国会議員の劣化は国会内の書店に表れている。

<洋品店や理容店などが立ち並ぶ参議院の地下。入構には厳重なチェックがあるため、通路を行き交う人々はみな、スーツの襟に身分を示す各種の記章を付けた関係者ばかりだ。外界から隔絶され、昭和の雰囲気も残す売店区画の一角に、五車堂書房はある。

 約60平方メートルとさほど広くない店内には、政治をはじめ外交、安全保障や経済、法律など社会科学系を中心に約1万冊が並ぶ。新刊ハードカバーのほか、岩波文庫や中公新書をはじめとする各社の文庫、新書の棚もそれなりのスペースを占める。雑誌コーナーもあるがその面積は小さく、街の一般書店とは少し違った雰囲気だ。



 この店を毎朝7時に開け、入り口のそばに置かれた机に座って客を出迎えるのが、名物店主の幡場さんだ。



 「昔は政治や経済、法律の専門書がたくさん売れたし、もっと本をぎっしり置いてあったの。でもいまはだいぶ減ったね。いい本を置いても売れないもの。特に古典だとかはね」



 開口一番、厳しい言葉が飛び出した。国会内に出店して半世紀。幡場さんは誰に対しても歯にきぬ着せぬ直言と、「いい本」をそろえる“選書眼”で、政治家や官僚らの信頼を集めてきた。



 平場に積まれた本からは、永田町の住人たちの現在の関心事が伺える。



 「3月に入ってからは『米中もし戦わば』(ピーター・ナヴァロ著、文芸春秋)」が売れているね。経済だと『ダーク・マネー』(ジェイン・メイヤー著、東洋経済新報社)もよく出ている」



 ここ2カ月ほどでのベストセラー上位は、「サボる政治」(坂本英二著、日本経済新聞出版社)、「国家の矛盾」(高村正彦・三浦瑠麗著、新潮新書)、「警察手帳」(古野まほろ著、新潮新書)、「戦後日韓関係史」(李鍾元ら著、有斐閣)など。雑誌では「中央公論」が最近好調。評論では上念司氏、三橋貴明氏の著作がよく売れているという。



 国会議員の関心は流動的で、これを置いておけばいいという特定のジャンルはない。だから、国会での議論を先取りして本を仕入れる選書眼が重要になる。



 「売れ筋はどんどん変わるんだよ。少し前なら憲法問題、その前はTPP、原発…。フルにいろいろなことを知っていないと、ここ(国会)じゃ通用しないわけよ。法律も、原発も、防衛問題も、という具合にね。最近は、『俺は部門違いだから…』なんて言って専門外の本は読まないやつが多くなったけど、それじゃダメなんだ。昔は全部の部会に出ている先生がいたんだよ」



 もともと五車堂書房は、幡場さんの父親が東京・神保町で創業した。国会内に店を構えたのは1967年のこと。当時は国会に書店がなく、議員にとって不便だったため、参院事務局のほうから出店を持ちかけられたのがきっかけだった。神保町の“本店”はすでに閉店し、今は国会内の店だけが残る。



 店名は「荘子」の「恵施多方其書五車」に由来する。「(中国の戦国時代の政治家)恵施(けいし)は多芸多才で、その蔵書は車5台分にも及んだ」という意味。それゆえか、本に金を使わない人間は大成しないというのが幡場さんの持論だ。本を読まない政治家に対する批評は手厳しい。



 「昔買いに来てくれた人も、えらくなるとだんだん勉強しなくなるんだな。よく総理大臣が、本屋を貸し切りにして買い物をしたという報道があるでしょう。それでいくら本を買ったかと聞くと、4千円だとかいう。冗談じゃない、桁が違うだろ。一般人じゃないんだから。400万円でもいいぐらいだ」



 「議員の名簿を見るでしょう。すると趣味はたいがい『読書』。7割くらいはそう書いている。でも最近何読んだのかと聞いてみたら、週刊誌だって。読書ってのは、書籍のことを言うんですよ」



