TPP日米農産物交渉は7万トンで妥結したのか。

<新薬データ保護期間をめぐっては、バイオ医薬品と呼ばれる先端医薬品について米国は期間を12年とするよう主張し、5年以下を求める豪州やニュージーランド、マレーシアなどと対立してきた。
 交渉筋によると、米国は保護期間を5年間とし、さらに安全性を評価するための3年間の延長を認める譲歩案を提示。豪州も実質6年なら容認する姿勢を示しているもようだが、双方の溝はなお埋まっていない。
 乳製品ではニュージーランドが大幅な輸入拡大を求め、日米やカナダ、メキシコが反発してきた。甘利明TPP担当相は2日の記者会見で、米国以外の3カ国との対立には「着地点が見えてきている」と強調した。
 一方、自動車分野については米国が日本製の自動車部品で関税の約8割を協定発効時に即時撤廃することで合意し、決着した。カナダも日本の完成車に対する現在6・1%の関税を数年で撤廃する>(以上「産経新聞」より引用)

 マスメディアが伝える米国アトランタで行われているTPP閣僚級会議の焦点は新薬保護期間だけになっているかのようだ。5万トンと主張していた日米農産物のコメ輸入制限枠は米国の主張する7万トンで片付いたのだろうか。それとも一定期間が経過すれば無制限に輸入できるようになっているのだろうか。全く不透明なまま、国民には一切何も伝えられなくなり、あたかも新薬保護期間だけが問題であるかのような扱いになっている。
 TPPは日本の米作頼りの農業を根本から破壊しかねない。一戸当たり耕作する圃場が平均5反(約0.5ha)に過ぎない日本の農家が250haの米国や500haのオーストラリアと経済規模で対等に競争できるはずがない。中には高品質のコメを作れば大丈夫だ、という評論家がいるが、「商品作物」としてのコメと「食糧としてのコメ」を混同して議論してはならない。

 日本の食糧自給率が低いのは国民周知の事実だが、コト穀物に関しても50%に満たないとご存じだろうか。確かにコメは百%の自給率を保っているが、他の小麦やトウモロコシは惨憺たる有様だ。
 農水省は「イザ」という時には耕作放棄地などのすべての農地を総動員して芋を作れば、国民の食糧は賄える、などと荒唐無稽の話を平気でやっている。農水官僚に騙されてはならない。百%輸入に近いトウモロコシなどは飼料用だ。つまり豚や牛の飼料として輸入しているのだ。確かに小麦は人様の食用だが、芋が小麦に転用可能とは思えない。

 しかも農水官僚たちは耕作放棄地の実態を知らなさすぎる。見たい方は中山間地へ少し足を延ばして出掛ければ、いくらでも原野に還った耕作放棄地を目に出来るだろう。既に樹木は大木となり、蔦や蔓が覆い尽くしている。それらの耕作放棄地をどうやって、誰が田畑に戻して耕作するというのだろうか。
 想定を超えた豪雨だけが災害多発の原因ではないと思っている。中山間地の耕作放棄地が雨水を一時貯めておくダムとしての役割をしていた棚田がすべて崩壊していることも原因の一つではないだろうか。

 米国は穀物輸出業者に「輸出奨励金」を支出して世界の穀物支配を維持している。欧州諸国は農家に対して手厚い農業所得の90%近い所得補償を行って自国の食糧安全保障体制を維持している。あの生産額ベースで日本の食糧自給率を下回る英国でさえ、穀物自給率は百%を維持している。
 日本の農家に対する所得補償は各種補助金を総合しても17%程度でしかない。しかも米国のような輸出奨励制度補助金もない。それでどうやって日本の食糧自給率を高めるというのだろうか。無駄なテレビCMを放送する予算があるなら、少しでも農家に対する戦略的な補助金を考えるべきだ。

 このままでは日本の食糧安全保障が危ない。米国を飢饉が見舞った時でも、米国は優先して食糧を日本に売ってくれるだろうか。考えるまでもないだろう、日本の安全は「戦争法」による米国の戦争を引き受ける便利屋になることではなく、穀物食糧自給率を百%にすることだということを認識すべきだ。
 国民を飢えさせないことは政治の至上命題だ。戦争による死も、餓死による死も、同じ死だ。隷米政策にうつつを抜かして「国民の生活が第一」の政治に背を向ける安倍自公政権を支持するマスメディア関係者たちの気が知れない。


このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。