分断され深刻な軋轢に直面する米国社会。

<米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ候補が勝利を決めてからの5日間で、400件以上のマイノリティ層に対する「憎悪や差別による嫌がらせ及び脅迫」があったと南部貧困法律センターは記録している。

米国におけるヘイトスピーチを監視する同センターは、ニュース記事や直接報告、ソーシャルメディア上の報告をもとに、こうした事件の多くは「トランプ氏の選挙運動と、そのスローガンへの直接的な言及を伴っていた」と指摘する。

他の人権団体も、ムスリム(イスラム教徒)や黒人、ラテン系住民、ユダヤ人、同性愛者、移民などのマイノリティを狙った暴言や暴力が、投票日翌日の11月9日以降全国で多発していると報告。明らかに、ヘイトクライム(憎悪犯罪)の急増は、トランプ氏とその陣営幹部によって、偏見や人種差別、同性愛者に対する嫌悪を公然と表現しても構わないと支持者の一部に思わせるような雰囲気が生み出されたことを示している。

攻撃の急増に最も悩まされているのが、ムスリムだ。トランプ氏が選挙運動のなかでイスラム教徒を批判対象として選んだことにその一因がある。米連邦捜査局(FBI)は14日、昨年ムスリムに対するヘイトクライム件数が過去10年以上で最多となったと発表した。

��BIによれば、2015年に報告されたモスクへの襲撃やムスリムに対するヘイトクライムは257件に上り、前年の154件に対して67%増となった。ムスリムを対象とする事件としては、記録を開始した2001年以来で最多である。2001年は、「9.11」同時多発攻撃の発生以降、480件以上のヘイトクライムが生じていた。

また、FBIによれば、ムスリム以外のグループに対するヘイトクライムも昨年増加している。ユダヤ人に対する事件は9%、黒人に対する犯罪は8%近く増えたという。

昨年ムスリムに対するヘイトクライムが増加したのは、米国など西側諸国で、市民を標的とした攻撃が発生し、過激派組織「イスラム国(IS)」や関連組織の支持者が犯行声明を出したこと、そして大統領選に向けた選挙運動のなかで攻撃的な論調が見られたためである。

トランプ氏とその支持者の一部の論調は、ムスリム系米国人や移民などのマイノリティ層は米国にとって危険というメッセージを送っていた。

トランプ氏がこうした攻撃を深刻な問題と認識しているかは分からない。だがこれまでのところトランプ氏は、彼の勝利に当然の危惧を抱くマイノリティ層に対する社会的包摂の推進や、こうした層への歩み寄りなど、実質的な動きをまったく見せてこなかった。

また彼は、選挙後のヘイトクライムに対しても形ばかりの非難しか行っていない。13日に行われたCBSのニュース番組「60ミニッツ」のインタビューでトランプ氏は、彼の支持者がムスリムなどのマイノリティに嫌がらせを行っているという報道について質問を受けた。彼の答えはこうだった。

「それを聞いてとても悲しい。『やめろ』と言いたい」

またトランプ氏は、早速着手した政権人事に対する懸念を打ち消してもいない。新政権がホワイトハウスの首席戦略官・上級顧問に起用するスティーブン・バノン氏は、白人至上主義者やネオナチの主張に対して共感を示す、いわゆる「オルタナ右翼」運動のリーダーだ。

米国の法執行部門のトップ幹部である司法長官には、アラバマ州選出のベテラン上院議員、ジェフ・セッションズ氏を選んでいる。セッションズ氏は移民改革に対する強硬な反対派であり、米議会は1986年に彼を連邦裁判官として承認することを拒んでいるが、その理由は、彼の人種差別的な言動に対する懸念だった。

さらにトランプ氏は、国家安全保障担当の大統領補佐官として、元国防情報局長のマイケル・フリン退役陸軍中将を指名した。フリン氏はイスラム教を「がん」にたとえ、「宗教を隠れ蓑にした」政治的イデオロギーだと主張するなど、煽動的な発言をした過去がある。2月にはフリン氏は「ムスリムに脅威を感じるのは当然」とツイートしている。

こうした攻撃的な発言をさらに補強しているのがトランプ氏だ。12月、カリフォルニア州サンバーナーディーノにおける乱射事件の後、トランプ氏は、米国指導者が「いったい何が起きているのか理解できるようになるまで」すべてのイスラム系移民や同訪問者に対する米入国禁止を要求して世界を驚かせた。

トランプ氏は大統領選に向けた運動のなかでも、法執行当局者がムスリム系米国人社会とモスクに対する監視を強化することを求めた。さらに彼は、ムスリム系米国人をデータベースに登録するか、ムスリムに対して特別な身分証明書の携帯を義務付けることを検討するとも語った。そうした措置が将来の攻撃を防ぐことになると主張したのである。

