同じ土俵で評価しない発電装置別の発電価格にどれ施程の意味があるというのだろうか。

 読売新聞朝刊の2面に<発電 原子力最安10,1円 太陽光24,3円 風力21,9円>とある。いかにも原子力発電がCO2を出さない発電装置で優秀であるかのような記事だが、比較する土俵が異なっているから妥当な評価とはいえない。
 いうまでもなく、原発の10,1円は総括原価主義という世界で日本の電力会社でしか通用しない発電原価算定方法だ。それは「発電時の原価」という極めて限定的な期間原価を表現しているもので、会計原則に反する特別な原価だ。それに対して太陽光や風力は土地の選定から始まり賃貸価格なり買い取り価格の利子等の経費から、太陽光パネルの購入価格から設置経費、さらには発電の役目を終えて解体・撤去するまでの費用をすべて会計原則に基づいて発電電力総量に期間対応させて算出されたものだ。

 一方の原発の発電原価には原発の建設費は勿論のこと、天文学的な金額になる廃炉・解体処分及び放射性廃棄物の最終処分とその後数万年に及ぶ維持・管理費は全て除外されている。そうした原価算定方式の異なる発電原価を紙面で比較させて、読者に勘違いを起こさせようとする読売新聞のやり口は卑劣というしかない。
 土俵の異なるモノを比較させて、国民に勘違いさせる手法は官僚たちも用いるし、それをそのまま「情報」として垂れ流すマスメディアの世論操作にもウンザリさせられる。たとえば食糧自給率の算定だ。この国ではカロリーベースで自給率を算定するために、穀物などの炭水化物に偏った自給率が算出される。日本国民が口にする穀物の半分以上が殆ど全量輸入の小麦粉だから、食料自給率が50%を超えることはない。
 翻って、世界の大半の国が採用している「消費金額ベース」での自給率では日本は67%と英国を抜いて世界でも自給率の高い国の部類に属すことになる。しかしそうなると農水省が予算獲得の大義名分にしている「食料自給率の向上のため」というスローガンが使えなくなる。そのため世界でも韓国と日本だけかせ使用しているカロリーベースの自給率を使っているのだ。

 読売新聞ほどの大新聞ともあろうマスメディアが土俵の異なる数字を大ポイントの活字で紙面に刻んで、国民世論を誤誘導しようとするのは戴けない。たとえ経産省がそうした数字を発表しても、新聞社がキチッと土俵を同じくした数字に変えて国民に示すべきではないだろうか。もっとも原発はトータルコストがどれほどになるのは予測不可能だ、それほど膨大なツケを子々孫々に残す発電装置が、それでも国民生活に不可欠だと読売新聞は官僚の尻馬に乗って主張するのだろうか。


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