財界の歓心を買うだけの、無能・無策の法人税率引き下げ。

<企業がもうけに応じて納める法人税について、政府は2016年度の国と地方分を合わせた実効税率を30・88%とする方向で最終調整に入った。今年度の32・11%より1・23%幅引き下げる。17年度には税率を20%台とする方針だ。税負担を減らすことで、企業に設備投資や雇用、賃金を増やすよう促すねらいだ。

 自民、公明両党とも協議し、12月にまとめる16年度の与党税制改正大綱に盛り込む。安倍晋三首相は6日に都内で講演し、法人減税について、「実効税率を数年で20%台にまで引き下げ、国際的に遜色のない水準に改革する。来年は0・8%引き下げると決めているが、上乗せしてさらに引き下げる」と語った>(以上「朝日新聞」より引用)

 安倍自公政権は「税負担を減らすことで、企業に設備投資や雇用、賃金を増やすよう促すねらい」だという。しかし現実は法人税率を引き下げて内部留保が増えるだけではないだろうか。
 現在の多くの企業経営者は社会的・長期的な経営を考えるよりも、経営者個人的・短期的な企業収益を上げて株主の歓心を買おうとしている。日産に象徴されるように、企業経営者が米国並みの莫大な年俸を手にするためにそうした経営論理に毒されている。その毒された経営者たちの要請を受けて、安倍自公政権は上記のような屁理屈を付けて法人税率の引き下げを実施しようとしているのだ。

 指摘するまでもなく、法人税は企業利益に対して課される。労働対価の支払いを減少させて利益を増大しても、税として徴収される割合が減るのなら内部留保して自らの年俸を上げる方が良い、と判断する経営者が多いだろう。同様に、生産設備などに投資して、需要予測の目算が狂って不良資産投資になる危険を犯すより、自らの安泰のために新規生産設備投資をするのを避けようとするだろう。そして研究開発などという千に一つでも研究成果が経営に資すれば良い、という冒険はしなくなるだろう。
 法人税率を引き下げなければ外国投資資金が日本に来ないとか、企業が衰退する、というのは間違いだ。なぜなら先進諸国で最も高い40%を超える法人税を課している米国がそうした事態に陥っていないからだ。むしろ反対ではないだろうか。

 標準法人税は高くても構わない、ただし投資減税や労働分配率を引き上げた企業に対する減税などの「政策減税」を細かく実施すべきだ。当然、技術・研究開発などの支出に対してもそれに相当する減税を行うべきだ。そうした政策減税こそが経済成長当時39.75%もの高税率下のあり様だった。
 制作設備の新規投資に対しては「特別償却」を認めたし、フル操業を続ける企業に対しては「償却の短縮」を実施して、高税率の法人税を支払うくらいなら労働費として支出したり、技術・研究開発費として支出する方が企業の未来にとって良いと経営者たちは考えた。

 安倍自公政権の税制は完全に狂っている。景気回復を目指すのなら個人消費を直撃する消費税率の引き上げはすべきではなかった。個人所得課税の強化も実施してはならなかった。しかし安倍自公政権はそうした方向で個人所得を派遣の拡大策と税制で減少させている。
 マスメディアもTPPで消滅する「関税」収入1.2兆円を微塵も報道しようとしない。そして実質50%もの関税引き下げ効果をもたらした「円安」によりそれほど輸出が増加しなかった事実を報道しないで、数パーセントの関税撤廃により工業製品の輸出が飛躍的に増加するなどという荒唐無稽なプロパガンダ宣伝を国民に刷り込もうとしている。
 消費税を10%に引き上げる際に、食料品に対する税率を8%に据え置こうとする議論を「軽減税率」と誤った報道をこの国のマスメディアは繰り返している。8%に据え置くのなら「据え置き税率」と表現すべきだ。マスメディア関係者はマトモに国語を勉強したのだろうか、と首を傾げざるを得ない。「軽減税率」というのなら食料品はすべて5%に戻してはどうだろうか。

 TPPにより消滅する「関税」1.2兆円に対しては「財源が、」と一言も言わないマスメディアが、消費税10%への増税時の「据え置き税率」に対しては「財源は、」と問題にするとは開いた口が塞がらない。
 そして無能・無策の法人税減税に対しても「財源が、」とは決して追求しない。この国のマスメディアも財界の歓心を買うのに忙しいようだ。


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