米国の好況を支えるシェール原油増産。

米国内の原油生産量は、シェールオイルの急激な増産によって日量1000万バレルの大台に近く達しようとしている。これは1970年に記録した過去最高を上回り、10年前にはほとんどの関係者が想像すらしなかったような水準だ。
さらに米政府の見通しでは、来年終盤までに生産量は1100万バレルまで増え、世界最大の産油国ロシアに並ぶだろうという。
こうした生産増がもたらす経済的、政治的な波及効果は驚異的と言える。例えば10年間で米国の原油輸入量を20%減らし、地方社会に高給の仕事を生み出しているほか、国内のガソリン小売価格を2008年の高値に比べて37%も引き下げている。デロイトの米エネルギー・資源事業責任者ジョン・イングランド氏は「米経済にとって信じられないほどのプラスの影響を与えている」と強調した。
シェール部門が今の生産ペースを維持できるのかどうかは、なお議論が分かれるところだ。急成長を遂げてきただけに、この業界は既にピークを迎え、生産量の予想は楽観的過ぎるのではないかとの懸念も広がっている。ほとんどの油田において、人件費や関連サービスへの支払い費用はこのところ高騰し、掘削可能な土地の値段も跳ね上がっている。シェール業界の資金提供者からは、掘削事業を拡大するより目先のリターン確保に専念しろという要求も聞かれる。
ただ米国の生産者はこれまで、予想をはるかに上回るペースで増産を続け、さまざまな難しい課題も克服してきた。最近では、石油輸出国機構(OPEC)が国際市場に大量の原油を供給して価格を押し下げ、採算割れを起こさせる「シェール生産者つぶし」を試みたが、原油安に対して先に音を上げたのは、一部のOPEC加盟国だった。シェール業界は積極的なコスト圧縮や掘削技術の急速な進歩を通じて、この闘いを勝ち抜いたのだ。
今や原油価格は1バレル=64ドル超と、米国の生産者の多くが事業拡大と株主への配当支払いの双方に動くだけの資金を調達できる水準になった。OPECとの闘いで事業が効率化し、生産量が十分増えたおかげもあり、米石油業界による政府への原油輸出解禁の働き掛けは成功した。2015年終盤に議会が輸出禁止を解除し、現在では最大で日量170万バレルが輸出されている。今年は日量380億立方フィートの天然ガス輸出も見込まれている。
こうした輸出需要とともに、テキサス州西部とノースダコタなど離れた地域で生産が急増しているという事情から、米国ではパイプライン建設も活発化。パイプライン・ハザーダス・マテリアルズ・セーフティ・アドミニストレーションによると、キンダー・モーガン(KMI.N)やエンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ(EPD.N)といった企業は、12年から16年までに2万6000マイル相当を増設した。
シェール生産の伸びがさらに高まるかどうかは、それぞれの油井からより大量に採掘する技術次第だ。各企業は現在、ドリルにセンサーを取り付けて鉱床を一段と正確に探り当てようとしたり、設備と熟練のエンジニアを最大限に活用するためにAI(人工知能)や遠隔操作などの手段も用いている。
ウォーウィック・エナジー・グループのケート・リチャード最高経営責任者(CEO)は、技術力が採掘事業の収益性を高める手助けをしてくれると指摘した。また過去2カ月で原油価格が約10バレル上がったことにより、水圧破砕法(フラッキング)を利用した掘削サービスを提供しているキーン・グループ(FRAC.N)やリバティ・オイルフィールド・サービシズ(LBRT.N)などは、新たな受注を期待して高額の新機材を購入している。
調査会社スピアーズ・アンド・アソシエーツの見積もりでは、米フラッキングサービス業界の今年の収入は20%増加し、14年に記録した過去最高の290億ドルに迫るという。シェール開発を当初主導したのは中小企業で、海外での資源開発に力を入れていたエクソンモービル(XOM.N)やシェブロン(CVX.N)などの大手は遅ればせながら、先発のシェール企業や権益を取得する形で参入し、米国内への投資を加速させている。エクソンは昨年、パーミアン盆地の土地に最大66億ドルを支払うことに合意。シェブロンは今年シェール開発に43億ドルを投じる。
こうした動きは、米国の地方の人件費や掘削可能な土地の値段を押し上げ、地域の賃金水準を引き上げて豊かさを提供することに貢献しつつある。「シェール城下町」のテキサス州ミッドランドでは失業率が2.6%まで下がった、と地元で企業の求人を支援する機関の幹部が明らかにした。この幹部の話では、企業側は人材獲得のためにボーナスを提供することも提案しており、就職状況は「かつて買い手市場だったが、今は売り手市場の側面が強い」という>(以上「REUTERS」より引用)

 米国は原油輸入国としても世界第2位の輸入大国だが、実は原油産出国では世界最大の産油国ロシアに並ぼうとしている。しかし世界原油消費の約20%を占める大消費国のため、中国に次ぐ世界第2位の原油輸入国でもある。
 米国は輸出産業といえば兵器以外に碌な製品はなく、消費大国に成り下がっている。かつては先端技術製品で世界を席巻していたが、IBMですらPC部門は中国企業に売り渡している。

 米国が再び世界の超大国として君臨出来るようになるのか、というとその答えはノーだ。現在の米国の最大の輸出は「ドル」だ。基軸通貨たるドルの発行により、米国は世界の大国として君臨しているに過ぎない。
 つまり基軸通貨たる「ドル」を信認して使用している国々によって米国は生かされている。その現実こそ米国は理解すべきだ。

 米国はエネルギーがぶ飲み社会を変革しなければ持続できなくなるだろう。既に米国社会の貧困化は深刻な段階になっている。分厚い中間層が貧困化し、ラスベルト地帯を形成している。
 それは製造業の衰退だ。ウォールストリートの投機家たちがグローバル化を世界に推し進めたため、米国の投機家たちはより良い投機先を求めて世界を物色している。米国の投機家資金が米国内に回らなくなっている。それでは米国の製造業が衰退するのも道理だ。

 その道を日本も歩もうとしている。いや既に日本も中間層の貧困化は深刻になっている。企業経営者が国内投資よりも「焼き畑経営」を中国や東南アジアに展開して、国内投資を蔑ろにしている。
 グローバル化に基づく国際分業論は愚かな経営者の理論だ。それは短期最大利益をもたらすかも知れないが、決して日本国民の利益にならないし、ひいては日本の国益にもならない。

 米国は原油価格が60ドルを超えてシェール原油が採算ベースに乗っている。シェール原油の増産が久しぶりに米国経済を牽引している。ただ自国で原油がぶ飲みエネルギー政策を転換しない限り、米国は唯一の世界戦略「ドル」の信任を貶め続けることになる。
 ドル基軸通貨の神通力を背景とした国際投機家たちが米国内産業育成という本来の使命に立ち返らない限り、米国の没落は止まらない。しかし貪欲なハゲ鷹たちを正気に戻すことは可能なのだろうか。

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