日本の律令制度の危機。

<中央省庁や自治体で障害者雇用の水増しが相次いで発覚した問題で、昨年国のガイドラインに反して障害者手帳などを確認せずに雇用率に算入していた人数は3千人台となる見通しであることが24日、分かった。28日の関係閣僚会議に報告される。複数の政府関係者が明らかにした。中央省庁は約6900人を雇用していたと発表しており、半数程度が不正算入されていたことになる。政府は10月までに再発防止策を取りまとめる方針を決めた。

 「あきれてモノが言えない。障害者はもちろん、努力してきた民間企業をだましたという背信行為だ」。NPO法人「日本障害者協議会」の中村敏彦理事(61)は24日、国会で開かれた野党合同ヒアリングでこう述べた。ヒアリングでは13府省庁の人事担当者が水増しについて「精査中」と繰り返した。

 安倍晋三首相は24日、首相官邸で加藤勝信厚労相と会い、「スピード感を持ってしっかり取り組むように」と指示した。首相がこの問題に言及するのは初めてだ。

 国や自治体は模範となるべく、法定雇用率を民間企業より高い2・5%(3月末まで2・3%)に設定。達成率は昨年6月時点で平均2・49%で、障害を持つ関係者は「数値を合わせたのでは」と不正を疑う。

 なぜこうした事態が放置されていたのか。障害者雇用は原則、障害者手帳などを持つ人が対象となる。しかし多くの機関で、手帳交付に至らない比較的障害の程度が軽い職員などを算入している。

 厚労省によると、平成17年から指針で「対象となる障害者の範囲は手帳によって確認」と記載し、今年5月にも各省庁の担当者にメールなどで添付して周知活動を続けた。担当者は「なぜ確認しないのか」と疑問を呈する。

 ところが、国交省の関係者は「指針の存在は知らされていたが、内容まで詳細な説明は受けていない。厚労省による説明が行政と企業で一緒だったのかは疑問がある」と反論した。

 さらに、昨年までの厚労省の通知では「身体障害者とは『原則として』、手帳の等級が1~6級に該当する者」と書かれていたため、「手帳を確認しなくても、運用の範囲内だと思った」(高知県)と、通知の拡大解釈をしていた自治体も多かった。

 人事院によると、一括で実施する国家公務員採用試験では「障害者枠」は設けていない。担当者は「これまで法定雇用率が満たされていたので枠を設ける必要がなかった」と説明した。

 国家公務員は拘束時間が長い上、国会対応など突発的な仕事もあり、「採用は難しい」との声も。業務の外部委託が進み、障害者が働く場の確保に苦慮している側面もあるという>(以上「産経新聞」より引用)


 国と地方自治体の約半数で障害者雇用の水増しがあったという。その原因は障害者雇用の対象者が「障害者手帳を持つ者」という規定を厳格に適用しないで、障碍者手帳の原本かコピーを確認しなかったというから呆れて物も言えない。
 千数百年を誇る日本の律令制度の中で、現在ほど弛緩しきった時期があっただろうか。もちろん「律」とは行政法のことで、「令」とは罰則のことだ。国家体制として全国隅々まで一つの行政法が一律に実施されなければならないのは当然のことだ。

 それが「人心面の如し」で、各省庁や地方自治体が異なる基準で行政法を適用していて国家体制が維持できると思っているのだろうか。言い訳として「障害者手帳の確認が必要とは思わなかった」とは「言うに事欠い」た国民を馬鹿にした話ではないだろうか。
 たとえば100万円を超える贈与には税を課す、といった「法令」に対して、国民が勝手に「月に100万円だと思っていたり、「半年に100万円」だと思っていたりして、勝手に申告しなかったら税務署は無申告加算という罰を課すだろう。そして「解らなければ税務署に聞いてください」と注意を喚起するだろう。そうした常識の塊のはずの公務員が行政法に悖る判断を勝手に行ってバラバラの基準で障害者を採用していたとは驚きだ。

 そして産経新聞の記事の最後に<国家公務員は拘束時間が長い上、国会対応など突発的な仕事もあり、「採用は難しい」との声も。業務の外部委託が進み、障害者が働く場の確保に苦慮している側面もあるという>とは言語道断だ。
 国家公務員の拘束時間が長いというのなら、労働基準監督署は何をしているのか。国会対応とは「何」だ。国会議員の質問事項を事前に調べて「回答文書」を作成することを指すのなら、その方が異常だということを認識すべきだ。

 国会審議で質問に「事前通告とそれに対する回答メモ」が手元になければ回答できない大臣が閣僚席に座っているとしたら閣僚たちは無能な者たちのお飾りの役職でしかないかと疑わざるを得ない。
 せめて概要や骨子程度は理解して即座に回答し、詳細は政府委員に譲る、というのが国会審議なら事前通告も「想定問答集」も必要ない。メモを読むだけの無能の輩は国会議員に立候補してはならない。

 そして引用記事で由々しきは<業務の外部委託が進障害者が働く場が少なくなっている>という下りだ。実際に公務員の仕事の大半は外部委託文書の作成と予算執行伝票の作成だ。
 たとえば徴税部門で税額の数字を計算機で弾いたり納付書に記載したりする仕事は皆無だ。それらは電子計算センターへ外部委託して納付書の郵送まで「委託」している。それでは仕事はないはずだが、大勢の公務員が役場に詰めている。たとえばゴミ収集も殆どの自治体が「外部作業委託」だ。もちろん介護現場で公務員が働いているわけではない。それでいて介護担当の公務員の給与の方が現場で働く介護職員の倍以上の報酬を手にしている。

 そうした問題を全部スルーして<障害者の働く場が少ない>とは開いた口が塞がらない。外部委託外部委託文書の作成が障害者には「困難な仕事」なのだろうか。実際にゴミ収集車に乗らない清掃部門で働くのが障害者にとって困難なのだろうか。
 明治以後だけでも150年の行政体系を保つ国家体制下で、現在ほど公務員が弛緩しきっている時はないだろう。そして現代ほど公務員の仕事が単純事務作業の労苦から解放された時もないだろう。すべては事務の電子処理化と外部委託の進展のお陰だが、その果実を健常者たちだけが貪って良いわけがない。

 障害者雇用で「ズル」をした連中は余りバカな言い訳をしないことだ。そしてそれを伝えるマスメディアの記者諸君も少しは勉強したらどうだろうか。記者会見で官房長官や各省庁の広報官が発表したことを、そのまま垂れ流すだけなら省庁のホームページの告知板だけで事足りる。

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