世界各国それぞれの主権を尊重すべき。
今回は、高関税などで国内産業を守る保護主義的な政策を掲げるトランプ大統領就任後初めての開催で、「反保護主義」を打ち出せるかが焦点だった。
共同声明では、昨年の声明にあった「あらゆる形態の保護主義に対抗する」という文章が削られ、代わりに「世界経済への貿易の貢献を高めるよう取り組む」という表現に弱まった。
さらに、「過度の世界的な不均衡を縮小し、さらなる包摂性と公正さを高め、格差を縮小するために努力する」とも明記。日本や中国、ドイツなどの貿易黒字を減らし、米国の貿易赤字を削減するため、自国にとって有利となる貿易関係をめざすトランプ政権の主張に沿う内容となった>(以上「朝日新聞」より引用)
ドイツ首相メリケル氏は自国で開催されたG20でグローバル化を打ち出したかったが、自国内ですら反・グローバル化の動きが台頭し、英国や米国で反・グローバル化の動きが顕在化してそれに同調せざるを得なかったようだ。
しかし、だからといって直ちにG20の存在意義が問われかねないとは思わない。「世界は一つ」というのと世界各国の関税撤廃というのとは別問題だ。それぞれの国が「自国第一主義」で国内政治を行うのは当然のことで、その各国の利害が激しく衝突して再び世界に緊張をもたらさないように各国代表が集まって協議・調整するのは悪いことではない。
ただ超大国がどらえもんのジャイアンとなって横暴を極める、というのは歓迎できない。トランプ氏が米国の貿易赤字を問題にするのは理解できるが、赤字が積みあがっている原因の一端が自国内にあることも理解すべきだ。
米国内で企業利益を追求するあまり、国内企業が陸続と労働単価の安い近隣諸国へ移転したのが大きな原因だ。現にフォードもメキシコに工場を移転させようとしてトランプ氏の逆鱗に触れたばかりではないか。フォード以前に米国内から世界各国へ企業移転させた米国企業は数知れない。そうした自国内の産業モデルがあることも理解すべきではないだろうか。
それは米国だけの問題ではない。同様に日本の対中貿易赤字も生産拠点を日本国内から中国へ移転させた企業による逆輸入も大きな原因の一つだ。中国へ資本投資すべきと音頭を取った売国経済評論家たちは中国を経済成長させたが、同時に中国を軍事大国にも育て上げた。
各国の経済力と軍事力が比例するのは現代世界文明が未熟な証だ。経済力が国民の暮らしを豊かにする政策の原動力に使われるのが本来のあり方だが、そうした政治本来の指向を捻じ曲げる力が常に働いている。それは権力者の自己顕示欲であったり、権勢欲であったりする。決して褒められた欲望ではないが、人はそうした現世欲から離れられない存在のようだ。
それならせめても各国が各国の文化や慣習を重んじて仲良く併存する方向を模索するしかない。驕れる者は矯め、貧しき者は助け合い、それぞれの国が世界の一員として存続するように叡智を集める会議にすべきだ。
トランプ氏が中国や日本やドイツに貿易赤字の削減を強制するよりも、米国内で出来る政策から実施すべきだ。まずは米国の多国籍企業を国内へ回帰させる政策が必要だろう。貿易赤字の解決を他国に求めるより、まずは米国で出来ることから実施すべきだ。