国連の「移民」の定義は居住国変更が一年以上の者をいう。

公明党は31日午前、国会内で外国人労働者の受け入れ拡大に向けた対策本部の会合を開き、新たな在留資格を設ける出入国管理法改正案を了承した。自民党は既に改正案を了承しており、政府は11月2日にも閣議決定し、今臨時国会内での成立を図る。
 入管法改正案は、在留期限が通算5年で家族帯同を認めない「特定技能1号」と、家族帯同を認め、条件を満たせば事実上の永住も可能となる「2号」を新設することが柱となる。
 安倍晋三首相は29日の衆院本会議で「移民政策をとることは考えていない」と強調したが、野党は「事実上の移民政策」などと反発を強めており、審議は難航することも予想される>(以上「産経新聞」より引用)

 国連経済社会局によると3ヶ月から12ヶ月の間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久的移住と呼んで区別するのが一般的だ。つまり国際移民の正式な法的定義はないが、多くの専門家は移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々を国際移民とみなすことに同意している。
 だから安倍氏が五年間の外国人労働者を「移民とは思わない」と云おうが、それは安倍氏の勝手な解釈に過ぎず、国際的には一問以上の居住国の変更を以て「移民」と呼んでいる。野党が「事実上の移民」だと批判するのもまどろっこくて、まさしく「移民政策」そのものだと国際世論がみなしていることを日本のマスメディアは認識すべきだ。

 そして一旦、国内に外国人労働者移民を受け容れて、経済環境等の変化により雇用環境が「人余り」局面になった時、一年以上日本で暮らした外国人労働者を「強制的」に帰国させることが出来るのだろうか。外国人労働者が国際労働機関に提訴することも考えられるし、国連は移民に関してグローバル・コンパクトとして国際的な共通認識を策定している。
 そのたたき台となる「ニューヨーク宣言」では厳しく10以上に亘る項目を掲げて移民の保護を訴えている。今年2月から7月にかけて毎月開催される政府間会合や、他のステークホルダーを交えた非公式会合において協議され、12月にモロッコで開催される会議において採択される予定になっている。

 安倍自公政権が今国会で外国人労働者に関する法律制定を目指しているのはグローバル・コンパクトの成り行きに懸念を抱いているからなのだろうか。国連で移民に関する厳しい保護策が決まる前に、日本政府は法律を成立させてしまえば問題は「先送り」になる、少なくともマスメディアや国民が「移民」の何たるかを知る前にチャッチャとやってしまおうというのだろう。
 安倍自公政権は極めて危うい。日本を移民大国にしてしまおうとしているかのようだ。50万人外国人労働者を入れても、「特殊技能」というあやふやな選別基準で半強制的に「入管法」で日本国内居住権を奪えば帰国させられる、と安易に考えているようだ。

 それは国際社会を知らない「無知」ゆえの暴政だ。国連は国内居住1年で「移民」とみなすのが常識だ。しかも彼らはプータローではなく仕事を持ち、ホームレスでもなく住居を確保している。さらに、日本政府の政策により「人手不足」を理由に労働者として「移民」を促進された者たちを強制的に帰国させることなど出来はしない。
 なぜ今年12月に行われる移民に関するグローバル・コンパクトの成り行きを見定めてから議論する慎重さを政府与党は持たないのだろうか。それとも政府与党の国会議員諸氏も国連のそうした日程を知らないのだろうか。

 国会議員諸氏がグローバル・コンパクトを知らないとすれば、勉強不足というよりも、グローバル・コンパクト会議に出席している政府間権者・官僚たちによる情報隠避が原因だろう。そして自ら取材して国民に報せようとしない、情報は記者会見で上から降って来るものだけを報道すれば良い、という日本のマスメディアの体たらくに原因がある。
 安倍氏が「私は外国人労働者を移民だとは思わない」と勝手な私見を披露しても、それは国際的な常識と乖離していることを国民は知るべきだ。国連では一年以上の居住国変更を以て「移民」とみなしている。

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