昔と今の季節感の相違は。
運動会で湯掻いた栗を食べていた、という話をすると今の人は信じない。なぜなら今の小学校の運動会は春に行われるところも多く、秋に行われるところも9月の内に終わるからだ。
昔(昭和30年代)は小学校の運動会は多くは10月に行われていた。朝体育着で肌寒さに震えながら登校した記憶がある。しかし日中の日差しの中では汗ばむほどで、時期は10月下旬といったところだったのだろうか。
栗の記憶だが、昔の甘い食物の代表が栗だった。だから江戸時代に薩摩芋を「八里半」といって、栗(九里)には及ばないが、それに近いほど甘いという意味だった。
現在でもカボチャの品種に「クリマサル」というのがある。おそらく栗よりも甘い、という意味だろう。栗の炊き込みご飯が珍重されたり、和菓子に栗金団があったりするのも栗の甘さに魅了されたからなのだろう。
運動会の昼食時間に運動場の周囲に場所取りした親の茣蓙へ行って、母親の作った弁当を食べ、栗を剥いてもらって食べた強烈な記憶がある。その母もとうの昔に鬼籍に入っているが、記憶の中の母は若い。
栗を見て手に取り、昔の記憶が瞬時に甦った。ただ運動会で栗を食べたというと、若い者は「天津甘栗」かと聞く。私たちの幼少期にそうしたものはなかった。普通の栗だというと季節がおかしくないかと指摘されたので調べたら、やはり昔の運動会は10月から11月にかけて実施されていたという。