円安戦略収束の議論を始めよ。

<週末5日午前のニューヨーク外国為替市場の円相場は、米雇用統計の改善を受けて円売り・ドル買いが加速し、一時1ドル=125円70銭台と当市場としては2002年6月11日以来13年ぶりの安値水準を付けた。午前9時現在は125円65~75銭と前日午後5時(124円32~42銭)比1円33銭の円安・ドル高。
 5月の米雇用統計によると、非農業部門就業者数は前月比28万人増と、増加幅は前月の22万1000人から加速。市場予想(ロイター通信調べ)は22万5000人増だった。堅調な雇用回復を示す指標を受けて円安・ドル高が一段と進行。米長期金利の上昇も円売り圧力につながったもよう>(以上「時事通信」引用)

 毎週のように十年来の円安を記録するというニュースに接するようになった。それほど円安は進み、円価格は下落の一途をたどっている。それは日本の経済が力を失っていると国際金融が突き付けている証だ。
 本来なら金融緩和によりデフレが止まりインフレ場面に日本経済が入るはずだった。その時期とインフレ率を日銀の黒田総裁はこの四月に2%と目標を掲げていた。しかしインフレ率は目標の半分にも満たず、黒田氏は達成期限を一年先送りすることにした。しかし彼がすべきは異次元金融緩和だけで景気対策までできないことを明言し「アベノミクスの失敗」を宣言して、異次元金融緩和の出口戦略の議論を始めるべきだった。

 デフレ経済が好景気をもたらさないのは貨幣価値が上昇局面にあるからだ。物価が下がることは相対的に貨幣価値が上昇することで、人は貨幣を所有しようとする。つまり支出を抑制する方向に心理が働く。
 一方インフレは貨幣価値の下落を意味する。貨幣価値が下落するのなら預貯金を貯め込むのではなく有利な資産を購入しようとするし、企業は金融機関から借り入れてでも設備投資をしようとする。借入金はインフレにより相対的に金額が小さくなる、つまりインフレが返済を手助けすることになるから、設備投資して高生産施設に設備を転換すれば企業利益は上がることになる。それが高度経済成長期の企業モデルだった。

 しかし米国からの度重なる「外需から内需へ」との日本企業の海外展開要請により、日本企業の多くは政府やマスメディアの誘導されて海外へ生産拠点を移してしまった。国内経済の空洞化は労働者に配分されていた企業収益の労働分配率を引き下げて、国民の勤労所得は長期下落の一途をたどってきた。それでいかにして経済成長が出来るというのだろうか。
 アベノミクスの大失敗の原点はまさしくそこにある。消費増税を断行し、回復を見せていた個人消費を冷やしてしまった。中国へ移転した生産設備を積極的に国内回帰させる政策を打つことなく、安倍自公政権は円安による株高という外国投機家による下落した日本買いを欣喜雀躍して歓迎する、という失態を演じ、今も演じ続けている。しかも国民の未来の年金支給分の一部まで博奕相場の株式市場へ投じるという禁じ手を使ってまで、株高を演出し続けている。

 なぜ安倍自公政府は海外へ移転した企業投資の国内回帰を促進すべくUターン投資減税を断行しなかったのだろうか。それほど官僚たちは米国から恫喝された外需から内需への転換要請に今も痺れているのだろうか。その間隙をぬって、中国が米国輸入主要国に躍り出ている。それに対して米国は中国に注文を付けようとしない。核保有国には敵国でも遠慮するようだ。
 しかし日本は空洞化した経済を立て直す以外に堅調な景気を取り戻すことは出来ない。生産よりも金融やマスメディア従事者が高額年収を手にする、という日本の現状は工業技術伝承や改善の意欲減退を招き、長期的に「工業立国」の看板を下ろすことになりかねない。それかといってマレーシアのように金融立国が出来るかといえば、日本の国土と国民人口は規模が大きくマレーシアモデルを日本に持ち込むと1%が99%を食い潰すことになりかねない。未来の日本は現代の米国になるだけだ。

 やはり日本は工業立国の原点に立ち返るべきだ。政府は国民に安定した雇用を与え、安定した社会環境を提供すべきだ。そのための経済政策を目指すべきで、隷米からの脱却はここでも必要とされる。この場面でTPP参加がいかに未来の日本を毀損するか、真剣に考えなければならない。
 隷米でない中国が米国の輸入貿易相手国第一位となっている現状を日本政府は冷静に見るべきだ。そして日本の経済戦略を立て直すべきだ。いつまでも日本の官僚が米国へ御用聞きに伺い、米国からの指示書「行政要望書」を後生大事に履行しているようでは日本は先細りになるだけだ。なぜなら米国史上で軍事力で対等に戦を挑んだ国は日本しかないから、米国は日本の完全復活を恐れている。いまも経済や軍事の桎梏で縛り付けたまま、日本を意のままに操ろうとしている。

 もちろん国際協調は大事だが、米国に傾斜した政策の一本道は大変危険だ。今審議されている「戦争法案」もそうした路線上で米国から要請されていることだ。
 安倍自公政権は98兆円の史上最大の予算を組む一方で、介護保険措置費を減額し、年金マクロを減額した。それ以上に「周辺事態」で使用方法のないオスプレイを機体と周辺機器も含めると一機当たり2000億円を超える米国軍購入価格の数倍で42機も購入するという。なんとも節度のない大盤振る舞いをしてまで、安倍氏は政権維持を米国に認めてもらいたいようだ。安倍氏は自身のためなら国民の税を好き勝手に乱費して恥じない愚劣な政治家の見本のような人物だ。

 日本に必要なのは国民所得増の政策だ。そのためにはUターン投資減税を断行して、米国の掌で踊ってきた経済政策を転換することだ。未だに実施されていないチマチマとした経済特区構想で日本経済は回復しないし、補助金ばら撒きの地方創生事業で地方は元気にならない。それは地方官僚を肥え太らせるだけだ。
 国民の生活が第一の政治に転換させる必要があるが、第二自民党と化した民主党にそのエネルギーはない。菅氏や野田氏はTPP参加や消費増税を主導した。彼らは民主党を簒奪して第二自民党化した裏切り者だ。彼らを追放しない民主党は信用できない。消費増税に反対して離党した小沢一郎氏とその仲間こそ野党再編の中核になるべきだ。急がなければ安倍自公政権が隷米政策で日本を徹底破壊しかねない。残された時間がそれほどないことを野党政治家は知るべきだ。


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