TPPは「環太平洋パートナーシップ協定」であって、決して「新自由貿易協定」ではない。

日本を含む11カ国が参加する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が30日発効した。世界の国内総生産(GDP)の13%超を占める地域で関税が大幅に引き下げられる。

オーストラリア外務貿易省によると、協定はオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、日本、メキシコ、シンガポールで30日に発効した。ベトナムは1月14日の予定。ブルネイ、チリ、マレーシア、ペルーは批准手続き完了の60日後となる。

ニュージーランドのパーカー貿易相は声明で日本、カナダ、メキシコとの初の貿易協定と指摘し「完全に実施されればニュージーランドの輸出業者は年間約2億2200万NZドル(1億4901万米ドル)の関税削減につながる可能性がある」との見方を示した。

米国は2017年にTPP交渉から離脱した。米小麦協会のトップを務めるビンス・ピーターソン氏は10日の公聴会で「われわれは日本で53%の市場シェアを維持したいと考えているが、現在急激な減少に直面している」と危機感を訴えた。同協会が公聴会でのやりとりをウェブサイトで公表した>(以上「REUTERS」より引用)


 環太平洋パートナーシップ協定(かんたいへいようパートナーシップきょうてい)(Trans-Pacific Partnership Agreement、略称: TPP)が発効するにあたって、日本のマスメディアは如何なる意図か「巨大自由貿易圏」との見出しで報じている。しかしその実態は環太平洋地域の国々の経済のみならず社会制度までも含めた統合を目的とした多角的な経済連携協定 (EPA) だ。
 自由貿易促進を主たる目的とした国際機関としては1991年1月1日に発足したWTOがある。WTOはGATTを継承したものであるが、GATTが協定(Agreement)に留まったのに対し、WTOは機関(Organization)であるのが根本的な違いである。
  1. 自由(関税の低減、数量制限の原則禁止)
  2. 無差別(最恵国待遇、内国民待遇
  3. 多角的通商体制
を基本原則としている。また、物品貿易だけでなく金融、情報通信、知的財産権やサービス貿易も含めた包括的な国際通商ルールを協議する場である。
 またWTO違反への対抗処置の発動では、紛争処理機関(パネル)の提訴に対し全加盟国による反対がなければ採択されるというネガティブ・コンセンサス方式(逆コンセンサス方式)を採用した強力な紛争処理能力を持つ。これは国際組織としては稀な例であり、コンセンサス方式を採っていたGATTとの大きな違いで、WTOの特徴の一つといえる。

 上記WTOには世界の国と地域の128が参加し、世界の貿易秩序の基本を形作っている。しかし、その上に屋上屋を重ねるのように「ヒト モノ カネ」の自由な往来までも保障するFTAやTPPなどといった「地域間協定」間でも結んで、ブロック経済圏を形成しているのはなぜだろうか。
 それはかつて日本が国際社会に進出した際に先進欧米諸国がブロック経済圏を形成して「ブロック」した行動と何処か似通ってはいないだろうか。TPPは明らかに中国を排除するためのものではないだろうか。圏域人口5億人の「巨大自由貿易圏」を誇るなら、なぜ人口14億人の中国を入れないのだろうか。

 明らかな矛盾を隠蔽したまま、マスメディアはTPP批准に諸手を挙げて賛成しているのはなぜだろうか。日本の食糧安全保障の面からすればマイナスに働くのが明らかにも拘らず、そのことに関して警鐘を鳴らさないのはなぜだろうか。
 関税を非関税障壁まで含めて撤廃することは「弱肉強食」世界がTPPの名の下に展開される、ということだ。大資本の多国籍企業がトコトン有利な制度で、農産品に関しても大資本の多国籍企業が有利なことに変わりない。安倍自公政権は農地法の改正で法人が農地を所有して大規模化するのを促進しているが、その法人から外国法人を排除していないことを日本国民の何%が知っているのだろうか。

 かつて朝鮮半島併合時代、日本政府は半島の農地拡大の開墾と圃場整備に尽くした。そして「朝鮮米」が増生産されだすと、朝鮮人が日本内地での販売に乗り出した。当時の米価は日本内地の相場は朝鮮半島の約二倍だったからだ。しかしそれを許すと朝鮮半島の米を大量に日本の内地へ販売しかねなく、朝鮮半島が米不足で米価が高騰するとして日本政府は朝鮮米の日本内地への「輸入」を禁じた。
 しかしTPP域内で工業製品であれ農産品であれ、生産者はより多くの利益を手に入れたいと思えば高く買い取るところへ持って行って売るだろう。日本の食糧安全保障のみならずTPP参加国内で食糧安全保障が脅かされることになる。

 関税自主権を撤廃してはならない。ましてや非関税障壁までにも関与して撤廃を命じるのは内政干渉でしかない。もちろん行き過ぎた関税は円滑な国際関係を阻害するため排除されなければならないが、そうしたケースはWTOで既に排除されている。
 WTO加盟国が更に深化した貿易協定を締結して「ブロック」貿易圏を形成するのは決して世界平和に寄与するものではない。グローバル化を促進して大資本に世界制覇の機会を与えるだけだ。それは一握りのものが残りの99%以上の人類を奴隷にするためのものでしかない。

 人類はつい半世紀ほど以前に有史以来の「奴隷」の存在する歴史から脱却したばかりだ。後世の歴史家が「奴隷の世界史」と「奴隷なき世界史」とを分けて認識する基準となるべき世界史上の大きな進化だ。
 そうした人類史上初の「奴隷なき世界史」を歩み始めた人類がグローバル化の名の下に「経済的奴隷制度」を世界で制度化しようとしている。世界の国々には異なる発達史があり、民俗史がある。それらをすべて尊重するのが文明的なあり方だ。かつてスペインやポルトガルが南米に侵略して原住民を大量虐殺し文明を破壊し言語まで奪い去った残虐行為を再び現代で繰り返そうというのだろうか。

 2019年の元旦に際して、世界は再び「奴隷」の存在する世界へ逆戻りしているのではないかと危惧する。

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