中国リスク回避の願望とリスク克服とは全く異なる。

< 日銀の中曽宏副総裁は24日、中国の北京で開かれたフォーラムに出席し、中国経済が大幅に調整するリスクは大きくない、との認識を示した。また、当局が経済の構造改革を進める中で、中国の輸入減速は不可避と語った。

中曽副総裁は中国経済について、減速しているものの、「実質GDPで前年比6%台後半から7%の成長を続けており、依然として世界経済の成長に大きく貢献している」と指摘。中国当局が成長目標にコミットしている中で「政策的な対応余地がある」とし、「当面は中国経済が予想しないようなかたちで大幅に調整するリスクは大きくない」と語った。

中国経済の減速自体は、サービス産業や個人消費を中心とした「持続可能な成長モデルへの構造転換」を当局が進める中、「避けることはできないプロセス」としながら、「長期的には中国の成長の持続可能性を高める」との認識を示した。

中国の輸入は「実質成長率以上に減速している」としたが、背景には「中国経済のサービス経済化という構造変化が寄与している」と分析。製造業に比べたサービス産業の輸入誘発力の低さや、製造業の内製化比率の引き上げなどで中国の輸入減速は不可避とし、「日本を含めて中国との貿易関係が密な国々にとっての影響は無視できないが、冷静に受け止めた上で、適切に対処していくことが求められる」と語った。

また、中国が政策の透明性を確保するための方策の1つとして、「為替市場においても介入額などの重要な情報を公表していくことが市場の信認につながる」と述べた>(以上「ロイター」より引用)

 日銀の中曽宏副総裁は北京でのフォーラムという場所柄、中共当局の発表した7-9期のGDP6.9%を是認した話をしているが、8月の貿易統計・前年比の輸出-5.5%の減、輸入-13.8%の減をいかに「在庫調整」のためとしても無理があるだろう。GDP6.9%とは経済成長期の日本でも高成長期に属す数字だ。
 在庫調整で輸入が極端に落ち込んでいるが、減速したとはいえ経済は6.9%の高度経済成長を維持している、とするのは無理がある。英国の民間シンクタンクが「中国経済はマイナスに陥っているだろう」と分析しているのを私も支持する。中国は明らかに景気後退局面に陥っている、と見るのが正しいだろう。

 日銀の中曽宏副総裁が中国経済の分析で北京に配慮するのは経済専門家としてあるまじき態度だ。日銀は銀行の一機関ではない。日本の金融規律の舵取りをする大切な中央銀行だ。それが中国経済は概ね中共当局が発表する通りのGDPであり、今後も大して心配していない、というのはリップサービスにも程がある。
 中国経済はリセッションの段階に到っている、と見るのが正常な経済専門家の見方だ。「景気は気から」といって、現実よりも楽観的な所見を発表するのが見識ある金融当局のあり方だ、という常識は経済専門家としては非常識だ。中国当局はリセッションに陥った経済を見掛けだけでも良くしようと貸出利率をリーマンショック当時と同じまで引き下げた。つまり現行の中国経済はリーマンショック当時と同じほど「危機的」だということだ。

 輸入のマイナス13.8%というのは危機的状態だ。国内在庫が積みあがっているから輸入が減少したという説明は13.8%もの減に対しては無理がある。中国内で山と積みあがっているのは鉄鋼や石炭などの基礎素材だ。しかも輸出製品の半分は国営企業が製造しているが、残りの半分は外国企業が製造している。その輸出すら5.5%のマイナスというのは在庫調整とは何ら関係ない、中国経済の実態と見るべきだ。
 なぜなら中国経済は未だに国内個人消費依存度の極めて低い「世界の工場」型のモデルから成長していない。そのモデルは貿易への依存度の高い経済で、貿易の輸出・輸入の数字が中国経済を正直に反映している数字だとみるべきだ。つまり中国経済はマイナスに陥っている、と見るのが正しいだろう。

 そうすると日銀の中曽宏副総裁の中国経済に対する分析は最低でも7%もの誤差を生じていることになる。日銀副総裁の目はそれほどまで不確かだというのは日本の金融の舵取りにとって問題ではないだろうか。
 中国リスクを回避したいという願望で中共当局の発表するGDPを丸呑みするのは中国リスクを拡大するだけだ。中国リスクを最小限度に抑え込むには、なにはともあれ中共政府にバブル崩壊を先延ばしにして「罰ゲームの風船を膨らまし続ける」のを止めるように諌めるべきだ。中央銀行の貸出金利引き下げはバブル崩壊を少しでも先延ばしすることに他ならない。それは不良債権に貸出しするのと同じことで、破裂する風船をさらに大きくしているだけだ。

 中国リスクを少しでも減少させるには中共当局が一刻も早く不良債権処理に着手することだ。不動産投資で全国に無人の巨大都市「鬼城」を作ったり、巨大なショッピングモールを造りさえすれば個人消費が増加する、というバカな発想から全国各地に造った巨大ショッピングモールで閑古鳥が鳴いている現実を中共当局の経済部局は正直に反省して、不良債権処理に乗り出すことだ。
 それと同時に国営企業の資本民営化を促進すべきだ。外国資本に売り渡すのではなく、国内の投資家や億万長者に「強制的」に売り付けて、国営企業に巣食っている特権階級を一掃しなければ中国経済の近代化は一切何も進まないだろう。

 しかし習近平氏にそれが出来るだろうか。国営企業に巣食っている特権階級とは人民解放軍幹部に他ならない。そして国営企業が彼らの「年金」までも賄っているという制度を近代化する処方箋を同時に中共政府は示さなければならない。それが出来なければ習近平氏が中共政府から追放されかねない。
 既にそうした権力闘争が激化しているが、習近平氏はこの熾烈な権力闘争を最後まで勝ち抜けられるのだろうか。到底無理だとしか思えないが。


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