中国経済崩壊はまやかしで、いつまでも崩壊しないのか。

��「世界第2位の経済大国を自称するが、統計はごまかしが横行している。実際のGDPははるかに少ない」「軍事費や治安維持費が右肩上がりに増えており、高成長を維持できなければ国家が破綻する」「中国の暴動・ストライキの数は年10万件超。成長率が下がれば国が持たない」「不動産バブルは既に限界」......といった個々の事象を基に、中国経済が立ちゆかなくなると結論付けるのが一般的だ。

05年の反日デモ、08年の中国製冷凍ギョーザ中毒事件、10年の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件、12年の日本政府による尖閣国有化に伴う反日デモと、日中間で衝突が起きるたびに中国崩壊本は出版されてきた。

曲がり角を迎えている最大の理由は、10年以上前からオオカミ少年のように「間もなく崩壊する」と言い続けたのに中国経済が一向に崩壊しないからだ。「崩壊詐欺」とも批判を浴びている。

そして、本の売れ行き自体も低調になった。「あの手の本には一定の支持層がいるが、大きく売り上げを伸ばすためには中国との『事件』が必要」と、中国崩壊本を何冊も手掛けてきた日本人編集者は言う。「現在、日中関係は安定しているので、ある程度は売れるもののそれ以上の大きな伸びは見込めなくなった」

このような本が売れた背景には、日本社会の変化がある。00年代以降、排外主義的な傾向が強まり、「ネトウヨ」と呼ばれるネット右翼が台頭。ナショナリズムによりどころを求める風潮も広がった。

しかし中国崩壊本を買っていたのは彼らだけではない。ネトウヨ層の中核は実は40代とされるが、彼らは主にネットを利用し紙媒体とは隔絶した空間に生きている。出版社によれば、崩壊本の主要読者層は60代前後。著名作家の本は確実に1万部は売れる。

出版不況の中、一定数が売れるので書店も販売スペースを確保し、平積みして陳列する。日中間でトラブルや事件が起きたときに「中国のことを知りたい」と書店に訪れた一般読者が、大々的に並ぶ中国崩壊本を手に取る――というサイクルが成立してきた。

こういった本には制作コストの安さというメリットもある。多くの場合、経費をかけた現地取材をすることなく、中国国外で活動する反共産党の中国語メディアの記事をネタに複数の中国ウオッチャーが対談。それを書き起こした内容を編集して書籍化されている。

例えばよく使われる「中国の治安維持費は国防費をしのぎ、経済成長率を上回るペースで毎年増加している。治安維持費の増加に中国経済は耐えられない」というネタは、もともと香港紙が14年頃に取り上げ始めた。11年に中国政府の「公共安全支出」が国防費を上回ったことが、「治安維持費と国防費が逆転、外敵よりも人民を敵視する中国政府」という文脈で広まった。

しかし、公共安全支出は警察、武装警察、司法、密輸警察などの支出の合計。密輸監視を治安維持費と呼ぶべきかどうか疑問が残る。また警察関連が公共安全支出の約半分を占めているが、16年は4621億元(約7兆8600億円)と対GDP比で0.62%にすぎない。ちなみに日本の警察庁予算と都道府県警察予算の合計は3兆6214億円、対GDPで0.67%だ。

<中国のGDPは公表値以上?>

中国の経済統計が捏造されているとの指摘も定番だ。ただ統計制度の未成熟ゆえ、逆にGDPを過小評価している可能性もある。公式統計に把握されない地下経済はどの国にもあるが、制度が未成熟な途上国ほど規模は大きくなる。中国の地下経済規模は先進国以上とみられ、これを加算したGDP規模は統計を大きく上回るかもしれない。

論理的に統計の矛盾を突き、崩壊論を導こうとする著者もいる。経済評論家の上念司は『習近平が隠す本当は世界3位の中国経済』(講談社)の中で、輸入量と実質経済成長率の相関が不自然な点から、中国の統計は捏造であり、そのGDPは今でも日本以下だと主張する。これに対し、神戸大学経済学部の梶谷懐教授は「実質経済成長率を算出するためのデフレーター(物価指数)が不正確なことに起因している。ごまかしではない」と批判する。

