政府は核利用から核廃絶の技術確立へ転換すべきだ。

<政府が21日、原子力関係閣僚会議を開き、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について「廃炉を含め抜本的な見直し」を表明したことについて、地元からは不信や困惑の声が上がった。

 「もんじゅは研究開発のための原型炉。技術を確立させずに廃炉にしては後世にツケを残すだけで、何にもならない」。敦賀市の建具会社社長、堤利市さん(67)はこう憤った。

 もんじゅの廃炉が決まり、稼働可能な原発がゼロの状況に陥れば、地元経済の悪化や税収面への影響が懸念される。書店経営の石黒順二さん(71)は「廃炉にするなら地元の要望を反映した地域振興策を示してほしい」と訴えた。

 同市の渕上隆信市長は21日夜、市役所で報道陣に対し「日本を豊かにする核燃料サイクルを担っているという誇りを持って応援してきた。それが簡単に変わるのか強い怒りを感じる。地元の意見は何も聞いてもらえなかった」と、もんじゅの存続を強く要望。福井県議会も同日、「核燃料サイクルの推進には高速炉の研究開発は不可欠で、長期的視野に立ち、覚悟を持って取り組む必要がある」とする意見書を可決した。

 一方で「ほとんど動いた実績がないのに、1兆円超がつぎ込まれてきたのは異常。廃炉にかじを切るのは当然だ」(敦賀市の自営業男性)と突き放す声もあり、地元の複雑な事情がうかがわれる>(以上「産経新聞」より引用)

 プルサーマル計画と並んで高速増殖炉は核燃料サイクルの大きな柱とされてきた。しかし高速増殖炉『もんじゅ』はこの30年間の間に動いた期間は250日にも満たないものだった。
 いかに研究炉といえども研究データを取得する以前の問題で、停止せざるを得なかった。そして今回も検査の結果1万ヵ所を超える超える改良箇所が見つかって「高速増殖炉」そのものの実現性が問われていた。

 核利用の技術者でも研究者でもない私に核サイクルが理論的に可能だ、ということで始まった実験炉『もんじゅ』だが、実現性の極めて低い技術だったのかも知れない。その実現性の可能性が当初からどの程度のモノだったのか、蔵宿炉建設当時に可能性を議論する論評が日本のマスメディアに登場したことはない。
 日本の問題の一つはマスメディア報道の偏重にある。核燃料サイクルのもう一本の柱のプルサーマル計画も実現性に関してどの程度の可能性があるのか私たちは何も知らされていない。そして可能性が100%だとしても、実行した場合にどの程度の費用が掛かり、核燃料廃棄物がどの程度減少するのか、それともプルサーマルにより却って放射性廃棄物が増えるのか、私たちは詳細な検証・結果を知らされていない。

 原子力利用は複雑にして難解なブラックボックスとして国民には殆ど何も知らされていない。ただ原発は安価にして安心な核の平和利用だというしかマスメディアは報じてこなかった。
 そして福一原発事故が起こっても深刻な放射能汚染と被爆に関しては殆ど報道されてこなかった。だから国民の多くは「帰宅制限地域」以外は安全だとしか認識していないのではないだろうか。それは国家とマスメディアによる「騙し」でしかない。

 原発稼働により出来る毒性の高いプルトニュウムを核燃料として使用して原子崩壊させてプルトニュウム以外の放射性物質に変える、というのが高速増殖炉の謳い文句だった。核兵器の原料となるプルトニュウムが原子炉稼働により排出されて、日本には数千発分も溜まっているという。
 しかし生成されたプルトニュウムが何処でどのようにして溜められているのか国民の殆どは知らない。日本にプルトニュウムの最終処分場はないため、生成されたまま各原発の燃料プールにプールされている、と考えるのが順当な推測だ。つまり全国の原発の燃料プールに核兵器数千発分のプルトニュウムが放置されているのだ。

 30年間も試行錯誤して来て高速増殖炉は失敗だったとの結論を得た。その間かかった費用は1兆円に達した。廃炉として解体処分するとして、その費用は1兆円では収まらないだろう。その成果として日本が手にした『もんじゅ』から得たモノは何だろうか。
 30年前の論理と技術が現在も通用するかといえば答えは「ノー」だろう。つまり原子力の技術も理論も「先端」ではなく、時代遅れのローテクでしかない。原発製造技術にしても先端極秘技術ではない。そしてプロサーマル計画も核技術先進国の米国は手を出していない。かろうじて日本とフランスがやろうとしているだけだ。プルサーマルでは一体幾ら無駄な税を消費するのだろうか。

 日本は核利用から手を引くべきだ。核利用全体にこれまで幾ら税を消費して今後放射性廃棄物の10万年に及ぶ管理にどれほどの費用が必要と見込まれるのか、反対給付として幾らの「電気」を手にしたのか、政府は国民に解るように説明すべきだ。
 政府が説明できないなら、原子力ムラに巣食っている学者たちに説明させるべきだ。福井県は『もんじゅ』廃炉も含めた政府の抜本粋な見直しに、高速増殖炉を維持すべきと反対しているが、原発に依存した財政運営を改めるべきが先ではないだろうか。

 原発推進の補助金政策とマスメディアにより刷り込まれた原発安全神話を根拠として原発に依存する福井県は自らの県政の貧困を恥ずべきだ。なぜ他県で出来ている「身の丈」にあった県政が出来ないからと『もんじゅ』廃炉に反対しているのだろうか。
 福井県は身の丈に合った県政を実施すれば良いだけだ。日本海交易を見渡した場合、福井県は歴史的にもハブとして機能する可能性を秘めている。国民・県民のことを考える政治家ならそうした原子力に頼らない平和な福井県の未来を探るべきだ。


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