 「当選後の第一声で『これから勉強します』なんて言うやつがいる。これから勉強されても困るんだよ。税金で年収2千万円以上もらうんでしょ。勉強してから来いよ」



 では今の政治家で、読書家はいないのか。



 「そりゃ細田博之(自民党総務会長)さんでしょ。毎朝来てくれる。お父さん(細田吉蔵元運輸相)も大変な読書家だったからね。昔の政治家は教養人がたくさんいたんだよ。大平(正芳元首相)さんとか、前尾(繁三郎元衆院議長)さんとかね。いまはダメだねえ」



 最近の政治家の教養低下に対する幡場さんの嘆きは止まらない。読書離れは与野党共通の現象で、特に近年の傾向としては、自分で専門書を読んで研究する議員が減っているとか。



 「あと古典を読まないのが困るね。古典は基本なんですよ。他の先進国でも、ギリシャ、ローマの古典は教養の基礎でしょう。日本の場合はやはり中国古典ですよ。ほら、そこに『全訳為政三部書』(張養浩著、安岡正篤訳、明徳出版社)なんて置いてあるけど、売れないんだよねえ」



 よく見れば、雑誌コーナーの片隅にはひっそりと成人向け雑誌も…。



 「こういうのは議員本人じゃなくて、秘書に買いに来させるんだ。でも変な店でお金を使うよりは、こういう本を買ったほうがずっといいよ。そういう部分もなければ人間偏るんだ」



 近年では政界でもインターネットを通じた情報摂取が進み、読書は退潮傾向という。しかし幡場さんが見るところ、優秀な政治家はやはり多くの本を読んでいる。「とにかく、本は絶対読んだほうが得ですよ。これは本屋だから言っているんじゃないよ」



 国会とともに半世紀。多くの議員の成長を見守ってきた“五車堂のおやじ”の実体験に基づく「とにかく本を読め」という言には、重みを感じた>(以上「産経新聞」より引用)



 

 国会書店の話は現代日本政治理念のなさを如実に表している。政治家が本を読まない、というのは深刻な問題だ。読書は「疑似体験」といわれるからだ。

 人の一生は時間が限られているだけでなく、人と出会う機会も限られている。現代に生まれた我々は孔子と邂逅する機会はない。


 しかし読書によりその書物を記述した人物の本質に触れることが出来る。そして「古典」には歴史という風雪に耐えた「真実」が必ず存在する。それだけ「古典」には存在意義がある。

 読書により我々は過去に生きた人物の実像に近づくことが出来る。東西一流の人物の宝庫が「古典」だ。多少小難しく難解な表現も多いところが古典の良いところだ。考える力を涵養できるからだ。頭は帽子を載せる台ではなく、考えるという作業を行う「自我」の場だ。


 自分とは何者なのか、という問いかけは重要だ。生涯にわたって自らに問い続ける永遠の課題だが、そうした観念を持てるのも読書をして「考える力」を鍛錬すればこそだ。

 人は生涯が自分探しの旅だ。ついに「自分とはこの程度の人物だ」と諦観するのは自分との妥協でしかない。


 政治を志す者は自分の立ち位置を明確にしておく必要がある。政治は自分に対してではなく、他人に対して地方や国家の仕組みを考える特殊な仕事だからだ。

 特に国家の仕組みに関わる国会議員は自分を空しくして他人のことを、とりわけ弱者に心を寄せる者でなければならない。強者に対してはむしろ力を削ぐ仕組みが必要だ。そうしなければ格差が拡大するばかりだ。


 安倍氏の信奉する「自由貿易」は強者の理論だ。強者の力を矯めるのではなく、彼らの力を存分に発揮させて、弱者から限りなく奪い取るのを是認し助長する仕組みだ。

 そうしたことも解らないのは安倍氏の読書量が決定的に不足している証拠なのだろう。その安倍氏が戦後歴代三位の長期政権になったという。この国の劣化はどこまで進むのだろうか。



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