米中貿易戦争と日本。
<米国防当局者は1日、米中両政府が今月中旬に予定していたマティス国防長官の北京訪問と「外交・安全保障対話」に関し、中国側が中止を伝えてきたと明らかにした。理由は明確にしていないが、貿易問題をめぐる米中の対立が安全保障分野にも波及している実態を浮き彫りにするもので、米中関係の全面的な冷却化は避けられない情勢となった。
今回の件を9月30日に最初に報じた米紙ニューヨーク・タイムズによると、中国は同月28日、中国軍高官とマティス氏との会合は行われないと米側に伝達してきた。日程が再調整されるかどうかは現時点で明らかでない。
米政府当局者は同紙に、何が中国に中止を決断させたかは明確でないものの、米政府がロシア製兵器を購入した中国共産党の軍備調達部門を同月20日に制裁対象に指定したことが引き金になった可能性があるとの見方を明らかにした。
また、中国外務省報道官は同月25日、米政府が台湾に約3億3千万ドル(約372億円)相当の軍用機部品の供与を決めたことに「強い不満」を表明し、「主要な2国間協力分野」を含む米中関係に深刻な打撃が及ぶと警告していた。
中国はさらに、米強襲揚陸艦「ワスプ」が10月に計画していた香港への寄港を拒否したほか、9月25~27日に予定された米中両軍の統合参謀部門による軍事対話も延期するなど、対決姿勢を鮮明にしている>(以上「産経新聞」より引用)
先の戦争まで散々欧米列強に蚕食された「清国」を最も知る中国が「一帯一路」を謳い文句にしつつ返済不能な「元」借款を行って他国の港湾施設や空港などを直轄支配するという現実には悪寒が走る。中共政府の中国がやっていることは、かつて欧米列強が清国にやっていたことと同じことだ。
軍事力を背景に自国の版図を世界に広げて植民地支配し、植民地支配地にすむ住民を「奴隷」として使役する欧米列強の「グローバル化」政策を21世紀世界で再現しようとする中共政府の野望は軍事力により民主主義を「布教」することによりパクス・アメリカーナを夢見た米国の野望と衝突するのは当然の結果だ。米国の世界支配地域を蚕食し、昂然と頭角を現した中共政府の中国を軍事力を用いないで叩く最も良い方法は中国発展の原動力を減速させることだと思い至るのは至極当然のことだ。
中国が世界へ自近勢力を拡大する原動力は潤沢な「外貨」だ。外貨があるから世界から軍事物資を手に入れ、世界各地に「一帯一路」の名を借りて中国軍の基地を築くことが出来る。
中国が外貨を手に入れる方途は二つある。一つは外国資本の流入で、今一つは貿易黒字だ。中国は国内に潤沢な安価な労働力を原資として、外国資本の流入を促進し、一時は外国資本の企業が中国資本の企業を上回るほど外資の流入を歓迎した。ただし、中国は外資企業と雖も全株式の50%未満の取得しか許さず、いつでも株主総会で外資企業から「外国人」経営者たちを叩き出せる体制を保持していた。
そして中国人労働者の賃金が上昇して廉価な労働力の魅力がなくなるや、外国資本は陸続と撤退し始めた。ただ外資が中国内で操業していた当時から外資企業の知的財産のブラックボックスを開示せよ、と中共政府は法制化しようと策動していた。中国は「重厚長大」の設備型企業のノウハウは取得したので、いよいよIT部品製造のノウハウを中国内に移転しようとIT企業買収に本気で乗り出した。すでに検索サイト・アリババや百度などは米国の検索サイト・グーグルを圧倒する検索数を誇っている。つまりビッグ・データの蓄積と米国が優越している「知財」の奪取にまで触手を伸ばしている現実に米国政府は激怒した。
中共政府の中国を徹底的に潰すことをトランプ氏は決意した。しかしその決意はトランプ氏より米国議会の方がむしろ強い。核兵器を保有する「超大国」に成長した中国を容認することは出来ない、という米国議会の総意がトランプ氏の背中を押している。
米中貿易戦争は生半可な段階で終息することはないだろう。米国は徹底して中国を叩くつもりだ。たとえ少々米国の消費者物価や経済に影響が出ようと、スリランカやモルディブやパキスタンや中央アジア諸国に「一帯一路」政策と称して中国軍基地を建設している中国の野望を挫くまで、決して妥協しないだろう。
そうした米国の固い決意を知った中共政府は米国との妥協を図るよりも貿易戦争を受けて立ち、自国の経済防衛に本気で乗り出すだろう。中国が米国以外で潤沢な外資を導入できるアテは日本しかないから、当然日本政府に甘言を弄して誘き寄せるだろう。すでにそうした策動を開始している。日中首脳会談を持ち掛け、日中双方の首脳の訪問を習近平氏は持ち掛けている。その策動に全ての外交が失敗に帰した安倍自公政権は易々と乗っているように見える。
自民党は無能・無策安倍氏の総裁任期三年延長を決めた。アベノミクスも2年で2%物価上昇戦略は失敗し、異次元金融緩和も金融機関を痛めつけただけで失敗し、北方領土交渉も失敗し、トランプ氏をTPPに引き込む戦略も失敗して二国間貿易交渉を始めることにした。つまり日米関係の構築にも失敗した。
「政治は結果だ」と声高々に叫んで民主党政権を批判していた六年前の言葉を安倍氏は自らの無能・無策政権の自己批判として自省すべきだ。安倍自公政権の結果は内政でも外交でも何も出ていない。安倍氏の治世下で世界GDPに占める日本のGDPの割合は(2011年4.645%から2026年4.141%)0.5%も低下した。それがすべてだ。チマチマとした言い訳程度の経済指標を上げる必要は何もない。
地盤沈下しつつある日本経済を安倍自公政権は六年間も拱手傍観していた。日本のマスメディアも安倍氏をヨイショするだけで、無能・無策の政権下で衰亡しつつある日本を一切批判して来なかった。
安倍氏は自らの無能を自覚すべきだ。決して自分の判断で対中政策を実施してはならない。自身の空っぽの頭脳で判断すればプーチン氏やトランプ氏に完全に「してやられた」外交を再びリプレイするだけだ。
中国は輸入車の関税を25%から15%に引き下げると発表した。それなら日本は中国政府に日本車の関税を0%にすべく要求し、同時に米国に日本車に25%に引き上げても構わない、と日米二国間貿易交渉の延期を通告すべきだ。中国の17年の新車販売台数は世界首位で前年比3%増の2887万台。輸入台数は同17%増の121万台だ。米国への日本車輸出は140万台で、十分に中国市場が米国市場に取って代わるだけの余裕がある。
そうしたカードを手にして米国と交渉すべきだが、安倍氏の手腕では到底無理だ。度胸と頭脳を併せ持つ政治家の登用が望まれるが、そうした人材が与党内を見回して存在しないのが日本の悲劇だ。米国のポチに成り下がっている官僚たちは当てにならない。
無能・無策の自公政権に見切りをつけて、政権交代こそが最も望まれる。米・中を手玉に取って交渉できる政治家は日本の政界で小沢一郎氏だけだ。彼を一日も早く日本の国家と国民のために働いて頂かなければ日本は衰亡するだけだ。米中貿易戦争で漁夫の利を得るには米・中の知恵の上を行く知恵者が必要だ。