EUの金融緩和により日本の金融緩和策は曲がり角を迎えた。

 EU中央銀行理事会は昨日(1/22)今年3月から来年9月まで、18ヶ月8兆円規模で総額144兆円と日本と同規模の金融緩和策を決めた。その実行手法は各国発行済み国債をEU中央銀行が出資比率により買い入れるものだ。
 EUは28ヶ国により構成され、その総GDPは17.5兆ドル(約1900兆円)と世界一位の経済規模を持つ。人口は5億人余と日本の約4倍に達する。よって日本の日銀が実施している70兆円×2回の異次元金融緩和の計140兆円とほとんど同じだが、GDP規模が日本の約4倍のEUにとって十分なものか疑わしい。

 ちなみに米国が実施した(昨年10月に金融緩和の終了を宣言している)金融緩和策は総額約200兆円だったことと比べれば、米国のGDPがEU全体のGDPと余り変わらない17.4兆ドルであることと比較すれば、「異次元」というほどのものではない。
 しかしEU28ヶ国の中には財政破綻の危機に瀕しているギリシャやスペインやポルトガルなどを抱えているため、米国と単純な比較はできない。スイスはスイス・フランの為替相場変動幅の規制を撤廃したため、スイス・フランが下落してスイス・フランショックを国際金融に与えている。

 EUの金融緩和はEU経済がデフレ傾向にあるため、日本と同じ2%のインフレターゲットを掲げたものによる。ドイツは金融緩和の必要性を否定してEU金融緩和に反対したようだが、中央銀行理事会で多数決により実施されることになったといわれている。
 これによりEUの為替相場が下落し、EUに最も多く輸出していた中国は大きな影響を受けるものと思われる。同時にブリックスに対してEU諸国からの輸出圧力が強まると思われ、中国経済は二重の意味で大きな打撃を受けるだろう。

 中国から撤退した生産拠点を東南アジアへ移そうとしていた企業は東南アジア諸国の為替が対EU,対・円で相対的に上昇し、それほど経済的に魅力的な生産拠点適地とはいえなくなっているのではないだろうか。
 国際金融・為替相場は絶えず大きく変動する。その時々の動きに合わせて日本企業経営者が右往左往していては長期的な経営戦略は立てられないだろう。むしろ日本国内にどっしりと構えて、日本国民の勤勉さと「物事」を極めようとする向学心に立脚した生産効率の向上と、新規製品開発力を高める方が企業経営にとってどれほど良いだろうか。

 米国は金融緩和策から出口戦略に舵を切った。日銀もいずれかの時点で蛇口の壊れたダブダブの金融緩和策を転じなければ「円」はいつの時点かで底なしの価値下落に陥らないとも限らない。
 異次元金融緩和による円安マネーゲームはEUの総額140兆円規模の金融緩和策により転換点を迎えた。そろそろ日銀は金融自律の出口戦略を模索しなければならなくなった。さもなくば国際金融そのものが「紙幣は単なる紙屑だ」と誰かが叫びだして大混乱に陥らないとも限らないからだ。そうした危うさが金融需要に基づかない金融緩和の副作用だ。

 そうしたマネーゲームを最初に米国が始めて日本が追従し、EUまでも追従してきた。国際金融で信任の厚い通貨が軒並み「禁じ手」を使ったことになる。現在の国際金融はこれまでになかった「異次元」の金融当局による緩和競争を演じてきた。
 その陰で進攻したのが貨幣金融に基づく富の偏在だ。1%の人たちが99%の人たちが営々と働いてきた「富」を、金融変動に乗った戦略で掠め取り、貧富の格差を拡大した。だがそろそろ金融緩和策による為替変動を利用した博奕金融を店仕舞いすべき時が近づいている。さもなくばドルも円もユーロも、もちろん元も、すべては紙屑だ、と誰かが叫び始めないとも限らない。


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