健全な山野により都会は守られている。

<75人が死亡した広島土砂災害から、20日で1年になる。朝日新聞社は被災者にアンケートし、70人が回答した。「自身もしくは家族に心身の不調を訴えている人がいるか」との質問に約6割が「いる」と答えた。精神的なストレスをうかがわせる症状が目立つ>(以上「朝日新聞」より引用)

 朝日新聞は広島土砂災害から一年に際して、被害者たちのそれからを特集している。確かに被災により日々の暮らしは一変し、近しい人たちの突然の訃報は大きな影響を精神に及ぼすだろう。
 しかし根本的な原因にマスメディアは言及すべきだろう。災害当時に流れる映像を拝見して、砂防堰堤があった痕跡が一ヶ所もないのに驚いた人たちがいただろう。広島県では山裾の谷が住宅地開発され、県が宅造の許可を出したにも拘らず、しかもハザードマップが策定されて「土砂災害危険場所」に認定しようとしていたにも拘らず、一ヶ所も谷に砂防堰堤が設置されていなかったというのはなぜだろうか。

 そのことをマスメディアはなぜ問題にしなかったのだろうか。私は広島県の行政に大きな責任があると感じている。それぞれの谷川に砂防堰堤が数か所ずつ設置されていたなら、あれほどの大規模崩落土砂が一気に住宅地を直撃しなかったはずだ。
 被災者も避難する時間が稼げたはずだ。車ほどの大きな岩が谷を下って住宅を薙倒すこともなかったはずだ。大規模災害が起こった原因の一つに防災施設の設置を怠った行政の責任が大きいと思わざるを得ない。

 翻って、私は山間部の荒廃を何度もこのブログで警告してきた。山間部の荒廃は勿論人が棲まなくなり、耕作地が放棄されて原野に帰し、「入会の野山」が竹林に覆い尽くされてしまっていることだ。
 当然ながら、棚田に引いていた用水路も崩れて水を人的に迂回させる工作物も壊れてしまっている。そうしたことが、一定以上の降水量があった場合の山林の保水力を著しく小さくしている、ということを知らなければならない。棚田は一面、小さなダムの役割を果たしていた。

 保水力を失ったために雨は一気に大河川に流れ込み、大河川に排水していた都会の河川に逆流しないまでも都会の排水を妨げている。そして水源地の山野の荒廃は干天続きへの耐性を失って、少しでも続くと水源の枯渇を招くようになる。
 都会はその後背地というべき山野のより支えられている側面が大きい。都会に暮らす人は山野の恵みを日常生活の中で見出し難いかも知れないが、都会はその広範な地域で独立して存在しているのではない。地政学的な関連性や連続性をもっと政治家は認識すべきだ。そして田舎の荒廃は恐るべき結果を都会にもたらすことも知るべきだ。

 均衡ある国土の発展こそが望まれるし、均衡ある国土を保全するのもまた国民であることを忘れてはならない。人口減社会もまた良い、などと寝言を言う評論家たちは田舎や山間地の現実を見ていない。まさに故郷は荒れなんとしている。去帰来の辞を私たちはもう一度思い起こそう。


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