崩壊本も代わり映えのしない内容の繰り返しではさすがに飽きられるように思えるが、それは大きな間違いだ。

嫌韓・反中のネット掲示板では、日々似たような情報が繰り返し論じられる。議論や新たな情報の収集が目的ではなく、ただひたすらに会話を途切れさせないこと、コミュニケーションを続けることが目的化している――と、社会学者の北田暁大は著書『嗤う日本の「ナショナリズム」』(NHK出版)で指摘する。中国崩壊本も同じことで、読者にとって新しい情報や議論はむしろ邪魔かもしれない。

出版不況で書籍も雑誌も発行部数は激減している。新書の場合、20年前は初版2万部が当たり前だったが、現在では1万部ならいいほうだ。売り上げが減れば制作費を削らざるを得ない。中国崩壊本は、書き下ろしより短期間・低コストで作ることができる対談本が多数を占める。

一定数の売り上げが見込め、かつ制作コストも安い中国崩壊本は出版社にとってありがたい存在だ。「物書き」たちもひたすら高潔であろうとすれば、自著の出版は永遠にできない。

「少し過激なタイトルを付けることで、それなりにしっかりした内容の本が出せるのなら、必要悪だと割り切っている」と、前述の編集者は言う。「日本で海外事情を紹介する本は全く売れなくなった。海外関連の本を出さないと割り切る選択肢もある。ただ、日本人には海外に関する知識を身に付けることが必要ではないか」。「羊頭狗肉」ならぬ「狗頭羊肉」の戦略といえるかもしれない。

<あと一歩で「反中本」作家に>

中国崩壊本に優れた内容が隠れているケースもある。その好例が在米中国人ジャーナリスト陳破空(チェン・ポーコン)の『赤い中国消滅~張子の虎の内幕~』(扶桑社)だろう。これぞ崩壊本というタイトルだが、同書の前半は著者が89年の民主化学生運動に参加し、弾圧されて亡命するまでの半生を描いた自伝。香港経由での国外逃亡ルートの実態をはじめ、亡命を勧めた公安当局者の話など知られていない内容が盛りだくさんだ。後半は現代中国の分析だが、「消滅」をあおるような記述はない。

ハイレベルで学術的な「中国崩壊」論争も存在する。東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授と神戸大学の梶谷は共著『超大国・中国のゆくえ4 経済大国化の軋みとインパクト』(東京大学出版会)の中で、元経済産業省官僚の津上俊哉が書いた『中国台頭の終焉』(日本経済新聞出版社)を批判した。

津上は中国経済の専門家で、安易な崩壊論に与する筆者ではない。丸川と梶谷も津上の分析力を認めつつ、「中国の潜在成長率の積算根拠」「投資過剰による成長行き詰まりがもたらすマイナス要素の大きさ」「人口予測の妥当性」といった、一般読者には理解が難しい専門的な部分に議論を集中して津上の「崩壊論」を批判した。

津上と梶谷はその後もブログで議論を続けたが、一連のやりとりで明らかになったのは中国経済予測の困難さだ。知識が豊富な専門家でも、公式統計や報道が未成熟で、かつ急激に成長と変化を続ける中国経済の正確な予測は難しい。また、専門的な議論は一般読者にはとっつきにくい。その隙間にうまく入り込んだのが、手軽に制作できて読みやすい崩壊本なのだろう。

私はこれまで中国崩壊本は書いたことがない。しかし、共著本の題名を『なぜ中国人は愚民なのか』に変えられ、反中本作家の仲間入りする寸前の経験をしたことはある。

「中国を知りたい」という一般読者がこうした崩壊本を手に取れる状況が続けば、中国に対する正確な理解や分析はいつまでたっても日本社会に広がらない。最近は崩壊本の売れ行きが低迷するなか、過大評価と過小評価のどちらにも振れない客観的な本が出版されるようになってきたが、まだその動きは心もとない。

