安倍氏が直談判すべき相手はワシントンではなく平壌にいる。
<安倍晋三首相は6日夕、トランプ米大統領との首脳会談と先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)出席のため政府専用機で羽田空港を出発した。12日にシンガポールで開かれる米朝首脳会談に向け、7日のトランプ氏との会談では北朝鮮への圧力継続と日米の緊密な連携を確認する。トランプ氏が北朝鮮ペースに引き込まれないように、安易な妥協はしないようクギを刺す考えだ。日米首脳会談は今年4月以来、7回目。
6月12日の米朝首脳会談が決まってもなお、安倍氏は蚊帳の外に置かれている現状に苛立ってワシントンへ飛んだ。トランプ氏と「考えをすり合わせるため」だというが、米朝首脳会談直前の多忙な時期に具体的な対応策を持たない手ぶらで日本からやって来る安倍氏には迷惑千万だろう。
トランプ氏は米国の軍産共同体とイラン合意の破棄を実務段階で支えたブレーンとの打ち合わせに忙しいだろう。失礼だが米国大統領にとっては日本人拉致問題よりも米国民3億2570万人を守る方が先決だ。何としてもICBM開発を廃棄させることに全力を注ぎ、核廃棄は段階的に進める、という基本路線で話し合うだろう。
北朝鮮の核を完全に廃棄することはかなり困難だ。完成した核爆弾を接収して核製造施設を破壊しても、核製造技術者は北朝鮮の国内にいる。国際的な精密機器市場で核爆弾製造精密機器を調達するのは不可能ではない。
すべてのプルトニュウムを取り上げても、裏の国際市場から調達可能だ。もちろん核拡散防止協定が国際的に取り決められているが、そんなことは知ったことではない、という国だって世界には存在する。
それと同時に中国は北朝鮮のハンドルを手放さないだろうし、米国も韓国のハンドルを手放さない。日本には「米朝間で平和協定が結ばれれば米軍が韓国から撤退するのではないか」と論評するポンコツ政治評論家や軍事評論家がいるが、完全に米国の1%が呑み込んでいる韓国から米軍が撤退することはあり得ない。
ちなみに韓国内の銀行で韓国が株式の過半数を握っている「民族銀行」はたった一行だけだ。他はすべてIMF管理下時代に米国の1%によって乗っ取られている。韓国企業がいかに利益を上げても金融から米国の1%のポケットに韓国民が稼ぎ出した富が流れ込む仕組みになっている。そうした美味しい獲物を米国が手放すことはあり得ない。
安倍氏は交渉相手を間違っている。いや、彼の外交は常に間違いだらけだ。ロシアでも資源マフィアの小僧に過ぎないプーチンを相手にするだけで、ロシア・マフィアのボスと話し合おうとしない。
オバマ氏は米国の1%の完全なメッセンジャーだった。トランプ氏は自分も米国の1%の資本家(ハゲ鷹投機家)の一人だという思い上がりがある。しかしウォール・ストリートでは彼を仲間だとは思っていない。しかし米朝首脳会談で上手くやれば北朝鮮の復興需要400兆円ともいわれる利権をトランプ氏が手中に握るかもしれない、との思惑がある。トランプ氏にとっても金正恩氏と変わらないほど米朝首脳会談は正念場だ。
首脳会談が物別れになれば今年の中間選挙も乗り切れないし、下手をすれば任期半ばで大統領を辞任する事態に追い込まれかねない。
そうした緊迫した米朝首脳会談直前に「日本人拉致被害者の件をよろしく」と言いに来る安倍氏に頷きもしないで、「米朝平和条約締結後の復興資金を日本が払うんだぜ」と上から目線で申し渡されるだけだ。
安倍氏が直談判すべき相手はワシントンにはいない。金正恩氏は平壌にいる。
首相は出発前、首相官邸で記者団に「核・ミサイル問題、そして何よりも大切な拉致問題が前進するよう、しっかりとトランプ大統領とすり合わせを行い、米朝首脳会談を成功させたい」と語った。
トランプ氏は、北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長と会った後「最大限の圧力という言葉はもう使いたくない」と発言した。同時に対北制裁の維持にも言及したが、北朝鮮が非核化に向けて具体的な行動を取るまで制裁は緩和しないとする日米共通の立場を、改めて確認する必要性がある。
首相は、改めて北朝鮮の脅威や、非核化をめぐって国際社会が繰り返してきた失敗の歴史などをトランプ氏に説明する。拉致問題の解決なくして北朝鮮への経済支援はないとの日本の立場にも理解を求める。
日米両首脳は、7日昼(日本時間8日未明)に日米双方の通訳のみを入れた「1対1」の会談とワーキングランチを行った後、共同記者会見に臨む。
日米首脳会談後、首相はカナダ・シャルルボワに移動し、8日午前(9日午前)に開幕するG7サミットに出席する。サミットでは、米朝首脳会談に向けたG7の結束を打ち出す方向だ。通商政策やイラン核合意をめぐり、米国と他の参加国との間の立場の隔たりがどの程度埋まるかも、焦点となる>(以上「産経新聞」より引用)