引きこも54万人を社会復帰させよう
10年の前回調査に比べ約15万人減ったが、依然として50万人を超える高水準。ひきこもりの期間は「7年以上」が約35%と最も多く、35歳以上が倍増するなど「長期化・高年齢化」の傾向が顕著になった。40歳以上を含めたより詳細な実態把握が必要だ。
内閣府は「ひきこもりの人への支援がある程度効いたのではないか」としている。
調査は15年12月に実施。15〜39歳の人がいる5000世帯を調査員が訪問し、本人や家族から外出の頻度、ひきこもりになった年齢ときっかけ、ひきこもりの期間などを聞いた。
ひきこもりになった年齢は35〜39歳が10・2%で前回調査から倍増。20〜24歳も34・7%で、約13ポイント上がった。ひきこもりになったきっかけは「不登校」とともに「職場になじめなかった」が最も多く、就職や職場での人間関係に悩んでいる実態が浮かんだ。
ひきこもりの期間は「7年以上」が34・7%でトップ。3〜7年も40・8%を占め、長期化が進んでいる。
前回調査では、ひきこもりの人は推計69万6000人だった。
若者支援や雇用状況の改善がひきこもりの減少につながった可能性はあるが、内閣府の対象は39歳までで、より実態に即した方法による調査も必要だ。当事者や、家族の支援に携わる中で、最初の2年を過ぎると、諦めの気持ちが強くなり、長期化する傾向がある。早期解決が大事だ。ひきこもりの人は医療や福祉、教育などの支援のはざまに落ちてしまっており、ひとくくりにはできない。単なる就労の問題と誤解されやすいが、働く前に元気になる必要がある。誰でも社会とつながることができる居場所が求められる>(以上「毎日新聞」より引用)
労働人口の急激な減少が続く中、54万人もの「引きこもり」がいること自体が驚きだ。なぜ社会と隔絶して一度しかない人生をあたら無駄に過ごしてしまうのだろうか。
若者は確かに様々なことに傷つき易いが、同時に挫折から立ち直るしなやかさも併せ持っているものだ。そのしなやかさがない若者が増えているとしたら、何が若者からしなやかさを奪ったのだろうか。
確かに社会は一面「競争社会」だ。競争というからには一定の「競技」で力を競う。しかし「競技」で力を競うに過ぎないのだから、それで負けたとしても人格の全否定ではない。が、学校社会しか知らない者にとって、学校社会で否定されたら立ち直れないほどの衝撃を受けるのも想像できる。
しかしたかが「学校社会」での出来事だ、という割り切りが子供本人もさることながら、親にも出来ないとしたら、それが「引きこもり」の原因になりうるだろう。
人間国宝と称される人たちを見れば解ることだが、人の価値は学業だけで決まるものではない。もちろん社会での出世や栄達だけがすべてではない。
人が活躍する場所は多方面に各種多様な分野がある。引きこもっていては何も解らない。まずは家を出て、社会の一員として他人と繋がる場所を提供する必要がある。そうした場合、現実社会では「金銭」が必要となる。つまり誰かのサービスを買って居場所を確保する、たとえば喫茶店とかゲームセンターとか碁会所とかテーマパークとか、という商取引の一面でしかない。
しかしそれでも引きこもりが社会との接触を持てるとしたら、行政は「引きこもり」をテーマパークへ連れ出すことも必要ではないだろうか。あるいはゲームセンターへ連れ出して、ゲームをやるだけでなく、機器のメンテナンスの手伝いとか、ゲームセンターの掃除とか、そうした活動の場を提供するのも必要ではないだろうか。
そうしてことが契機となって「引きこもり」が社会復帰していけるなら54万人もの個々の家庭のお荷物が解消されて、労働戦力として活躍するようになれば日本社会全体としてプラスは計り知れない。不登校になった子供たちを無理やり登校させるだけが解決策ではない。人の多様な生き方を受け入れる多様な社会のあり方を日本の社会は容認すべきだ。
引きこもりの対策をカウンセラー任せにして、引きこもりの面接が10人に一人程度しか進まないのはカウンセラーが足りないからだ、というのは説得力に欠ける。不登校児を登校させることだけが解決策ではない、という多様な解決策を「引きこもり」当人と一緒になって考える相談役なら定年退職者でも勤まるだろう。
多様な人材活用も受け入れる社会であるべきだ。老人もまた「引きこもり」状態になっていることを忘れてはならない。