年金にみる「マスメディアによる国民の世代別、正規非正規分断策」は大成功のようだ。

 年金に関する報道ほど国の目論み通りになっているものはないだろう。ネットで「国民年金の督促状」が来たとか「年金未納により差押え予告が来た」といったスレが立つと、間違いなく世代間対立を煽る人たちが登場する。
 つまり老人たちはカネを持っているのに若者が支払ってやる必要があるのか、とか、国民年金を納めても老後の暮らしに役立たないなら掛け金を支払わないで生保狙いで良いではないか、とかいった人たちだ。

 現在老人になっている人たちが年金を受給しているとしたら20年以上掛け金をマジメに支払ってきた人たちだ。彼らは国民年金を全額支払っても月額6万5千円ほどしか支給されないことを承知したうえで掛け金を掛け続けてきた。
 暮らせない年金しか支給しない「国民年金」を放置してきたのは政治家たちの責任だ。いや、年金制度が「国民年金は基礎年金で、その上に厚生年金や共済年金などある、といった仕組みになっているから仕方ない」というのなら、人が決めたモノなら人が改正すれば済む話だ。

 太陽が東から昇るのが気に喰わないとしても、地球の自転を逆回転に変えるわけにはいかない。しかし人が造った制度が合理的でない、あるいは格差があるというのなら法律を変えれば済む話だ。なぜ年金三制度だけは金科玉条のように存続を図ろうとしているのだろうか。
 そもそも社会保障制度は「負担は応能で支給は一律」というのが大原則だ。たとえば医療保険で高額保険料を負担している人には薬局で負担保険料に見合った大量の薬を処方してもらえるとか、入院する際には豪華個室が用意されるとかいうことはない。負担は能力に応じて高額所得者は多額の保険料を負担するが、社会保障制度として医療補助が支給される際はすべての人が一律だ。

 しかし年金だけが唯一例外になっている。その不合理さを誰も指摘しないのはなぜだろうか。官僚や公務員が加入している共済年金は平均支給月額30万円を超えるまさしく優雅な老後を暮らすに充分な年金だ。厚生年金も平均支給月額20万円超えと、育児や教育費負担のない老後生活を支えるには不足はないだろう。ただ問題なのは国民年金だ。
 国民年金の平均支給月額は一人当たり5万4千円で、死ぬまで働けといっているに等しい。これほど過酷な年金制度を放置したまま、年金掛け金が少しでも滞れば督促し、さらに滞れば差押えを行うという。まずは担当者が訪問して相談に応じる姿勢が必要ではないだろうか。

 これほど見事にマスメディアが報道により争点の本質を隠して、国民を世代間、正規と非正規との対立構造を演出し、成功している例は他にないだろう。本質的な議論をするなら、すべての年金会計を一本化して、年金支給対象者数で除して一人平均いくら支払い可能なのかを国民に報せるべきだ。
 そして社会保障を保険料や掛け金だけで賄うのか、1/2を税からの繰り入れで賄うのか、といった本質的な議論をすべきだ。そして総平均年金支給額から乖離の大きな上下をカットして平均値に近い人たちを増やすように徐々に年金制度を改正すべきだ。国民の老後にも現役時代の職業格差を持ち込む愚策を一日も早く改正すべきだ。社会保障とは格差是正の富の再配分機能が大きな柱の一つであることを忘れてはならない。決して既得権を維持する装置の一つにしてはならない。

 テレビ出演者たちが格差について発言していて、1%が国の富みの40%以上を占めている現実と、1%の境界が年収1300万円と知って、テレビ出演者たちが顔を見合わせたという。なぜなら彼らはすべて1%の側に属する人たちだったからだ。
 高額所得者たちにとって現行制度のまま続く方が良いと願うのは当たり前だ。だから格差社会を本気で解消しようとする論調がマスメディアから出てこないのも当たり前だ。国民は階層別に分断して、意見が一致しないようにした方が良いし、安倍政権が自分たちに都合の良い政策を実施しているなら、マスメディアが安倍政権の支持率を高く報道し操作することは何でもないことだろう。99%の側のためのマスメディアをこの国に樹立しない限り、国民は操作され続けるのだろうか。


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