トランプ氏が次期大統領となった以上、多くのムスリム系米国人は、同氏や取り巻きがこうした提案のいくつかを実現するのではないかと危惧している。トランプ氏の顧問の1人、カール・ヒグビー氏は16日、フォックスニュースに出演し、ムスリムを対象に登録制度を設けるというトランプ氏の提案を擁護した>(以上「ロイター」より引用)

 非常に長い引用になったが上記記事をじっくりと読んで頂きたい。米国社会は多民族社会といわれるが、基本的には「白人社会」だ。つまり建国以前に主として英国から入植してきた清教徒たちが米国社会の基本になっている。
 そうした白人国家・米国が独立した当時の東部海岸線に貼りついた国土から、急速に西へと600万人もの先住民を大虐殺して領土を広げて行く過程で「人手不足」に陥った。南部の綿花プランテーションで働く労働者として一千万人に及ぶ「黒人奴隷」をアフリカから「輸入」した。

 さらにスペインの植民地だったメキシコと戦争をしてカリフォルニアを奪って米国領とし、広大な国土を擁す国家となった。しかし米国はそれでも人手不足だったため、労働移民を受け入れて「多民族国家」を形成した。
 それでも米国の基本は人口の過半数を占める白人だ。白人が「ご主人様」として他の有色人種たちを使役する社会的な構図はつい最近まで、1960年代のキング牧師たちの公民権運動の高まりと少数民族に対する「人権意識」の浸透により、米国社会は「差別」から「融和」へと変化したように見える。

 しかしまだ基本的には白人社会であることに変わりなかったようだ。トランプ氏が貧困層に落ちた白人たちに「自分たちの国を取り戻そう」と訴えて、過半数を占める白人の支持を得て大統領に当選した。
 しかし、それは米国だけの動きではない。先に英国がEUから離脱を決めたのは東欧から80万人も押し寄せた労働移民に対する白人社会の反発が原動力だった。移民を容認していたメルケル氏のドイツでも100万人を超える移民に驚いたドイツ国民も移民に制限を求める動きが強まりメルケル氏は支持を失って苦境に陥っている。

 グローバル化を推進してきた投機家や大企業家たちは国境の存在を彼らの最大利益を実現する障壁に過ぎないと見なしてきた。だから国境を越えた「ヒト、モノ、カネ」の自由な往来を実現しようと画策してきた。さらにそれぞれの地域や国家の社会制度や文化や慣習までもすべて破壊して、投機資金がスムーズに運用できる世界均一市場の出現を企んできた。
 しかし現実は人には彼が存在する地域社会があり、地域には彼らが尊重する言語や文化がある。彼らの「存在意義」を無視した地球規模での単一市場の出現を画策してきたグローバル化は30年間の動きの末に、基本的な「ヒト」としての「存在意義」の壁に突き当たった。

 何処へ行っても日本語が通用する日本という国家に暮らす日本国民にはあまり深刻には思われないかも知れないが、米国では英語を話さないヒスパニック社会が勢力を拡大している米国社会では少数民族に配慮してきた自分たちが、気が付けば社会の隅に追いやられようとしている現実に驚き怒りを覚えている。
 英国でも、ことにロンドンでは英語を話さない東欧移民が半数に迫る勢いで増加し、英国民は国を奪われる危機感を大げさではなく抱いている。国家・国民の最低限の存在条件は言語文化を共有していることだ。共通言語を有しなければ単一国家として社会や地域を維持していくことは困難だ。

 世界各国で行き過ぎたグローバル化に対する反動が起きている。日本でも安倍自公政権が実際に毎年20万人10年間の労働移民策を実施したなら、その労働移民の大半を占めることになる中国語しか通用しない中国人社会が日本の各地に出現して、日本国民と避けがたい軋轢を生むことになるだろう。
 軋轢程度で済まない事態も起こりうる。有権者の過半数を中国移民が占めたなら、その町は中国人の首長候補者が当選して、中国語を小学校で使用するように議会で決めるかも知れない。そうした事態に日本国民は耐えられるだろうか。

 人との付き合いに一定の則が存在するのは当たり前のことだ。人を家に招いても、夜が来ればお帰り頂く。軒を貸して母屋を取られることになっては元も子もない。
 白人の米国社会は危機感とともにそのように感じている。根源的な命題を突き付けたグローバル化が後退するのは避けられない。そうした思惟もなく、トランプ氏に翻意を促す、とTPP推進を強弁する安倍氏は愚かの一言に尽きる。米国社会が直面している深刻な事態を何もお解りでないようだ。


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