トランプ氏の自国第一主義は企業利益と国民所得の乖離をもたらすだけだ。

トランプ米大統領の22日のツイッターへの投稿が、世界の自動車業界に衝撃を与えた。
「もし欧州連合(EU)が米国にかけてきた関税や貿易障壁をすぐに取り除かないなら、米国に入ってくるすべての車に20%の関税をかける。米国で生産しろ!」
 トランプ氏の投稿は、米国による鉄鋼とアルミニウムの輸入制限に対し、EUが発動した米国製品への報復措置に反発したものだ。
 「驚いた。日本に対する関税上乗せも、本気だと思わないといけない」
 日本の自動車大手の関係者は23日、日本車にも関税引き上げが波及することを予感した。
 トランプ氏は5月、米通商拡大法232条に基づき、輸入車に新たな関税を課す措置に向け、商務省に調査を指示したと発表していた。現在の乗用車の関税は2・5%だが、最大で25%まで上乗せするとみられている。発動した場合、「輸入車の価格競争力がなくなり、事実上、商売にならなくなる」(大手自動車)との声もある>(以上「読売新聞」より引用)

 大幅関税引き上げが嫌なら米国内で生産しろ、とは自由貿易体制を揺るがす挑発的な発言だ。トランプ氏がそう言うのなら、日本へ輸出する米国債の穀物は日本国内で生産しろ、と言い返すしかない。
 それがどんなに荒唐無稽な発言か、考えればすぐに解かることだ。貿易とは自国で生産した物品を他国へ販売することであって、他国で販売する物品はすべてその国で生産しなければならない、というのは貿易そのものを否定することだ。

 もちろん物品の輸入はその物品の生産国の労働費と原材料費と企業利益を合計した価格で購入することであり、輸入国内の雇用を輸出国へ移転することだ。それが輸入国内の雇用を奪うから不都合だというのなら、そもそも貿易そのものが成り立たない。
 しかし日本や欧州の自動車産業は充分に米国の言い分を聞いて、米国内で販売する自動車の多くを米国内生産に切り替えてきた。それが協調的な国際関係のあり方だが、トランプ氏はそうした各国間の長期間の交渉で積み上げてきた「協調関係」を一気に崩そうとしている。

 米国内で販売する自動車を米国内で生産する、というのは一見筋が通っているようだが、それは自由貿易体制の否定だ。たとえば日本国内で生産するトヨタは日本国内の労働者に賃金を支払い、利益に課される法人税を日本政府に支払う。しかし米国のトヨタは米国民を雇用し、米国の法人税を支払う。確かに米国のトヨタは米国で自動車を販売して利益を上げるだろうが、それが日本政府や日本国民とどれほど関係があるというのだろうか。
 それは企業利益と国民所得の乖離をもたらすだけだ。つまり国際分業というグローバル化の一つの形態に過ぎない。トランプ氏が輸入物品に何%の関税を課すかは米国の関税自主権だ。しかしそれが懲罰的な段階の高税率に設定してあって、それが嫌なら米国内で生産しろ、というのは貿易政策とはいわない。

 人類は二度にわたる大戦を経て、各国・民族が「協調的」にならなければならないと学習した。過度なナショナリズムや自国主義は戦争の火種になる、との反省からWTO体制が創設された。
 しかしトランプ氏は現代国際社会で許容される「自国第一主義」と先の大戦を招いた「自国優先主義」との区別がつかないようだ。だが、米国大統領をそれほど傲岸不遜にさせた責任の一端は日本国民にもある。

 なぜなら先の大戦で日本は日本の言い分を国際的な場で封印してきた。米国が日本に開戦を迫っていかに悪辣に仕掛けた戦争だったか、を日本は一切批判して来なかった。そして米国が当時の国際戦争法に違反する非戦闘員の大虐殺を目的とした都市部への焼夷弾に大量投下や原爆投下に関しても「二度と過ちは繰り返しません」といった意味不明な碑文を書いて非戦闘員大虐殺の責任の所在を誤魔化してきた。
 その結果として米国民の多くは「正義の戦争を戦った保安官だ」と自国の行為を勘違いした。だから邪悪なインディアンをかつてゲームのようにして600万人も虐殺したように、日本兵はもとより日本人非戦闘員も虐殺してかまわない、と自己正当化してきた。

 それは中国やロシアに対しても同様だ。世界に軍事的緊張をもたらしている国々は先の大戦の成功体験から抜け出ていない。戦争に勝ちさえすればいかなる手段を講じようと、国際的な非難も懲罰も受けない、という成功体験を学習した。その成功体験を共有する三ヶ国は国連の安保理常任理事国「戦勝国クラブ」のメンバーとして戦後既得権益を調整し利益を分け合ってきた。
 トランプ氏の思考回路は先の大戦の成功体験から抜け出ていないようだ。米国がどんな仕打ちをしようが日本のアベは従属して来るし、欧州諸国も同様だと勘違いしている。誇りも歴史もある欧州諸国が国家として高々300年ほどの歴史しかない若造の横暴に、いつまでも忍耐していると思ったら大間違いだ。

 明文化されただけでも1700年もの連綿と続く国家としての歴史を有する日本には世界秩序に叡智をもたらす責任がある。帝国主義や植民地主義が常識の時代にあっても、日本は一度も他国を植民地化していないし、奴隷として使役していない。そうした誇りある国家として、日本は発言すべきだ。傲岸不遜なトランプ氏を躾けるべきだ。
 朝鮮半島での有事は許さないし、日本国民は一人として朝鮮半島の有事に加担しない、と態度表明すべきだ。そして朝鮮半島から米軍が撤退するのは地政学的に当然だし、日本からも撤退すべきと日本政府は要求すべきだ。アジアの平和に米国やロシアが嘴を挟む必要はない。民族自主権を謳ったのは米国大統領ではなかったか。そうした叡智ある米国大統領がいたことをトランプ氏は知るべきだ。

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