中国本の売れ筋が変われば、日本の対中認識も変わる。正確な中国認識は日本の「国益」にほかならない。この転換が実現できるのか。書き手と出版社、そして読者も試されている>(以上「News Week」より引用)

 確かに「中国崩壊」を予言する著書は氾濫している。中には間もなく習近平氏は失脚する、と断定する著書まで存在する。
 しかし現実は先の全中会を見ても習近平氏の権力掌握は少しも崩れていないし、むしろ毛沢東に並ぶ権力者の象徴たる「習時代」という格付けすら行おうとしている。中共政府の権力が益々習氏一身に集中しているかのようだ。

 しかし同時に全中会が開催された北京の治安を維持するために大量の治安部隊が北京全市の辻々に溢れていたことも見逃してはならない。確実に中国の治安は悪化している。
 確かに中国の失業率は政府発表では2%台と経済が好調のように見える。だが中国の統計は当てにならない。失業率に勘定されているのは都市人民で「農民工」は排除されていることを知らなければならない。現状で800万人の失業者が都市部に溢れている。

 しかも賃金上昇によるコストアップで中国はインフレに見舞われている。中国民は「元」を信用してはいないから金や「ビットコイン」など手持ち現金を変えている。もちろん銀行などへ預金しない。なぜなら一日に引き出せる預金が厳しく制限されているからだ。
 私も中国経済崩壊論者の一人だ。中国政府が国際的に非常識な外貨持ち出しを厳しく制限しているのが何よりの証拠だ。外需依存経済の中国で外貨が不足しているのは致命的だ。

 中国経済は外需で成り立っている。貿易がGDPに占める割合は26%を越えている。その貿易の実に50%を外国企業が占めている。つまり貿易による利益は外国資本に持って行かれることになる。
 中国経済が世界第二位というのは外国企業によるところが大きく、しかも中国企業の実態はその多くが「組立工場」に過ぎず精密部品の多くを日本などからの輸入に頼っている。莫大な貿易輸出は莫大な海外資本と膨大な部品輸入に頼っているのが現実だ。

 そうした外国資本頼りの中国から外国資本が相次いで撤退している。日本企業だけを見ても最盛期には六万社も進出していたが、今では二万社ほどでしかない。その大きな原因は中国の労働賃金の上昇とさらなる賃上げを求める労働争議の頻発に嫌気を差してのことだ。
 中共政府は慌てて都市部に溢れる「農民工」を出身農村地域へ戻すべく地方の工業拠点づくりに力を入れようとしている。しかし時既に遅しだ。中共政府にそうした経済余力はないし、中国企業も溢れ返っている過剰生産物資が企業収支を悪化させ、その売り捌きに苦労している。例えば自動車にしても100社を超える自動車生産企業が中国にあって、年間生産台数が5000台と、中国国内需要の2倍以上で過剰生産に陥ったままだ。

 過剰生産もGDPにカウントされる。中国の各地に出現している鬼城と呼ばれるゴーストタウンもGDPにカウントされた名残だ。採算度外視で高速に鉄道網を広げている「高速鉄道」もGDPにカウントされる。
 しかしGDP礼賛経済体制も既に限界点を越えた。後は崩壊あるのみだ、というのが中国経済を注視している者の一致した見方だ。別に中国経済崩壊を願っているわけではない。現状分析から未来を経済予測すると「そうなる」という結論が出ているに過ぎない。

 習近平氏の独裁体制強化が着々と進んでいるのは国内治安の悪化と無関係ではないだろう。国内治安維持のための予算が国防予算を越えようとしているのも事実で、中共政府は内外の二面の闘いに備えざるを得ない状況に到っている。
 今後は中国のインフレ率と農民工も含めた失業率に注視しなければならない。中共政府は転覆寸前の船のバランスを必死で取っているが、それもそう長くは続かないだろう。統計数字は誤魔化せても、中国人民の空腹は誤魔化せない。


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