「高度プロフェッショナル制度」とは。

<働いた時間ではなく、成果に応じて賃金を決める「脱時間給」制度の骨格が6日、厚生労働相の諮問機関・労働政策審議会の分科会で固まった。
 対象者は年収1075万円以上で、為替ディーラーなどの高度な専門業務に就く人に限定する。対象者の過労を防ぐため、企業側に健康管理を義務づける。一方、フルタイムで働く労働者についても、有給休暇のうち5日間の消化を企業に義務づけるなど、有給休暇の消化率を上げる措置を盛り込んだ>(以上「読売新聞」引用)

 高度な専門業務に就く人に限定して残業代なしの制度を導入する政府案を名づけて「高度プロフェッショナル制度」というそうだ。なんとも人心をくすぐるようなネーミングだが、「高度」がいつしか「低度」に拡大されるのは火を見るよりも明らかだ。
 元々派遣業法も「高度に専門的」な業務に限って認められた制度だった。たとえばキーパンチャーや通訳など、特殊技能を持つ者を抱える「派遣業者」が期間限定の仕事を請負って、特殊技能者を派遣するものだった。

 しかし当時からキーパンチャーの技能を持たない、「特殊技能者」でない者を特殊技能者と偽って「臨時事務員」として派遣する「脱法行為」が多く見られた。当時はユニオンショップ労働組合全盛期で、社員は誰もが組合に入ることが義務付けられた。しかし派遣労働者は組合活動に制約されないため、顧客窓口業務が「時間内活動」などの労働組合活動で滞らないための措置として便利であった。
 しかし労働組合運動として、それは不都合なものだったが、労働組合幹部たちは秘かに会社側と手を握って、見て見ぬ振りをした。そうすることで労働組合活動が業務を停滞させない方便として「労使協調」のためだと組合員に説明した。

 そうした会社側にとって便利な「派遣労働者」の規制緩和を政府に働きかけないわけがない。よって、派遣業法は少しずつ拡大され、ついには今回のような野放図な規制撤廃に到るまでになってしまった。
 さて「高度プロフェッショナル制度」だが、会社側にとってこれほど便利な制度はない。なにしろいくら残業させても「残業代」を考慮する必要がないからだ。あとは対象となる最低年収を引き下げれば、そのうちすべての労働者の給与体系が「年俸制」となり、労働環境は一気に悪化することになりかねない。

 派遣業という他山の石があっても、連合などの労働組合側から「法案反対」の全国的なうねりのような運動が起こらないのはなぜだろうか。そもそも専従組合幹部たちは「高度プロフェッショナル制度」になっていて、一般労働者の痛みが解らなくなっているのではないだろうか。
 連合の会長が歴代ご高齢なのはそうしたことの裏返しではないだろうか。彼らには労働者の権利を守ろうとする哲学も気概もないようだ。労働者の権利を守っていた派遣業法を徹底して破壊する規制撤廃と、次には残業代をゼロにして、労働者を好きなだけ働かさせられる制度を導入すべく「アリの一穴」を労働法に空けてしまおうとしている。ここに到っても、全国の労働者は沈黙したまま1%に奉仕する安倍自公政権に手も足も出ないのだろうか。


このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。