜいしても販売価格は3000万円までだ。するとマンション本体建設費と土地価格と広告宣伝販売経費まですべて含めても30億円だ。専有面積が80㎡×100戸で8,000㎡、それに共用部分まで含めて延べ床面積約1万㎡のマンションの総価格が30億円だ。一昨年完成した延べ床面積2万㎡もない新庁舎建設費が116億円というのはおかしくはないのか。しかも新庁舎建設に土地価格は入っていない。

 そうした指摘に対しての後援会幹部の反論が上記「安ければ良いというものでない」という言葉だ。もちろん手抜きや耐震偽造があってはならないが、新築マンションにそうしたことはないだろう。
 しかもマンション建設には戸数分だけの豪華な玄関ドアやシステムキッチンやユニットバスなどの設備費、さらに各部屋ごとの間仕切りなど、新庁舎建設よりも建築単価が跳ね上がる要素がフンダンにある。

 ハコモノ公共事業ではまず基本設計を「建築設計会社」に依頼する。そこが建築設計を行いハコモノ事業価格の大まかな総額を決める。つまり公共事業価格は公共事業単価表に従って部材を積算して決定される。
 後援会幹部は「建築設計コンサルタント」をしていたという生業から、公共事業単価や建設価格形成の「常識」に染まり切った御仁だ。彼が公共事業は税金の無駄食いだ、と批判したとは寡聞にして聞いたことがない。いや、日本全国の建築設計士たちが一人として「公共事業を告発」したと聞いたことがない。

 現職市長を批判して立候補の意を固めたにも拘らず、後援会幹部にそうした御仁がいては「官製談合」批判の矛先が鈍って当たり前だ。周南市に電子入札が未だに導入されてないのはそうした民官の「公共事業」を食い物にする構造的な病理が深層部で蔓延しているからではないか、と思わされた一時間の会談だった。
 彼が私が持参した「電子入札」に関する資料を握り潰して候補者に伝えなかったら、市長選を通して「電子入札を導入して公共事業をガラス張りにする」との公約が候補者の口から語られることはないだろう。

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