根拠なき経営者たちの「好景気」願望か。

<共同通信社は2日、主要111社を対象にしたアンケートをまとめた。全体の87%に当たる97社が、2015年の景気を拡大すると予想し、後退を見込んだ企業はゼロだった。現状の円安ドル高が業績に与える影響は44社が「好影響」と答えたが、22社が「悪影響」や「今後の悪影響を懸念」を選んだ。
 個人消費は14年4月の消費税増税後の落ち込みから脱しつつあり、大手企業の景気見通しに明るさが広がっていることが鮮明になった。一方、円安によるマイナス面も広がっている。賃上げについては、65%が回答を保留し、賃金体系を底上げするベースアップの実施を明言したのは4社にとどまった。>(以上『共同通信』引用)

 共同通信社が実施した日本の主要111社の今年の景気判断が記事に表れた通りなら、経営者たちはまったくノー天気だと批判せざるを得ない。第一、世界経済がダウンサイジングしている現実をどのように見ているのか、そうした観点が何も語られていない。
 ダウンサイジングしているという根拠は原油価格にある。これまで世界の潤沢な投機資金を提供していたのはいわゆるオイルマネーで、原油を売り上げたカネを投機家たちが有利に運用して利ザヤを稼いでいた。しかし原油価格が半値になると原油産出国はサウジアラビアを除いて、軒並み緊急事態に陥っているに違いない。なぜなら潤沢な原油売却額を国家予算に回して、砂漠に大都市を出現させるなどの高コスト国家運営をしてきたからだ。

 砂上の楼閣という言葉があるが、まさしく現実として砂漠の国家が緑豊かな都市の形成と運営には原油歳出コスト以上のコストをかけて海水淡水プラントを稼働させるのが前提だ。それが止まればたちまち都市は砂漠の中に呑みこまれてしまう。
 砂漠国ではないが、ロシアもオイルマネーで凍土国家を温めてきた。しかし原油価格が半値になればロシア国家予算のみならず、国民経済までもダウンサイジングせざるを得ない。

 そして米国FRBは国内の好調な経済を反映して、金融緩和策を転じて引き締めに回ろうとしている。しかし好調といってもかつての米国経済の好調さとは異なる。安定した層の厚い中間層が消滅し、米国はまさしく1%対99%の格差社会に突入している。それは苛立ちと憤懣に満ちた社会だ。ちょっとしたきっかけで住民は暴徒化し、社会秩序は容易に回復しない社会だ。
 中国もいよいよ立ち行かなくなっている。過剰な不動産投資が焦げ付き、理財商品を紙くずにしているが、その紙屑化した債権が中央銀行五行にも及び始めている。好調な経済で東アジアのみならず世界経済を引っ張ってきた中国エンジンも出力を落とし、さらには世界経済にリーマンショック以上のマイナス衝撃波を与えると考えられる。

 欧州も不安定化している。ユーロのお荷物といわれて久しいギリシャが緊縮財政に国民が倦み、直近に迫った国会議員選挙で財政拡大派が勢力を伸ばしているという。他にもユーロはスペインやポルトガルやイタリアなどの不安定要素を抱え込み過ぎている。
 一つの通貨に沢山の国家事情の異なる通貨を集約したツケが次々と表面化している。ドイツも面倒を見らされるのは限界だといつ匙を投げだしてもおかしくない状況だ。

 一時期、次の経済エンジンになると期待されていたブリックス各国も低迷している。このように世界の何処を見回しても今年は良くなる、という材料は何も見当たらない。むしろ世界経済はあらゆる材料からダウンサイジングして行くと見る方が妥当だ。
 こうした時にこそ、企業経営者は海外移転していた生産設備を廃棄・焼却して、円安を百年の奇かとして国内に回帰すべきだ。その際に、生産効率を上げるべく改良した生産ラインを組み、国内の勤勉で優秀な労働者を正規雇用して経営戦力としても使える人材に育てる長期戦略を立てるべきだ。

 海外へ移転した際の労働者を「労働力」とみなして、少しでも安い労働力を求めて移転を続ける「焼畑経営」とは手を切って、国内の勤勉で創造性に富み、愛社精神を持つ日本国民を雇用すべきだ。
 共同通信社記事の後半の「消費」に関する部分は噴飯ものだ。一体何を根拠に個人消費が持ち直すと見ているのだろうか。その程度の経営判断では企業経営は勿論のこと、路上の占い師すら勤まらないだろう。生産人口が減少の一途を辿って、しかも実質賃金は一向に上向かないままに輸入消費者物価高騰がいよいよ国民生活を直撃している。そうした悪材料ばかりにも拘らず、消費が回復すると見るのはいかにも無理があるだろう。


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